勇者バルデウス
私の不安をよそにアレクはぐんぐん進んでいく。
分かれ道も迷わず選択して進んでいく。
その道が正解なのかどうかは、わからないんだけど
しばらくは順調に進んではいたけど嫌な予感とは当たるものだ。
洞窟の一番奥っぽい所までたどり着いた。
そこには村でアレクが叫んでいた弓もある。
その奥には青の鉄鉱石もある。
それだけ見れば順調な感じだけど目の前には予定していないものがいた。
水龍!!!
「なんであんなものがここにいるのよ」
「知らん、とにかく逃げるぞ!!」
必死に走る。
来た道を全力で戻る。
後ろから水龍が洞窟を破壊しながら追いかけてくる。
洞窟が崩れていく。
やばい!やばい!やばい!
地面が大きく崩れだす。
それでも必死に走る。
さらに地面が大きく割れる!!
限界!もう限界!逃げ切れない。
「あきらめるな!!走れ!!」
そういわれてもね、限界は限界
あきらめるなっていうならこの状況を何とかする方法を考えてほしいわ。
あぁ思えば大して良いことがない人生だったな。
その挙句がこんなわけのわからない魔王が復活するだなんだなんてに巻き込まれて死んでしまうとは・・・。
完全にあきらめたその時、
【テラスパークス】
閃光!!!
光が私の横をすり抜けていく!
ギャァァァァァオォォォン!!!!
ガシャァァァン!!!
水龍の叫びと崩れ落ちていく轟音。
後ろを振り向くと水龍が倒れていた。
「大丈夫だったかい?」
正面からは金色の鎧の男。
またこいつ。
よく観察してみる。
そっくりではある。
教科書に載っていた勇者の絵とそっくりだ。
「あ、ありがとうございます。お名前を聞いても・・・」
思い切って名前を聞いてみる。
「勇者!勇者ですよね!伝説の勇者!憧れッス」
「ちょっと何言ってるのよ」
「そうだよ僕は勇者バルデウス」
「ですね!やっぱり握手してください」
アレスの興奮が止まんなくてちょっと引く。
冷静に考えて伝説の勇者の訳が無い。
伝説の勇者が魔王を討伐したのは50年前
そのとき確か17才、今現在67才、もうとっくに引退している年齢、どう見てもそんな年齢には見えない。
勇者のコスプレをしたなにか・・・ただ相当レベルが高くて強いことだけは確か、あの水龍も一撃で倒しているのだからそこは認める。
でも伝説の勇者ではない。
「っていうかなんで水龍は私たちを追いかけてきたの?」
アレクに問いかけると勇者のコスプレ男がアレクを指差す。
「それ」
アレクは青い弓を持っていた。
「水龍の弓!」
「そう、それだね。水龍はそれを守っている。侵入者を攻撃するしまして持ち出そうものなら怒り狂って襲ってくるよ」
「あんたいつの間にそんなもの持ってきたのよ!危うく死ぬとこだったじゃない」
「だって欲しかったんだもん。その為に洞窟に来たんだし」
「だって・・・じゃないわよ!!し・ぬ・と・こ・ろ・だったのよー!!!」
「その価値があるアイテムなんだよこれは!51回目にしてやっと手に入れたんだ」
「何が51回目よ!わけのわからないこと言ってごまかさないでよ!」
本当に危なかったんだから本当に徹底的に怒ってる。
「お取り込み中のところ悪いんだけどこれは僕がもらっていくね。水龍を倒したのは僕なんだからさ」
そう言うと勇者バルデウスを名乗る男は弓を手に取り呪文を唱えその場から消えた。