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11:誰も見ない。①

十一章 ①/2

読了目安→7.5~12分


【警告】

この「誰も見ない。①」の回は小児が肉体的、精神的に虐待されたりひどい目に遭ったりする鬱展開に終始します。

詳細な情景、心情描写も含まれます。

ガチめにR15ポイントだと思います。

なのでこういう描写が精神にクる方はほんとに! ホントにスキップしてください!!

そしてそんな方のために後書きにはさらっとポイントを抑えたあらすじを置いておきますので、ダメな方はこのまま本文は一文字も目に入れず、後書きまでスクロールしてください。

もし読んで被弾してしまったら動物の赤ちゃんの動画とか観るといいですよ……。


それでは、引き続き本作をお楽しみください!

うるさくしてすいませんでした……!



































 ――――笑うと、殴られる家で育った。

 ――――泣いても、無視する親に支配されていた。



 古びた2DKのアパート。

その部屋の隅だけが、ガキだった俺がただ息をしていた最初の場所だった。


 記憶にある限り、そこは部屋の壁際に幾つも引き出しや棚が並び、それでも(あふ)れかえった服や物があちこちに積み重ねられているような家だった。床のそこかしこには食べ散らかしのプラスチックごみが転がり、時折ゴキブリが潜んでいる。


 

 ――――ハナトに言った言葉の意味を考え過ぎたせいだろうか。


 夕暮れ時の〈冒険者ハンザ〉の待合所に座る俺は、腕を組んで半ば起き、半ば眠りながらも、気付けば半覚醒の夢の中で昔のことを思い出していた。


 そのまま、掘り起こせるままに記憶を辿っていく。


 俺が〈ルマジア〉に来たのは、俺が9歳の子供だったころのことだった。季節は向こうで言えば8月の……ちょうど真ん中あたりの日だったように思う。

 その日、父親――――(いや)()()()は「金が入った」とスマホを弄りながら、朝から酒を呑んで寝入っていた。


 俺を生んだ女は俺に関心がなく、夜は仕事、朝に帰ってきたかと思えば、おざなりに俺へコンビニの飯を食わせ、夕方までまたどこかへと居なくなるような人間だった。


今日もまた、そうであるようだった。


《――んじゃそれ食べて大人しくしてて。お父さんのいうこと聞いといてね。めんどいから》

『うん……』

時刻は午前11時ごろ。

《……まったく、あんたさえ居なければ》

 赤い口紅に染まる唇から、鋭く吐き捨てられる。

《なんで子供なんて生んでしまったんだろうね、あたしは》


 気持ちがどこかで揺れ動いた気がしたが、いつもの事だ。それ以上は何も思わない…………正確には、もう何も思えなかった。

 

 そしてそのうち隣の部屋から、呑んだくれていた男のほうが再び起きてくる。

 また酒を呑み始めるのだろう。

 俺は素早くいつもの定位置にうずくまると、物音を立てないようにじっとしていた。下手に騒がしくすれば殴られるからだ。この家では俺がいちばん、『家族』に気を遣って暮らしていた。

 だが、


《……おい、壱平(いちへい)


食卓のあるキッチンから名を呼ばれれば、出ていく以外の選択はなくなる。


《なあ、たまには父さんに酌をしろ》 


『わかった……』


 びくびくしながらも俺は隣室を出てその頼みを引き受ける。


 陽がでていても、明るいのは外だけだ。

 

 汚れてくすんだキッチンの窓から目に飛び込む真夏の光は眩しいクセに、北向きのこの部屋はいやに薄暗かった。

 細身のガラスコップと注ぎ口を見つめる俺の顔に、泥酔した男の酒臭い息がかかる。


 そして嫌な緊張感のなか渡された酒瓶は子供の俺が思うより重たく、加減が分からないまま傾けすぎた酒はコップの(へり)を乗り越え、男の脚にかかってしまった。


《おい、なにしてんだよ!!》


 とたん手から瓶を引ったくられ、同時に脳を揺らされるような衝撃がはしり一瞬なにも判らなくなる。

 身を縮めながら状況を確認すれば、食卓の上に置いてあった、重たい調味料のプラボトルで頭を殴られていた。

 痛くはないが衝撃が重い。脳だけを揺らされる。


《この役立たずが! この酒 高かったんだぞ?!》


『ごめん、ごめんなさい! ごめんなさい!』


両手に持ったものを置き、椅子から立ち上がる男。次いで飛んでくる理不尽な膝蹴りを、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。避ければ余計にこの男を怒らせる。

 身構えた瞬間あばらの横が軋む。痛い。蹴られた反動で反対側の腰を食卓にガツンと打ち付ける。

 痛い。たぶんまた痣が増えるのだろう。


《おめぇのせいで汚れたじゃねえかよ! 拭けよ! 親がいねえと何もできねえクソガキのクセに! 迷惑かけやがって!》 


 追加で飛ぶ胴体へのパンチと共に落とされる、言葉の(つぶて)。息ができない。


 だがこれもまた日常過ぎて、まず泣くという選択肢はとっくの昔に俺からは(こぼ)れ落ちていた。痛覚だけではない、『嬉しい』も『悲しい』も、あのころの俺の情動はすべて(にぶ)く麻痺していた。


《……おい、次は気を付けろよ》


 やがて全部片付いた。ドスのきいた声で見下ろされる。


『ごめんなさい……』


 それは頭を下げても許されない時もある、すべて向こうの気分次第の、博打のような言葉だ。

 ただ幸運にも今日はそれで男の気は済んだのか、俺は解放された。

《もういい、目障りだわ、外にでもでてろ》

その言葉と共に突き出されたのは、コイツと同じくクソみたいな実母が置いていった、コンビニの袋。中には俺の遅い朝飯(あさめし) (けん) 昼飯(ひるめし)が入っている。当時の飯は、これに夕食がつけば贅沢な方だった。


『あ、ありがとう……』


 あんなに手酷くされたクセ、子供の俺はそれでもその袋を手ずから受け取れることが、この親からの優しさのような気がしていた。心のどこかがわずかに高揚している。つまりとても喜んでいた……のだと推し(はか)る。


 ……浅ましいことだ。吐き気がする。


 そうして外に出ると、自宅のボロアパートの向かいにある、そこそこ大きな公園が目前に見えた。


 二階の鉄柵ごし、同じ目線に見える木々の茂みでセミが騒がしく鳴き()っている。屋根が切り取る日陰より先では、日差しが乱暴な自己主張をしていた。湿った熱気が、身体中を包む。


 暑かったが、あそこの木陰なら多少はマシだろうか。


《しばらく帰ってくんなよ》


 そして後ろでドアが閉まった瞬間、今度は下からきゃーきゃーと賑やかな笑い声が聞こえる。きいたことのある声だと思い反射的に視線を下げると、家の前を大人と子供二人が歩いていた。


 (もう名前なぞとっくに忘れてしまったが)それは同じクラスの男子と女子だった。学校でもよく一緒にいるのを見かける。大人の方は、どちらかといえば男子の方に顔が似ている。


 初めに俺の存在に気付いたのは、ツインテールの三つ編みをした女子の方だった。


《――げっ!》


 目が合ったとたんでかい口から歯を剥き出し、見たくないものをみたという顔をされる。それは俺も同じだ。その声にクラスの中では背の高い方の男子までがこちらを見上げ、


《うわー?! 感染(うつ)ったわ最悪、夏休みなのに!》  


心底嫌そうな顔ですぐさま目を逸らされた。


 遅れて何事かと連れの大人が視線を上げるが、


《あーねー、おばちゃんいこ! アレね、いつもなんかボロいし、汚いんだよ。見たらうつるから! はやくいこ!》


《え、……ええ?》


 ぐいぐいと腕を引っ張られ、つられて一行の歩みも早まる。

 女は肩までの髪を揺らしてチラチラとこちらを振り向くも、結局は何も言わないままアパートの前からまとめて退場していった。


 俺は無言でそれを見送る。


 …………鈍い絶望が去来(きょらい)した気がした。


 ただ、それでも腹が減っていることだけはずっと確かだった。こんな下らないことより、朝から何も食べていないことの方が問題のはずだったのだ。


 カサカサ鳴る白い袋を肘にかけなおす。気を取り直して、錆びて所々穴が空いたようなアパートの鉄階段を(くだ)っていった。


 ゴムのサンダルでひとつ降りるたび、かん、と小気味のいい音が響く。耳にはシャワシャワシャワ……と騒がしく世界を包む音の雨が降る。


 カン、カン、カン。

 シャワシャワシャワシャワ……――――。


 そして最後の段を降り、黒ずんだコンクリートの基礎をタン、と踏んだ瞬間だった。



 ――――セミの声は、ピタリと消えていた。



 こうして俺は、この〈ルマジア(せかい)〉に立っていたのである。



 正直、あのエナタル山脈の麓に広がる深い森の縁、師匠の家に世話になりだした最初の頃の事は、俺はなぜかずっとあやふやな記憶でしか回想できない。


 そのクセ二人に出逢うより前の、この1週間程度にあった出来事だけは、いつも鮮明に思い出すことができる。


 始めに放り出されたそこは、深い森の中だった。

 驚いて背後を見上げれば、そこにはあの幾何(きか)(がく)模様(もよう)の白亜のアーチが何も語らず、ただ木々と(つた)(うず)もれて(たたず)んでいた。

 これこそが俺を『招いた』〈(ゲーナ)〉であった。


 師匠(いわ)く、これは時空の継ぎ目と継ぎ目を勝手に繋げ、そこにたまたま居合わせた人間をルマジアに引き込む太古の遺物なのだという。


 土地と土地の境。上と下の(あわい)。道と道の交差する(つじ)

 とにかく境界の()ぎ目の上は、時空の継ぎ目とも繋がりやすいのだ、と。


 ――――確かにその言葉通り、階段を降りきった瞬間には俺はもうそこに立っていた。かなり戸惑ったが、なぜか途方に暮れたりはしなかった。


 置かれた現状より、家の中にある地獄の方が酷かったせいかもしれない。あるいは、親が持たせてくれた飯に、なにか希望のようなものを抱いていたのかもしれない。


 ゆえにそれから日が暮れるまで、俺はとにかく家を目指し歩いていた。涼しい風が時折ふく、深い森の中をひたすらにさ迷う1日である。


 中に入っていたおにぎりと菓子パンは、その日のうちにたべきってしまった。



 やがて日が暮れ、夜がやって来る。


 暗くなる周囲にもう今日はこれ以上進めないと判断したとき、そこでふと夜空を見上げた俺はさすがに目を疑った。

 星も(またた)きだす黒い空には、月明かりが3つ浮かんでいたからだ。


『………………』


 さらにどう考えても夏ではないこの気候。


 そこに来て俺は、どうやらここがあの世か何か――――少なくとも俺の知っている世界ではないらしいことをぼんやりとでも察してしまう。


 だが森の底には、その目新しい夜の光でさえ全ては届かない。


 湿った夜風の吹く茂みの向こう。鬱蒼(うっそう)としげる木の下。そこかしこに(しん)の暗闇が(わだか)る。

 しかしその重なりあった漆黒のベールの向こうから、『キャーイキャーイ』と聞いたことのない甲高い鳴き声が響いても、俺の中に恐怖は一欠片(ひとかけら)も沸き上がらなかった。

 この時の俺には、目の前の何もかもがどこか他人事になってしまっていた。


 ――――それでも、ただひとつ願っていたことがある。 


 本当にあり得ないことをただひとつ。


『もしかしたらお母さんとお父さんが、俺を探しに来てくれるのではないだろうか?』


 どうみても家から遠い、こんな森の中に来てしまったのだ。

 だからさすがに心配を、してくれるのではないか。


 今思えば、寒気のするような(うすら)い希望だ。本当に吐き気のするような期待だった。


 それでも確かにそんなものに(すが)り、俺は待ち続けた。こんな深い森の中なか、周囲に人影など現れるわけがないというのに。


 そうして大きな岩屋根の()りだす崖下で、助けを待ち続けた七日目の朝。


 早朝から振りだす雨音に起こされるも、俺は目覚めた瞬間から体中に形容しがたい重だるさを感じて動けなくなっていた。空腹も限界で、森の木の葉を打つ雨と風が運ぶ、湿って冷たい夜気(やき)名残(なごり)に気持ちの限界を感じている。


 そこに、数日前にも聞こえていた何かの啼き声が遠くから響いた。

《キャーイキャーイ》

《キャキャ、ギャ! キャキャ!》

甲高く、はしゃいで嗤うような。どこか老婆の声のようにも思えるのに、絶対に人ではないとわかる不気味な声だった。


 それが時間を負うごとだんだん近づいてきて、――――……俺を見つけた。


 それはがさがさと下生えの茂みを踏みしだく音がふと止んだあと。雨の早朝、冷えた薄暗がりの中。


 岩屋根の端からぬっと現れる。


目が合ったのは、()()()()()()()()、人間の顔と対して変わらない大きさの虫の頭だった。長く黒い触覚が目の間に生える。


「?!」


 ただそれが本当に瞳で、本当に瞼だったのかは今も判然としない。それぞれで縦と横に閉じるソコが瞬きをすると、『カチカチ』と小石を打つような音が聞こえたからだ。


《キャキャ、ギャ! キャキャ!》


戸惑う間に、おそらくは口に相当するものが縦に割れる。至近距離から聞かされたその声には、得体の知れない嫌な響きが混じっていた。

 途端、耳の奥がキーーーン!と鳴り、その音の響きに奥の脳の奥までを揺らされる。

一瞬、何も判らなくなる。


「~~~~~~?!」


 父親に頭を殴られるときの感触を思い出し、初めて少し感情が揺れた。


 そして次に気付いた時には、俺は手首を捕まれ腕一本で宙へ持ち上げられている。 


 目を開いた時、視界は大人の背丈をも優に越え、身長130㎝にも届かなかった当時の俺には足の(すく)むような高さではあった。


 5、6メートルはありそうな木の梢が近い。高いぶん広くなった視界の中をそれでも埋め尽くすソイツの体躯もまた、人間なぞ比較にならないほど大きい。


 まるで節だった大木のようにも見える茶色と黒の身体は長大(ちょうだい)で、ゴツゴツした鱗で丸くとぐろを巻きながらも、その左右からはムカデのごとき脚が幾対いくつい(うごめ)いていた。


 その中で一番前の2対の腕だけが、まるで人間のような身体から、人間のような腕を4本、生やしている。……しかしそれすらも『ような』という形容が限界の、何か異質の別のものであった。


《キャキャ、ギャ! キャキャ!!》


 その中の一本の腕に掴まれたまま、暴力のごとくぶつけられる啼き声にまた脳髄を揺らされる。ぼやける思考の中に響くカチカチカチカチという石を打つ音。


 どうにか保とうとした意識はそれでもあやふやになり、処理しきれないままの視覚が、うなだれた首から足下(あしもと)の様子を映してくる。ソイツの頭が胴体まで縦に割れ、花のように拡がって行くのが見える。

 ゾッとするような青色。


 これ、口か……。


 この時俺はふと、コイツに足を齧られ、それでもしばらくは生きている自分の、数瞬先の未来に意識が向いてしまった。


 ああ、もう俺はどこへもいけないのだ。

 直感でそう思った。

 俺はおそらくこのまま死ぬ。

 ここには誰もいないから。

 誰も、助けてはくれないから。


 

 結局それはこの知らない森の中でも、生まれ育ったあの家の中でも、何も変わらなかった。


 走馬灯が走る。


 あの家で生まれた俺は物心ついた頃から気分次第で暴言を吐かれ、父親に殴られ、母親に無視されていた。


 たとえここが家の前だとしても、あの二人が俺を助けることなど、なかったのかもしれない。

 結局は、あの二人も家の前にやってきたアイツらと同じ『敵』だったのかもしれない。

 もう目の前で自分を食おうとしているこの化け物とですら、俺は親を同列の存在として見ることができてしまう。

 ここにあるものと記憶の全てが重なり、全てが虚しくなる。誰も彼も、俺にはどうにもならない力で俺を支配しようとしてくる『敵』だ。


 ――――すきだった、のに。 


 プツリと糸が切れたような音と共に、絶望する――――しかしその次の刹那、俺の中に生まれたのは悲しみなどでは決してなかった。

 広がったのは、ひたすらに激しい怒りと、殺意だった。


 それはあたかも焼け付く鉄を押し付けられたかのように鋭く胸を焦がし、燃えた。


『……う゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……!!』


 ……その瞬間、俺は全てが許せなくなった。

 狂おしいほどに許せなくなったのだ。

 なにもかもが自分の手の上にないことが許せず、燃え上がるがごとく激しく憎んだ。


 許せない。

 全部ぜんぶ許せない。

 何も持たない、弱い自分がまず憎い。

 俺を見ないあの二人も、俺を顧みない他人も、世界の全部も、憎い、全部嫌いだ。何もかも壊したい。


 何もかも、いま俺を食おうとするコイツも、俺に力があるなら支配してやりたい。

 なにも思い通りにならないのならば、ぜんぶ壊して、ぜんぶぶち殺してやりたい。


 壊してやる、殺してやる殺してやる#■▼、コ■▼テヤル……―――――!!!!



 ――……そう考え、またそう感じたところを最後に、俺の記憶は、フィーゼリタス(いわ)く半年ほど吹き飛んでいるらしい。おそらくは妖獣であったのであろうあの化け物の正体も、アレにどう対処し生き残ったのかも、なにも記憶にない。





















【この回は......】

子供だったイチヘイが〈ルマジア〉に『招かれる』前後を現在の本人が回顧する形でおくる過去エピソード。

──────────────────────────────

日本で生まれ育った彼の居場所は、我が子を嫌い関心を持たない母親と、暴力的で理不尽な父親が世界のすべてのような、絶望しかない世界だった。

そして〈(ゲーナ)〉の転移に巻き込まれ異世界に飛ばされてきたイチヘイは、知らない森をさ迷い歩く。しかし迫り来る夜の闇の中、本能的な恐怖すら、過酷な生育歴を経た彼にはどこか他人事になってしまっていた。それでも親が探しに来てくれるのではないかと、彼はしばらくそこで待ち続ける。

やがて胞果熱に侵され始め、空腹も相まって衰弱しだしたイチヘイの前に現れたのは、虫頭のモンスターだった。抵抗できないイチヘイを捕まえ、足から食べようとする。

けれど深い森の中、親どころか誰も幼い彼を助けるものはいない。それはこの知らない森の中でも、育ったはずの家の中でも、何も変わらないのだと解釈する彼。

なにも与えてくれなかったあの両親も誰もかれも自分をみない。

どこにいても、自分は無力で、なにも変えられない。

みんな敵。もう、誰も信じない。

感情のすべてを自身と両親と自分を取り巻く世界への怒りと、憎しみ、殺意、支配欲に転化(てんか)していくイチヘイ。

 


そこから半年ほどの記憶を、彼は持たない。


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