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1.英雄の子孫

 英雄アルド・アレフリード、それは全人類が知っている偉人だ。


 かつて人類の脅威として禍々しい存在である『魔王』が大地の奥から現れ、そこから発生する有象無象の魔物によって全人類の三分の一が死滅した。

 その伝説は全人類に当然の話だが、事実の正確さは霞んでしまっており、はっきり言ってしまうと、噂程度まで大雑把なものと化している。

 それは二百年前、確かに人類の中では希望が存在して魔物たちの王である『魔王』を打ち倒した。

 その時点で魔物の発生する数は減ったが、それでも『魔王』の残滓なのか魔物の数は人の討伐では駆逐することは二百年経ても達成できない。


 二百年後、アレフリード家は隠居していた。

 かつての栄光から莫大な富を得て、名声を得たが、万人に救われることは不可能であり、元々の貴族から反発も多く、人が良かった英雄アルド・アレフリードは自分の境遇と子孫の気持ちを考えて上級貴族の下の下として財産は屋敷の地下に隠し、謙虚に生きろと代々の教えで伝わっていた。


 今や貴族界隈から話題にはならず、ただの伝説として朽ちる寸前の家系がアレフリード家である。

 もし、屋敷の中にある金目のものを盗まれたら、終わりだ。

 まぁ、それはどんな貴族でも痛手だろうが……。


「ふぅ~……」


 一端の貴族であるが、屋敷とその周りの庭は広い、その上で槍を素振りする少年。

 十八歳、成人して金を稼ぐということを学ぶために魔物を討伐する冒険者として働き、ちょうど一年、とある事情があって家で訓練をして先の行動を考えている。


「アルス様」


 そう呼ばれた少年は一人のメイドの方を向く。

 メイド服、だがその容姿は緑色の長髪、金色の瞳と人間とはかけ離れた美貌を持った使用人だった。


「どうした、ノエ、何か用か?」


「はい。旦那様が……」


 そのメイドは人間のアルス・アレフリードとは違い、耳が尖っている。そう彼女はエルフ、今では絶滅と言ってもいい、かつての時代、魔物によってエルフが生息する森が一掃されたからだ。

 それによって正確なものは定かじゃないが、一般的に広まる情報としてエルフは絶滅したと言われているが、その当時にアルド・アレフリードはエルフの三姉妹を自分の使用人として雇ったのだ。

 それが長女のノエ、次女のエル、三女のルアである。

 エルフは長寿、人間の数倍は生きるため、外見は二十代の女性だが、自分なんかより遥かに年上だ。

 そんな人物が変わることなく使用人をやるなんて、それだけアレフリード家、いや英雄アルドに恩があるのだろう。

 長年、使用人を続けているためか、その技能は凄まじく、アレフリード家の使用人は彼女たち三人で間に合っている。


「……そうか」


 それを聞いてアルスは俯く。

 アルスの両親はもう父しかいない。母はアルスを産んだ時に死んでしまい、そのせいか父親も病気で弱っている。

 家を保ち、一族を繁栄させるということなら、没落寸前だ。

 後は自分がどうにかするしかないのだ。


 そしてアルスは空を見上げる。

 今日は快晴、太陽が照らして気分的には良いものなのだが、家の重大さと自分に責任を感じてどうも気持ちが暗くなる。


「アルス様……アルス様に責任はありません。ただ、運が……」


「運、か……」


 悪気はないのは知っている。

 幸運と悪運、それが平等に今を生きる命に振り分けられることを、悪事を働いた奴に悪運が降りかかるわけではない、幸せな人物に悪運が降ることもあることを知っている。

 前者はこの社会から、後者は自分自身から学んだ。

 だが、ここで立ち止まっていてはだめだ。

 両親や先祖のこと、ノエ達、何よりも英雄アルドに、顔向けできない。


 ここで没落してしまっては全てが水の泡になる、何より当時から生きるノエ達にその様子を見せるわけにはいかない。


「アルス様、少し話しませんか?」


「え……」


 無理やりな笑顔、それでも場を和まそうとしている彼女の努力を無駄にすることはなく、アルスは承諾して二人は芝生の上に腰を下ろした。


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