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異世界渡航ビジネスDOIT〜幾千万と存在する異世界なんて管理しきれません〜  作者: あ
〜奴隷蔓延るエルフの森林世界〜ウィズロス編
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#4 初めての異世界調査

 第3商業区画──有楽町。

 ナノマシンが埋め込まれた、漆黒の特殊装備に身を包んだ円依と藤間は、異世界が現れた場所へ赴く。

 現場には既に大人数の作業員が来ており、辺り一帯を厳重に封鎖し、それぞれ最終の作業をしている。

 2人は時が来るまで仮設の休憩所にて最後の一服を楽しむ。



「この装備めっちゃ恥ずいんですけど……なんなんすかこのボディコンスーツ。身体の線出しまくりじゃないですか……私だけ胸とお腹出てるし、職権乱用もいい加減にしてほしいっすね」


「俺に言われてもなァ。これあれば異世界へ行ってもお互いマッパにならないんだから文句言わねェの。俺は別に構わないんだけどな?」


「フン……」


「あっつ」



 円依は無言でタバコの灰を藤間の靴へ落とす。



「それにこのスーツ……耐久性や伸縮性は勿論、耐水耐火に自動洗浄までその他諸々ついてるスグレモノだ。DOIT職員しか着れないスーパー戦闘服だぜ」


「……不思議ですね」


「ん?」


「生物以外一切の持ち込みが出来ないのに、これだけ例外って変な話じゃないですか? iゲートはどういう仕組みなんでしょうか。研修でも、教えてくれませんでしたよ」



 藤間はタバコの煙を吸い、一つ間を置いて答える。 



「……それは、永久機関だ」


「永久機関?」


「世の中にゃ説明がつかず、数百年経っても解明出来ない謎ってもんがある。果たして存在するのか、あったとしてもその技術は永遠の謎。人類が滅亡する前に究明が叶うのか否か……それも、その1つさ」


「……そうですか。不思議な存在ですね。iゲート」

「時空歪めてるワケだし、その気になりゃタイムスリップとか出来たりしてな」


「えー……ちょっと怖いっすね」



 円依はふぅっと煙を空へと逃がす。

 そうした一服の時も、やがて終わりを告げる。

 宇宙服のような分厚く白い防護服を着た作業員が、2人がいるテントへとやってくる。



「お疲れ様です。渡航準備及び安全確認作業が完了しました。いつでもゲートインいただけます」


「お、もう行けるみたいだな……マルちゃん。準備はいいな?」


「ええ。いつでも」



 2人は整備された仮設iゲートの前に立つ。

 異世界へと旅立つ時。

 藤間と円依はタバコの吸い殻を落とし、靴でグリグリと火種を消す。

 吸い殻はゴミ箱に捨てましょう。



「よし、行こうか」


「はい──」



 2人がiゲートの中へ入ると、ゲートは機体を揺らしてすぐに起動する。

 異世界という未知なる時空へ旅立つ球体の中は、まるで無限に広がる宇宙の深淵のように暗く輝いている。

 それを眺めていると、形容し難い虚無感と孤独感に押しつぶされそうになると……円依はすぐに目を深く閉じた。

 やがて激しい耳鳴りに襲われ、意識を暗転させていく。








 瞬きをするかのような刹那の間、2人が次に瞼を開けた時には深緑の世界が広がっていた。

 得も言われぬ異質な空気。

 翡翠色の見慣れぬ空。

 地球上のどこにも存在しないであろう景色に、円依──イルマは目を輝かせる。



「う、わぁ……あぁ……」



 雲に手が届きそうな程の標高から見える景色は、一面巨大樹の森。

 が、遠景から見下ろすそれには遠く及ばない。



「藤──マージフさん。あれは……」


「ほォ、すげえな。世界樹ってやつか?」



 現実世界には無い一つ一つが300メートルを優に超す巨木達さえ、小さな苗木のように矮小な存在と化し、広大無辺な空でさえ持て余す世界樹。

 2人はその雄大な景色に暫しの間見惚れる。



「すごい……! ここが異世界……」


「ああ、そうさ。ようこそ夢の空間、異世界へ……よし。ではこれより調査を開始する。今回俺は補助だからな。大凡の裁量権はマルちゃんにある。自由に調査に当たってくれ」


「え、あ……そ、そうですね……まだ世界の名前すら知らないので、諸々の情報を収集しようと思います。手始めに知的生命体との接触を試みようかと」



 イルマが指差す方向に灯りが見える巨木がある。

 明らかなる人工物だ。

 そしてイルマの指からビーム状の青い閃光が迸った、突然。

 人差し指から射出されたビームはイルマの白藍髪を翻し、マッハのスピードで虚空へと消えていった。



「え!? なにこれ。なんか出た……まさかスーツのせい?」


「っと、スキルの説明をしてなかったな。それは社長の加護スキルだね」


「スキル? そういえば、スキル等を確認するようにって言われてましたけど」


「ああ、マルちゃんが使うスキルは主に2つ。1つ目は様々なスキルがある【DOITの加護】だ。これは全員に与えられる汎用(ロー)スキル。ライター程の火を起こすとか、カッター並の刃が出るとか、使い方はかなり限られる。そして2つ目は──固有(マイ)スキルだ」


「固有スキル……」



 マージフはイルマに操作を教えながら、スキル一覧が載ったホログラム画面を出現させる。



「内蔵されてあるナノマシンが遺伝子情報を読み取って分析し、内なる力を呼び覚まして覚醒させる。固有スキルは本人の器量に大きく作用されるよ」


「そうなんですか……え? もしかして私の能力って今の……?」


「いーや、あれは汎用スキルの【セイバー】だ。指からレーザーが出る優れものよ。固有スキルを知りたいならガイドロイドを呼ぶと良い」


「あ、いるんすねガイド……えーっとガイド? 私の固有スキルを教えてくれる?」



 ガイドロイド──DOITが開発した異世界渡航補助AIである。スーツに内蔵されており、実体はない。

 専用のチップを使えば顧客にも内蔵可能で、有料オプションの一つである。

 調査済の異世界の事を知り尽くしているので、異世界の旅を手助けしてくれる心強い味方だ。

 ほぼ全ての顧客がオプションに加える事でも有名。



『──命令を確認。DOITコード=イルマ様の固有スキルを表示します』


 ■『ボンディ=慈愛(レジリエンス)

 ヒールスキル。自己と他者の、外的要因における傷を治癒する事が可能。

 身体の再生は不可能だが接合は可能。

 ヒールは使用する度に体力を消費する。

 許容範囲を超過した分は寿命を削る。


「出た。これは回復スキル?」


「ヒール系……珍しいな。回復系は元慈善活動家や元医療従事者とかに多いけど、ここまでデメリット皆無で汎用性あるスキルとは……ステート以上に貴重じゃないかこれ」


「本当に私にこんなのが備わってるんですか? それにステートって?」


「ああ。固有スキルの強さは『ステート』と呼ばれる3段階に区別されててね。下から民を表す『ステート:(ボンディ)』次点で『ステート:(オヌング)』そして最高位が『ステート:(ゴス)』って感じでランク付けされてんのよ」


「そうなんすか。私のスキルにボンディと付いてるという事は……1番下かあ。んんん〜」



 プクッと頬を膨らませるイルマに、マージフは吹き出すように笑みを溢す。



「いやいや普通だから。職員の固有スキルの約90パーセント以上が民だからね。王は約10パーセント。神になると0コンマを余裕で切る」


「え、少なっ」


「民以外の2つは珍しいから、固有スキルにちなんだ二つ名を冠するんだ。例えば剣士ってスキルを授かって昇格したら、スキル名が剣王とか剣神になる」


「へええ……私だったら慈愛王とか慈愛神になる訳ですか」


「そゆこと。神だなんて数人しかいないよ。それこそ、SPレベルだぜ。人間として成長したり才能が開花すれば、ステートの昇格だってあるよ。頑張りな」


「ういっす」



 空中で表示されるスキル確認画面。

 イルマは自らのスキルを入念に確認する。



「マルちゃん。それは、これから多くの人の助けになる力だ。素晴らしい力だよ。有用に使ってくといい」


「分かりました。スキル……学ぶべき事が増えたな」


「スキルは嘘をつかない。本性というか、その人の性質を色濃く反映する。献身的なマルちゃんらしいスキルだね」


「なんか小っ恥ずかしいですね……性格診断受けた後みたい」



 イルマは耳を赤くしながら、ポリポリと頬を掻く。



「客がオプションでつける一時的なスキルと違って、使用可能時間は永続的だからね。一生ものだよ。大事にしていきな」


「分かりました」


「あ、勿論スキルは異世界限定だからね。現実世界じゃ使えんから注意な」


「いやまあ……現実世界で使えたらヤバいですよこれ」

「さーて。ますは住人との接触だっけ? 案内お願いしますよ。慈愛のマルちゃん」


「茶化すの止めて下さい……マジで」



 山を下って巨大樹の森へと向かう2人。

 近くで見る巨大樹は圧倒的であった。

 いくら見上げとその先端は見えず、差し込む木漏れ日にただ目を細めるだけ。

 そしてその木それぞれに木造の小窓や扉、植物で作られたランプが飾られており、住居として使用してるのが伺える。



「すんげェな。木を家にしてんのか。だとすると……ああ、いた。やっぱ第一村人も予想通りだ」



 マージフが顎で指すは大木同士を繋ぐ橋の上。

 そこには、植物で作られた衣類を着た痩せ細った人影。

 彼の者の特徴は耳と背に存在した。



「病的なまでに長身痩躯。白き肌に淡い髪色。尖った耳に背に生えた羽根──やはりエルフの国か」


「ここまでアナログなエルフ族も珍しいですね……開口一番に矢が飛んでこない事を祈りましょう。では早速行きましょうか」


「え、ちょ、いきなり──」



 エルフの国──その入口の苔生す看板には『樹上の里』と書かれていた。

 2人はエルフが住まう里へ踏み入る。

 だが異世界は、来訪者を快く受け入れてはくれない。

 その両名を視界に捉えた門番のエルフは、目を丸くして大声を上げる。



「……ノルゲンだと? 誰か! 誰か来てくれ!」

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