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第8話

 初めての殺人をしてから、私は追われている。


「おい、足跡を探せ。木の上も見ろ。捜索している最中は、上が死角になる」


 声が、100メートル後方から聞こえてくるまで迫っている。


 ☆回想


 あの三人を殺した後、獣人族の村に匿ってもらおう。川沿いなら、村があると思ったが、

 川沿いの道は先回りをされていた。


 奴らの尾行は、私が行きそうな場所に先回りをする。

 しかし、私の賞金は、銀貨100枚、日本円にして約100万円、そこまで沢山の人は来ないだろうと思っていたが、甘かった。


「奴はお宝を沢山持っている。切取り自由だってさ。心さえ壊さなければ何をしてもいいってよ。捕まえたら足を斬って逃げられないようにするぞ」


「武器は、妙な鉄のツブテを放出するものを持っている。弱いファイヤーボールを打てるのは死体で確認済みだ。見つけても、すぐに襲うな」


 と声が聞こえてくる。


 クンクンクン!


「旦那、ダメだ。狼族が通った匂いがする。人族の女はいませんぜ」


 ・・・獣人族の犬族、当たり前だ。獣人族でも、私の敵になり得るのは当たり前の話だ。

 ガオルさんの匂いがまだついている。

 もう、一週間風呂に入っていない。


 夜はテントを張れば良いと思ったが、甘かった。

 召喚した日本のアウトドア用品、防寒着やテント、色が目立つ。

 そう言えば、遭難したときの為にワザと目立つ色にしていると聞いたことがあった。


 夜も眠れない。

 寝ている最中に襲われたら、ひとたまりも無いと気が付く。

 もう、4日寝ていない。

 銃があっても、一人じゃ無双出来ない。


 現在、こうして、数十人に追いかけられている。


 ☆


「いた!見つけましたぜ。旦那!」


「・・・獣人族、犬族」

 ・・・匂いで先回りをされていた。もう、ガオルさんの匂いは消えたであろう。狼人族の加護は消えた。


 獣人族だって、私の敵になり得る者がいるのは当たり前の話だ。

 あの王都の集落が奇跡だったのだ。

 銃口を下に向けて身構える。


 私の後ろ、前を囲まれ、どちらかを撃ったら、すぐに捕まるだろう。

 いや、構えた時点で、死角から特攻を仕掛けてくるに違いない。


 奴らの戦法は、私の前に、軽業師のジョブを持っている者が、私の前で、煽る。


「お~い、お尻ペンペン!」


 無視して、銃を構えないと、近づいてくる。


 もうダメだ。前に銃を構える。そして、前を撃つと見せかけて、後ろを向き撃つ。この戦法でいくしかない。

 後ろから、飛びかかって来る気配が・・・あれ、感じない。

 前のヤカラは驚いた顔をしている。


「パズル!」


 と奇怪な叫び声を上げながら、一人の男が、剣で後ろの冒険者たちの体を真っ二つにしていた。


「スキル、俊足!」


 彼は、次々に、冒険者を斬り殺し、全員殺した。

 早いがゆっくりと見える。

 無駄のない美しい動き。

 恐ろしいはずなのに、見とれてしまった。

 しかし、


「アハハハハ、パズルって」

 私は思わず気合いの声で笑ってしまった。


「ほお、豪胆な娘さんだ」


 彼は、金髪で、黄金の瞳。皮鎧を着ている。胸当ては鉄。全体的に渋い色で目立たない色の服装だ。


 彼は、殺した冒険者の服で剣についた血糊を拭き取っている。

 ふ~ん。合理的だ。彼も戦い慣れている。


 彼は死体を片付始めた。

 私も手伝おう。


「いいや、レディに死体運びはさせられないよ。少し、休んでいたまえ。話は後で」


「話?」この人も冒険者か。獲物を横取りするために、こいつらを殺した?

 いや、私は何故か根拠もなく、この男は助けてくれたのだと信用し。自己紹介を始めた。


「有難うございます。私は、アズサ・ササキです」


「これは失礼しました。ご令嬢か。失礼ながらササキという家門は知らない。ご教授願いたい!」


「いいえ。平民です。私は異世界人です。異世界は、平民でも名字があります」


「そうか、私は冒険者アルバートだ。なら、異論はない。結婚しよう」


「はあ、なんでそうなるの!」


 ・・・私はこれで、二度、プロポーズされたことになる。

 1度目は、お城で、次は、死体を運びながらの男にである。


 事情を聞くと、この世界では、紹介もないのに、女性から名を名乗る行為は、熱烈な愛の告白だそうだ。


「そうか、誤解であったか。君を護衛するように依頼されている。君は中々賢いが、三人の死体を片付かなかっただろう?だから、追跡をされた」


「誰に・・・依頼されたのですか?」


「裏組織だ。黒髪、黒目のレディの護衛依頼を受けた!」


 私はここで、初めて、女神信仰圏と呼ばれる国家群があることを知った。

 彼は、女神信仰圏、ここから南西の小国出身の平民。冒険者をしているそうだ。


「ああ、私のジョブは勇者だ。平民なのに強いからおかしいなと思い騎士学校に入学してトップで卒業したけれども、陛下から、3ゴールドを渡されて、これで、魔王を討伐してくれと言われて、やってられるか!とそのまま他国で冒険者になった。アハハハハ」


 ・・・はあ、いろいろ大変みたいだ。しかし、これで今夜は交代で寝られる。

 この男とは、長い付き合いになるとは、この時点では想像も出来なかった。



 ☆☆☆魔族領、旧ヤクーツ王国


 私は約10年前に、魔王軍に陥落した人族の国に到着した。精霊王国の属国だったそうだ。ここで彼とは別れる。新たな依頼があるそうだ。


 城下町には人族が経営する宿がある。私の体はかなり臭い。一番良い湯浴みが出来る部屋を取り、タライの風呂で体を洗い。着替えた。

 うわ、お湯が泥になっている。


 魔王城に転移の門があるか確認する。魔王か事情の知っている魔族とどうやって会おうか算段していたら、向こうから、迎えがやって来た。魔族ではなく、人族である。


「初めまして、私はイワンと申します。異世界の方ですね。魔王アキラ様がお呼びです」


「魔王・・ここにいるの?・・・アキラ!」

 ・・・日本人の名前だ。もしかして、転生者。

 武器を置いて行こうとしたら、


「いいえ。魔王アキラ様は、その武器?も持って来るように仰せです」


「?分かりました」


「それと、この国のトップの方です。呼び捨てはおやめ下さい」


「失礼しました!」

 ・・・そりゃそうだ。



 ☆☆☆ヤクーツ城客間


 私はイワンさんに案内されて、客間で魔王様と会うことになる。

 日本の儀礼で良いということなので、頭を下げて、挨拶をする。


「お初にお目にかかります。アズサ・ササキです」


「やあ、私は魔王アキラ。どうぞ、座りなさい。名前の通り私は転生者だ。君は転移者か。良くきたね。何で来たの。ここは魔族領だよ。普通、魔王をやっつけるぞ!とならない?」


 赤黒い肌に、一目で筋肉が詰まっていると分かる体、頭に四本の角が生えている。

 教科書で見たネアンデルタール人に似ている。身長は2メートルを超えているだろう。


 私はありのままに、召喚され、魔王軍と戦うことを拒否し、日本に帰れる方法を探していると話す。

 獣人族に匿われたこと。人を殺したこと。裏組織に雇われた冒険者に助けられたことも話す。


 魔王城に日本に帰れる転移の門があるか確認するために来たと答えた。


「あれ、奴ら、そんなことを言っているの?あったら、俺、人族にお使い頼んでいるよ。マンガとか、お肉とか。醤油とかね」


 ・・・確かに、転移の門はある。

 しかし、異世界にはいけない。魔方陣を描いたこの世界の拠点にしかいけない。しかも、物流にしか使われないそうだ。


「あれね。骸骨博士さんの話だと、一度、体を分解して、情報だけを転送先に送って、もう一度、魔素を集めて、組み立てているそうだよ。ファックスのようなものだ。緊急の時以外魔族や人の輸送に使わないよ」


 ・・・なるほど、何か嫌だ。

 もし、転移が自由に人にも使えるようになると、即時に兵を前線に送れて、パワーバランスが崩れるだろう。


「それで、本題だ。君は何故64(ロクヨン)を持っているの?」


 ・・・私は自分の能力のことを正直に話した。


 すると、魔王さんは私に銃を貸せと言う。弾はさすがに入れてない。


「コウカンヨシ、弾抜けヨシ」

 と銃をのぞき込んで弾が入っていないことを確認する。


 そして、銃の分解を始めた。


「よく見ておきなさい。私は自衛隊出身だよ」


 ・・・手で分解していく。


 銃の木の部分から、組み立て式のプラスドライバーを取り出す。

 あんな所にハッチがあったの?


 ネジを取り、細い金属の棒でピンを取り出す。


 うわ。恥ずかしい。サビだらけだ。


「防サビ剤の〇56と、歯ブラシみたいな機械整備用のブラシと本「新隊員〇〇」出せるか?赤い本だ」


 私は召喚してみた。

 おお、この赤い本に、64式自動小銃のことが書かれている。


「ダメだよ。銃は手入れしなくては・・それで、君はどうしたい?この城で働いてみないか?」


「私の能力で、何をさせたいのですか?」


「精霊王国にインフレを起こす。君はあの国に恨みがあるのだろう?」


「・・・・でも」

 即答したいが躊躇した。


 あの国に住んでいるミーシャちゃんの家族やガオスさんたちは困るだろう。


「君は獣人族、全てを救いたいのか?人族だって、廉価で危険な仕事をしなければいけない冒険者もいるよ」


「いいえ、あの王都の獣人族を助けたいのです・・・」

 と少々、傲慢な言い方になったのに気が付いた。


「合格だ。ちゃんと、地に足が付いているね。大丈夫、考えてあるよ。イワンさん。ヨドムを呼んで来て下さい」


 ・・・


 しばらくすると、カイザルヒゲで体が楕円形の中年の男が入ってきた。


「グシシシシ、魔王様、お呼びでございますか?おお、可愛い子ですな」

「ああ、これからのことを説明してやってくれ」


 ・・・彼は精霊王国の裏組織の人間で、商人でもある。アルバート君の雇い主でもある。

 なるほど、金ヅルだから、護衛を付けてくれたのか。


 彼の提案は

 私が獣人族のスラムで行ったように、塩と胡椒、砂糖を召喚し、精霊王国で売る。

 その運搬に、獣人族を使いきちんと人族と同じお給金を払う。


「グシシ、獣人族は体が丈夫ですからね」


「ここなら、安全に召喚出来る。召喚の対価に、精霊王国の貨幣を使い。やがて、精霊国のお金が無くなり、質の悪い貨幣しか作れなくなるということですね」


「お、察しがいいですね。グシシシシシ」


「魔王様、やります。やらせて下さい!」


 私はヤクーツ城の一室をあてがわれ働くことになる。


 あ、銃は分解されたままだった・・・



最後までお読み頂き有難うございました。

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