第7話
「な、なんじゃと、胡椒の売上げ、これは前月比よりも1割満たないではないか。塩は半分、砂糖に至っては、誰も買いに来ておらん!どうして、報告をせん!」
「新しい塩や胡椒が市場に出ております」
「ええい。何が起きている!」
・・・妾は、王国の専売品を任されている。他国で仕入れたものを、それなりのお値段で売る。重要な財源だ。
謎の商品を手に入れた。1つ1つ贅沢なガラスの容器に入っている。
書かれている文字は蛮族文字に似ている。奴らの言葉だ。
ヤマナ。いや、いいんちょうがいいだろう。奴はがっきゅう裁判で、禁固刑に処されている。
妾は、ゴミ捨て場に向かった。商品を、檻に入れられたいいんちょうに見せる。
糞尿垂れ流しで、臭いのう。
妾に意見をしたから、せんせいに命じて、裁判をかけさせた。
「ヒィ、もう、貧しい人の治療をしたいなんて言いません」
「ええい。これを見ろ!これは何だ!」
・・・奴らは、大陸共通文字のように、統一した文字がない。複数の文字を使う野蛮人だ。
「・・・味塩、ナトリウム・・・これは日本の商品です。ウワワワーーーー」
「うるさいのう!」
ガン、ガンと妾は檻を蹴っ飛ばした。
奴は、やれ、獣人族を虐待するなとか、いちいちうるさい。
まるで、高い文明社会から来たような口ぶりをする。
ということは、女神圏の転生者が、「内政ちーと」とやらをしたな。
ヤマナに作らせよう。
錬金術士ヤマナは魔道通信機を作った。中々便利な奴だ。
伝令無しで、数十キロ、瞬時で、状況が分かる。
戦いが変わるのう。
近衛騎士団には渡さないわ。
「ヤマナ、お前、これを作れるか?」
「うひょー味塩でござるか?これは日本の商品です。我は作れません!日本から召喚したものですぞ!」
「何ですって!」
・・・妾は仮説を立てる。奴らの世界に魔法はない。しかし、太古の魔法文明の遺物があって、これを作れる魔道具が今も存在している。
不味い。女神圏に召喚士がいる。いや・・・そうだ。妾のペットにも召喚士が一人だけいたのう。
最後、川に飛び込んだと報告のあった28番ササキ。
冒険者ギルドにも、商業ギルトにも仕事を与えないように命じていたのじゃ。
絶望して死におった。
ワビて靴を舐めれば飼ってやったのに
しかし、次の報告で、女神圏の線は消えた。
「殿下、この商品は、裏組織が販売しているものです!産地は獣人族のスラム街」
「何ですって、我国が産地か」
一応、28番について、調べるか。
・・・
「ドメル神官殿、あの日の28番の様子を教えて下さらない?」
「はい。獣人族メイドに着替えをさせるように言いました。あの足では外に出したら風紀が乱れるでしょう」
「ええ、太ももを見せるスカートとは我国では考えられないわ」
「それ以降、獣人メイドに任せました。私は関知していません」
「メイド長を呼べ。その獣人を取り調べるぞ!」
・・・・
「はあ、獣人メイド、ミーシャは死にました」
(売ったとは言えないわね)
「ほお、そらなら、何故、獣人族メイドのエサ代を請求しておる。妾は、帳簿を読めるぞ。今、正直に言えば、命は助けてやるでのう」
「ヒィ、申訳ございません。売りました。売り先は、裏組織の人間です」
「そうか、衛兵よ。右腕を斬れ!」
スパン!
「ギャアアアアア」
これでつながった。裏組織と獣人族はセットじゃ。
28番は、獣族のスラムにいる・・・捜索じゃ。しかし、奴らの低賃金労働で王都市民が、ほぼ労働無しで生活出来ておる。
その支持も馬鹿に出来ない。
冒険者ギルドに依頼を出すかのう。
モンブランに嗅ぎつけられたくないからのう。
☆☆☆アズサ視点、王都より西の山中
・・・私は人目を避けて、西に向かって山道を歩いている。
いろいろ考えたが、青目に見える伊達コンタクトは、衛生状態が悪いこの国では無理だ。
となると、髪を染めても目立つ。髪もすぐにプリン状態になる。
だから、ローブをまとい。下を見て歩いている。
人気のないところを歩くのは危険だ。
何故なら、女性が護衛も付けずに、人気のないところを歩く行為は逆に目立つ。
それを今気が付いた。私は山賊もどきの冒険者に囲まれている状態だ。
「おおお、ラッキー、報告のあった通り、黒目だ。黒髪だ。銀貨100枚ちゃんだ-」
・・・相手は三人
一人は棒の先端に縄の輪がついているものを持っている。
捕獲するために、私を追いかけて来たのだろうか?
「待て、一応、異世界人らしい。28番目だが、用心しろ」
「親分、28って、え~と、指の数よりも下っ端ってこと?」
情報が出回っている。生きていることがバレた。
銃を使う。ここで使わなければ、どこで使う?
私は人殺しの覚悟を決める。
背中に背負っていた銃を、彼らに向ける。
「おっ、下がれ!」
すると、奴らは背中を私に向けずに、後ろ向き歩きで距離を取る。
「な、なんだ。魔道具だよ。おい、盾だ。対魔法の付与されているもの出せ、あれの魔道具は、ファイヤーボールを放射して、撃つタイプだろう。この盾は。ファイヤーボールくらい跳ね返すぞ」
「うん?うん?親分、かなり動揺しているみたいだぜ」
・・・こいつら、ワザと煽って、私の反応を見ている。持っている武器の威力を私の表情で読み取ろうとしている。
数も数えられない馬鹿だが、戦い慣れしている。
奴らの一人が盾を構え。二人が後ろに隠れる。
私は覚悟を決めて、銃を彼らに向け。銃についている小さなレバーを「レ」の位置に動かす。これで引き金は引けるはず。彼らに向けて、銃を撃った!
カチャ、カチャ!
・・・え、撃てない。弾は込めているはず。故障!何で!
私は銃をイジる。
すると、銃の真ん中、上に突起物があると気が付く。
これを引く。
すると、重たいが引けた。銃の中が見える。銃の窓という感じだ。
銃の中、本体に弾が入ってない!
「何だーー慌ててやがるぞ。ガルン。盾を押し当てて捕獲しろ。その後、皆で楽しもうぜ!」
動いて、お願い。機嫌を治して!
私が銃を慌てて、操作すると、銃のドアが閉まった。
ガチャ、ガチャーン!
弾が、銃本体に入った!
と何故か分かった。
私はもう一度、構えて、銃の後ろをお腹で押さえて、左手で銃を上から押さえるように持ち。右手はグリップを持ち。引き金を引いた。
パン!パン!パン!パン!パン!
一度、引き金を引くと、弾が連発で出た。
衝撃は思ったほど大きくは無かった。
盾に、穴が開く。
「レ」って連発の意味だったのね。
「ウプ」
ドタン!と盾を構えていた男が倒れる。
盾には穴が数個開いていた。
「ヒィ、いてえよーーーー」
盾の後ろに隠れていた一人は、地面を転がり回り。腹を押さえている。
しかし、親分と呼ばれた男は、腰をついているが、無事のようだ。
「もう一発・・・あれ」
弾が、銃の扉に、挟まっている。
・・・どうして、今から弾を入れる?
ガチャ、ガチャ
と銃の扉を開け閉めすると、弾がポロポロ落ちる。
「あれだけの特大魔法だ。しばらくは撃てまい。裸にヒン剝いて犬のように首に縄をかけて、四つん這いで歩かせて王都まで連れて行く!兄弟の供養だ!」
今度は、
私は慌てる。
ふりをする。
プランBがある。
男は私に飛びかかって来たが、間一髪で、カバンから、スズメバチ用の殺虫剤を取り出すことに成功し、顔面めがけて、噴射する。
「ガヤアアアアア」
男の目に命中したようだ。
手で顔を押さえている。
そして、私は発火マンを取り出し、火炎放射器のように、火を付けて、噴射した。
「ギャアアアアア、熱い。熱い」
男の服はボロボロだったからか良く燃える。
少したつと、腹を撃たれた男のうめき声は消え。
燃えた男も動かなくなった。
「ゲホホホホ、オエーーー」
何故か吐く。
最後、心は冷静だったけど、体はショックが大きかった。
普通逆だろう。
いや、精神もショックを受けていた。
涙がホホを流れてくる。
あんな下劣な奴らなのに、正当防衛なのに、
思えば、これが、初めての殺人だ。
最後までお読み頂き有難うございました。