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アズサの近接戦闘研究

 ☆時は、対勇者戦闘団一期生12名、卒業直後


「アズサは、可愛い。とイケ面から言われたら、お前は、他人に『あたし~アズサは~イケ面にチョーカワヨって言われた~』と話すか?自慢するか?」


「何を仰るのですか・・・魔王様!そんな言葉使いはしません。そもそも言いませんよ。恥ずかしい!」


「なら、それを踏まえて、次の話を聞いてくれ」


 ☆地球2000年代初頭、中東某所PKO派遣


「ヘイ、日本人、スコープはつけないのかい?」

「ええ」


 各国が共同で出兵しているPKO活動での出来事だ。

 友好射撃大会をやったのだ。

 距離は200メートルだ。


 各国の兵士はいぶかしげに自衛隊の銃を見た。

 64式自動小銃だ。

 スコープがついていない。



 ☆結果


「優勝!日本!」

「「「オオオオ」」」

「「「何故?」」」

「スコープ無しで?」


「それは、7.62ミリ弾というのもあったがな。

 何にでも短所はあるが、短所から、「うわ」となるよりも、短所を頭に入れつつ長所を伸ばす方が、俺は好きだな」


「ちょっと、待って、魔王様、89式って、1989年に採用されたのですね」

「うんにゃ。一般部隊は、配備が遅れた。初めは、空挺団ぐらいだったね」


 しかし、この話は、例えば、熱帯雨林のジャングルでは、インドネシア軍が、世界最強であろうとも言われている。

 部隊での諜報活動なら、イギリス軍が、フォークランド紛争で、アルゼンチン軍の先制攻撃を察知した。


 各国の国民性や、予算、ドクトリンによって、戦術の偏りがあり。

 その中で、自衛隊の小銃班は、精密な動きを得意とする国民性から、200~800メートルなら、世界最高峰であろうと言う話だ。

 誇りに思ってもいいけど、過信は禁物だ。

 俺は、「日本すごいよー」てなテレビ番組が大嫌いだった。


 しかし、綺麗は汚い。汚いは綺麗とシェイクスピアが言ったように。長所は弱点に、弱点は長所になるのが戦争だ。



「これから、導かれる答えは?」

「近接戦闘に弱いです」

「そうだ。俺が転生した後の自衛隊は分からないが、確かに、基本教育で、中距離射撃、部隊に行ってから近接戦闘を学ぶな。どうしても、遅れは取るだろうな。だが、自衛隊でも研究はしていたぞ」



 ☆☆☆


 私は、近接戦闘の資料を召喚した。

 いろいろ書いてあるが、簡単な基礎動作を練習できるように、組み立てる。


「まず。移動時は、猫背で、銃口は下に向ける。これが、スタンディング、そして、レディで、肩まで銃を挙げる。

 そして、ゴーで、照門を覗き。照準を合わせて撃つ!」


「「「了解!」」」


 弾はまっすぐには飛ばない。放物線を描く。だから、小銃の照門を200メートルに合わせ。

 やや、低めに照準を合わせる訓練をする。


「ゴー!」


 パン!パン!パン!パン!


「弾をバラ撒け!」


 パン!パン!パン!パン!


 弾をバラ撒けは、三連斉射だ。いわゆるセミオートで、面を制圧する。


 思ったよりも簡単だが、近接で照門を覗くと、どうしても、視覚が狭くなる。

 だから、協力が必要だ。

 そのフォーメーションも研究、練習した。


 弾倉の付け替えももっと素早くしなければならない。


 しかし、素早い弾倉の付け替えは、思ったよりも、難しかった。


 空になった弾倉は、地面に落して、後で拾えばいいじゃないとの意見もあるが、

 弾倉に土や水がつくと、中のバネに動作不良が起きやすくなる。

 すると、いくら、銃を整備しても、弾倉が原因で、ジャムってしまう。


「引く!叩く、放つ!狙う!撃つ!」

 と故障排除は簡単にできるが、それが命取りになるかもしれない。


 答えは、魔王様にあった。


「弾のうは小さいだろう?だから、邪魔にならないくらいの何でもバックを作って、弾帯に吊り下げておけばいい。空弾倉はそこに放り込め」


「なるほど」


 まるで、渓流の釣り人のように、魚籠を腰につけるイメージだ。


 何でもバックをミーシャちゃんのお母さんのミヤお針子店に、多量発注だ!

 もう、この頃になると、欠かせない存在になった。


 そして、バグ取り。

 冒険者達と戦った。


 300メートルぐらいの距離で、戦う事を主眼としたが、

 やはり、そうは行かないこともある。


「冒険者が草むらに隠れれていた!」

「撃て!」


 そして、負傷者が出た。


「ウッ」


「ギリルが負傷しました!」


「いて、手斧が、肩にめり込んだよ」

「こら、泣くな!」


「大丈夫、エミリア、治療を・・・他は警戒!まだ、隠れているかもしれない」


 この世界において、近代兵器を使える貴重な1人だ。


 戦闘が続くとともに、近接戦闘で、少しつづ負傷者が出て来た。

 何が足りない?

 休暇?

 集中力?


「いや、良くやっているよ。他の部隊に比べれば、格段に負傷者が少ないよ」

「それじゃ、ダメなのです!」

「アズサ、休め。交代で休むことを命ずる!」


 魔王様は忙しい。各地の前線に、行かれる。

 答えは、魔王様にあるが、それでは、ダメだ。師匠に頼りすぎると、臨機応変の戦場で、対応が遅れる。

 だから、思考した。


 私たちは、この世界で最強の武器を持っている。

 なのに、何故、負傷する。


 その時、大狼のガオン君がやって来た。ついでにムサビ君。


「アズサ様~見てください。俺、ドワーフに、ガオン用の兜を新調しました!」

「ガオン!」(かっこいいですか?)


 ムサビ君は、武器防具をそろえるのが趣味だ。余念がない。コレクターかと思われるくらいに・・・

 それにしても、ガオン君可愛い。


 ナデナデ~

「クゥ~~~ン」


「ハッ、ガオン君、ムサビ君、有難う!」


 答えは単純だ。

 最強の武器を持っているが、最強の防具は装備していない。

 防弾チョッキ!防弾の手甲、レッグガード、アンクルガード、手袋は、刃物を防ぐタイプのもの。


 いろいろ召喚して、試したが、


「自衛隊の防弾チョッキは、砲弾の破片をも防ぐほどいいものだが・・・私らにはチョット重い」


 私は今年まで女子高生、エミリアはご令嬢、他は平民たち。

 この世界は、食べ物事情が悪い。

 騎士で、日本の成人男性の体格だろうか?


 じゃあ、アマ〇ンで売っている防刃チョッキはどうであろうか?

 なるべく軽いものでそろえてみた。


「皆、これを付けて、前線に出るのよ!近接戦闘に弱い私たちの弱点を補うわ!」


「「「了解!」」」


 道具に頼ることは恥ずかしいことではない。


 しかし、冒険者たちは姿を現さなくなった。


「ふう~、魔族狩りをあきらめてくれたかな。魔族の角や、オーガの牙を抜くなんて・・・」

 人間は残酷だ。


「アズサ様・・・魔族の方々は私たちを仲間とみていますわ」

「エミリア・・・」


 そして、余裕が出来たので、基本教育で後回しにした白兵戦の研究をしたが・・・


 ブロブブロブロ~


 発電機を回して、皆で、召喚した自衛隊の徒手格闘戦の大会のDVDを見る。


「エイー」「ヤー」

 ドスドス、バンバン!


 ・・・・


「何ですのあれ。怖いですわ」

「ヒィ、あれは出来ない・・・防具を付けているとは言え・・」

「あれ、オラの村のイノシシ倒せるだ!」

「「「無理!」」


 まるで、ボクシングと柔道を合わせたようだ。


 それなら、


 ☆護身術のDVDを上映中


「え~腕を掴まれたら、こうやって、体を入れ替えて・・・・護身術は簡単なものほど良いのです」


 ・・・・


「これなら・・」

「「「出来そうだ!」」」


 私たちにとっては、格闘技は、優先順位は低い。しかし、もし、相手に組み付かれた最悪の場合を考えて、護身術を練習をした。


「よし、まずは、腕を掴まれた時の練習をします。私の腕を掴んでみたい者、挙手!」


「「「ハイ!ハイ!ハイ!」」」


「ゴホン!アズサ様!それは、この世界では・・・しない方がいいです。私がお相手をしますわ!」

「え、何で」

「男女が、手をつなぐ行為に等しいですわ!エスコートの距離ですわ!男たちも、そんなに必死にならない!」


 ずっと、エミリアとしか練習できないアズサであった。


 ・・・


「ほお」

 アズサたちの訓練を空から見ていた。魔王アキラは、思わず感嘆の声を上げた。

 アズサたちの動作は拙いが、行きついた答えに感心しているのだ。


 ・・・ある筋では有名な話だが、米軍の格闘教官は、日本に来たら、合気道や古武術を習いたがる。

 最近流行の何でもアリは、実は、何でもアリと言うルールだ。尊敬はするし、敬意は払うが、俺たち軍人に必要なものとは別物だ。


 俺は、前世、米軍の幹部を格闘技大会に連れて行ったが、

 現代の格闘技には興味を示さなかった。


「これはどうだ?」

「アキラ・・・・」


 静かに、首を横に振った。拒絶の反応だ。


 なら、試しに、古武道の演武の大会に連れて行ったら、手を叩いて絶賛していたよ。

 ルールがない時代の古武道は、軍務に必要なものが含まれていたのだろうな。


 もう、アズサに教えることはないのかな。


 見守る魔王の背中は、寂しげであったと言う。


「今日は、ブゼンと飲むか」



最後までお読みいただき有難うございました。

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