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四天王対勇者パーティ

(プ。ユ〇ア、南〇最後の将・・・)


 魔族長アキラは、アズサの出で立ちを見て、笑いをこらえるのに、必死だ。

 アキラは、前世、日本時代は、おっさんだった。その世代で有名なアニメの女性キャラが着用していた鎧とそっくりなものをアズサが着ている。


 敵対勢力と謁見するときに、アキラの発案で、ドワーフ職人が作った逸品である。

 防御と、威圧を目的として作られた。


 アキラは、いつもなら、大笑いをするところであるが、アズサがヘソを曲げて、防具無しで、敵対勢力と会っても困る。

 必死にこらえていた。


 今回、謁見する者達は、勇者パーティである。



「魔王様!勇者を献上いたします!」


「ウグ、ウグ!」


 一人の男が猿ぐつわをされ、縛られた状態で、この魔王城の謁見の間まで、連れて来られた。

 連れてきたのは、聖女、賢者、剣聖と・・・従軍吟遊詩人である。

 吟遊詩人以外は、全て、女性である。

 いわゆる、勇者のハーレムパーティのはずだ。


 ・・・勇者は、裏切られたのね。

 とすぐにアズサは判断した。アズサ、36歳、女盛りである。



 魔王城、玉間には、魔王軍四天王がアズサの両脇に控え。護衛として、対勇者戦闘団一個小銃班が警備をしている。


「説明をしなさい」


「へへへへ、まず、私たちは、そこの四本角の最弱の四天王様と戦いました」


 アキラは、お前に最弱と言われる筋合いはないわ!

 と思いながら、情報の辻褄を合わせる。


 ・・・戦闘では、4人で来たが、まあ、中の下の勇者グループだった。

 勇者は、そこそこ、連携は出来ていない。勇者独りで戦っていた印象だったな。


『ほ~ら、ほら、ほら、どうした。勇者、聖剣が泣くぞ!雑念があると聖剣は応えないぞ!』

『ほら、他のパーティ、勇者を援護しなくては、連携がなっとらん!』


 アキラが、煽りながらもアドバイスするのは、未成年が急激な成長をする瞬間を見るのが大好きだからだ。

 アズサに銃のコーチをしたように、

 根っからのコーチ気質であった。


『俺が殿を務める。皆、逃げて!』

『ヒィ、逃げるわよ』


 ・・・・・


 従軍吟遊詩人と、話の内容は概ね一致した。


「へへへ、勇者と言っても、最弱にすら、敵わないのです。逃げ込んだ先は、森林地帯です」



 ☆森林地帯


『はあ、はあ、はあ、大狼に囲まれた。皆、俺が囮になるから、逃げろ!』


『ええ、分かったわ!』


 シュン、シュン!と木々のカゲから、まるで、存在を示すように、大狼が、姿をチラチラ現す。


『畜生、大狼め。遠巻きにしている。こちらが、疲弊するのを待っているみたいだ』


 そして、大狼にまたがったオーガがやって来ました。


『魔王軍四天王が一人!森林の追跡者、オーガの族長、ブゼンの子、ムサビ、参る!』


『何故、大狼から、降りる!』

『フン、お前が馬に乗っていないからだ!』

『ガオン!ガオ』(主様、カッコイイ!)

『後悔させてやる!』


 10回は、打ち合いました。


『オーガの戦士よ!時間は稼げた!またな。【ライト!】』


 ピカッと光源が包み。

 目が見えるころには、勇者の姿はなかった。


 そして、この森林の先で待っている者は、


「ここからは、私が話そう」

「アル、ゴホン、堕天使アルバート、お願いします」


 ・・・私と、骸骨博士で、庵で待っていたのだ。予定では、ここに、ムサビ殿に追われた勇者一行が現われ、私と骸骨博士で、魔族と人族の戦いの歴史を話し、一端、ニュートラルになってもらおうとする機会を設けるためだ。

 人族の私と、エルフの骸骨博士から、話せば、聞きやすいと言うものだ。


 しかし、


『魔王軍の方々ですか?勇者を捕獲しました。魔王様へのお取り次ぎをお願いします!』


『まあ、エルフ!イケオジだわ』

『ねえ、ねえ。私たちとお話ししない』


『なんじゃと!ワシ、裏切り者は好かんぞ!』


『え~もしかして、お爺ちゃん?』


『おい、おい、皆、俺様の女だろう。魔王様から褒美をもらうには、俺様の口が必要だぜ』


『は~い』


 ・・・


「ちょっと、待ちなさい。聖女と、賢者、剣聖・・・皆、そこの従軍吟遊詩人と?」


「へへへへ、私はご覧の通り、イケ面ですから」


 ・・・帝国の辺境の村で、スキル鑑定が行われ。この村に、勇者三職と剣聖のジョブ持ちがいることが判明し、帝都で、訓練を受けて、魔王討伐に出立したのは、条約に基づき通報がきたので、分かっていたが、吟遊詩人が来るとは、思わなかった。


「で、何故、貴方が勇者パーティなの?通常、支援職は、ポーターでしょう?」


「私は、帝国の大貴族の三男ですよ。私は戦士ですよ。私は、愛の唄で戦います。

 魔王城で愛の唄を披露しようと思いまして、

 魔王様はマスクを被っていますね。もし、良かったら、私が、ダンスのお相手をして差し上げても良いですよ!お顔は隠したままで大丈夫です。何なら、夜も、おっと、これは褒美次第ですね」


「な、何だと!」


 アルバートが、いきり立つが、アズサは目で止める。


 他の四天王は、


「はあ、どこの田舎者だ」

 とため息を付く。


「ええ、分かったわ。アリサ、ミーアとガオリン、エミリーと、城にいる者だけでいいわ。対勇者戦闘団令嬢会と令息会の皆様を呼んできて下さい」


「「「御意」」」


 ・・・・


 聖女、賢者、剣聖、それぞれ、村一帯で一番の美人と評判である。

 しかし・・・


「魔王様・・・お会出来て嬉しいですが、謁見中で良かったのですか?」


「「「対勇者戦闘団、令嬢会、参上いたしましたわ」」」

「「「同じく、子息会、参りました!」」」


「「「ヒィ」」」


 勇者以外は、声をあげた。


 アズサの娘、アリサは16歳、乙女盛りである。

 対勇者戦闘団の団員は、騎士爵待遇で、ヤクーツの旧貴族達は、こぞって、娘を嫁がせたがった。

 ヤクーツは、北国の色白美人を輩出する国として有名であった。

 令嬢、令息は、美男美女揃いだ。


 対して、村レベルの美人とは比べものにならない。


 そして、アズサは、面を取った。


 アズサは、アキラによると、某国営放送が、高校野球中継にわざとらしく映すチアリーダー並に可愛い。


 その美しさは、年齢を重ねるごとに、可愛いから、美人に変わり。化粧品によって、磨きがかかっていた。


 吟遊詩人、声は出なかった。

 しかし、かろうじて、今後のビジョンを話す。


「・・・・・魔王様、勇者は殺して下さい。次の勇者が来たら、私が、また、権力で吟遊詩人として潜り込みます。

 また、勇者をはめて、献上いたしますよ。

 その代り、この国の美女を妻に、お願いします」


「「「ちょっと!」」」

 と、聖女、剣聖、賢者は、思わず声をあげる。


 アズサは、一考したうち。


「それも・・いいかもね。勇者の身柄はこちらで引き取ります。

 褒美に・・・」


 固唾をのむ。

 魔族領は豊かだと評判だからだ。


「褒美に、私と決闘できる権利を進呈します。

 勝てば、英雄ですよ。他の褒美はありませんし、拒否は出来ません。

 明日まで、貴族牢でお過ごし下さい。連れて行きなさい」


「「「ヒィ」」」


 聖女、賢者、剣聖と、吟遊詩人は連れて行かれた。


「さて、勇者よ。私は魔王、アズサ・ササキ。貴方のお名前は?」


「帝国、辺境の大麦村の、ダンだ!」


「さて、私は、あの者たちと逆の提案をします。賢者、聖女、剣聖・・・勇者パーティの者を欺して連れてきたら、一人につき白金貨を一枚進呈します。

 如何ですか?」


「断る!断ります!」


「あら、貴方は欺されて連れて来られたのよ。見張りを一人でやらされて、テントで、ギシギシアンアンやられていたのでしょう?

 悔しかったでしょう?

 悲しかったでしょう?

 復讐したかったでしょう?

 だから、貴方もやり返すの。

 楽をして、お金を儲けたいと思いませんか?」


【思いません!】


(キュン♡)

(オオ!)


 あら、令嬢会と子息会から、何か心の声が、アリサの目が潤んでいる・・・これは、


「私も決闘して頂きたい!」

「それは、無理ね。出直して来なさい」


 ・・・・


 結局


「さあ、愛の言葉で戦うのでしょう?私を愛の唄で屈服させて見なさい」


「そ、そんなこと出来るワケないでしょう!」


 パンと銃声が一発響いた。


 聖女達は、即座に、降参をした。

「「「降参します!」」」


 アズサは、拘束されている勇者の前に立ち。勇者の首に掛かっていたペンダントを取り。ペンダントに向かって話す。


「帝国皇帝、アレク三世殿、委細はこの通りです」


「??????」


「知らなかったの?これは魔道記録装置よ」



 ☆☆☆1年後、女神信仰圏ザイツ帝国宮廷


 勇者ダンの魔道記録装置から、アズサの発言を聞いた皇帝アルク三世は、


「なるほどな・・・吟遊詩人の家門を、根絶やしにしろ」


 と開口一番に命じた。


「「「御意!」」」


 次に、

「聖女、賢者、剣聖は、冒険者ギルドで、出直すも良し。郷に帰るも良し。好きにしろ。報賞は無しだ」


「「「そんな!」」」


「して、勇者ダン殿は魔族領で、1年間何をしていたのだ?」


「陛下・・その向こうで学校に行きました」


「ほお。成果はあったのか?」


「敵わないと分かりました。

 知識と経験が足りない。全て何もかも足りない・・それで、こちらで、整理がついたら、魔族領に・・行きたいです」


 宰相が陛下に声を掛ける。

「陛下、魔王アズサより。書状が来ております」

「読み上げ」


「勇者ダン殿は、強敵故、討伐に来られたら、こちらとしては、打つ手がないとの・・・ことです」


「フハハハハハハハ!お菓子怖いか?」


 お菓子怖い。日本で言えば、饅頭怖いに相当する吟遊詩人の民衆向けの教訓話である。


 ・・・魔王は、勇者ダンを認め。魔族領に来て欲しい。それが、かなわないのなら、こちらの国で、大事にしろと言うことだな。


「ダンよ。褒美を取らす。親代わりに育てた伯母に年金を送ろう。貴殿には、旅費と当面の生活費、手形を渡す。向こうで、存分に学んで来い」


「あ、有難うございます」


 ☆魔族領


「さすがに、勇者が、対勇者戦闘団に入っては不味いだろ!」

「フフフ、アル、貴方も勇者よ」


「お母様・・・ダン君を、戦車小隊付きに・・・」


 フフフ、アリサがダン君に興味を持っているみたいだわ。

「まだ、学校に行ってからよ。ダン殿は、学業に興味を持っていたわ。彼の意思を尊重しましょう」


「・・・許さん。まず。俺が剣を教えてやる!」

「お父様!」


 後に、二人目の、堕天使枠が誕生することになる。


最後までお読み頂き有難うございました。

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