表彰された犬
☆時は、アズサが精霊王国王都獣人族集落で、初めての武器召喚を行ったときに遡る。
「え~と、銀貨をここに置いて、召喚!」
ボア~
「まあ、木と鉄で出来た銃ね」
☆同時刻、関東某駐屯地夜
「大変です!当直陸曹!64式小銃が消えて、また、現れたのです!」
「お前、何を言っている!」
「はい。我部隊には、64式小銃が10丁ほどありますね」
「うむ。儀式用か、狙撃用だな」
「はい、ご存知の通り。狙撃大会あとなので、許可を受けて、営内で、銃整備を行っていたのです。そしたら、青く光って、消えて、また、現れたのです」
「光!だと」
・・・最近、高校で一クラスの生徒が光とともに消えた事件があったな。
「分かった。当直駐屯地司令に連絡し、連隊長にも来てもらおう」
ピ~~~ン
当直陸曹はマイクを取る。
「あ、あ、残留組は速やかに当直室前に集合!」
ダダダダダダ!
「即応ですか?」
「それとも、脱柵を試みた新隊員が出たのですか?」
「いや、違う。・・・・・・と言うわけで付近は捜索。64式小銃に関しては、警務隊がくるまで、そのまま警戒員を置いて監視し、誰にも触らせるな」
「「「了解」」」
「ラノベかよ」
「もしかして、銃召喚されちゃった?!」
その時、若手陸曹が、犬を一匹連れてきた。
「ワン!ワン!ワン!」(女の子どこ?)
「お、クロ武器防護犬のお出ましかよ!」
「女の子大好き、助平犬」
「バカモノ、一応、名簿に載っている創意工夫資材だぞ!」
☆
この黒犬は、隊員たちが、演習で拾って来た犬である。
『ワン!ワン!ワン!ワン!』(ごはん!ごはん!ごはん!)
『おい、こんな山奥で、野犬じゃないな。人慣れすぎている』
『誰か捨てたのだろう。野犬化したら、面倒だし、それに近くに不発弾がゴロゴロしている地域もある・・・』
『連れて行くか。保健所に相談だな』
・・・・
某駐屯地
結局、誰も保健所に連れて行かなかった。可哀そうだからだ。
それに、この犬は隊員たちによくなついた。
『ワン!ワン!ワン!ワン』(ご主人!ご主人!女の子だよ!)
『おい!クロ!駐屯地業務隊の女性事務官のところに行くな!』
『フフフフ、飼っているのですか?』
『まあ、そうです・・』
しかし、黙って飼っていたが・・・
『どしよう。明日、駐屯地司令の営内巡視がある』
『俺に任せろ!隠すのが良くないのさ』
一人の若手三等陸曹が、悪知恵を働かせた。
・・・・
『気を付け!』
『ワン!ワン!ワン!』(おじさん誰!誰!)
『誰だ!犬を飼っているのは!』
『はい、駐屯地司令、私です!この犬は武器防護犬です!』
『な、何?そうなのか?フ~ン、だったら、名簿に記載しておくように』
『了解です!』
自衛隊は、武器が無くなったら見つかるまで探す。
この武器防護と言えば、認められやすい性質を利用したのだ。
しかし、犬まで認められるとは、隊員も思っては見なかった。
「里親を探してくれると思ったのだけどな」
「ああ、駐屯地司令は、地元にも顔がきくからな」
「じゃあ、クロ、武器防護頼むぞ」
「ワン!」(ごはん!)
以来、器物、武器防護犬として、駐屯地で正式に飼われることになった。
・・・・・
「異常なしです」
「最近、異常なことが起きるな。放射線を浴びた痕跡は?」
「ないです。異常なしです」
「連隊長、申し訳ありません。ご足労頂いて」
「何、空振り覚悟の自主登庁だ。それに、クロの活躍も見られたしな」
「ワン!ワン!」(おじさん!ごはん!)
「さて、64式自動小銃を倉庫に戻すように」
「了解です」
自衛隊には武器庫の名称はない。駐屯地祭りなどの一般開放で入った一般人や出入りの業者さんにも武器の所在場所を隠すためだ。通常、〇〇倉庫と呼ばれている。
☆その時、異世界
「う~む。もう、一丁、召喚して、分解してみようか?一丁だと見本がないから、分解した後、組み立てができないわ」
「銀貨を置いて、召喚!」
☆関東某駐屯地
ピカッ!
「何!銃が光ったぞ!」
「加藤士長、銃を放せ!」
銃は地面に置かれた。
その時、クロは、銃の床尾、木の部分にかみついた
(ワン!ワン!女の子の匂いがする)
☆異世界
「ヒィ、ワンちゃん!」
「ワン!ワン!ワン!」(こんにちは!)
「駄目よ。ここに来ちゃ!エイ、召喚キャンセル!」
キャンセルにより犬と銃は消えて行った。
「ふう。駄目よ。ご主人のもとに帰りなさい・・・でも、寂しいわね」
☆
「クロ!よくやった。お前は、銃を守ったぞ。正に武器防護犬だ!」
「「「クロ!」」」
「ワン!」(何?)
☆その後、
クロは表彰された。
「表彰!クロ殿、功績!危険を顧みず銃を守ったこと。貴殿の勇気に対して、副賞、高級犬缶一ダースを贈るものとする」
パチ!パチ!パチ!パチ!
更に、数か月後
☆駐屯地祭り一般開放日
「クロ、お前は女の人が大好きだから、今日は犬小屋にいろな」
「ワン!ワン!ワン!」(女の子の匂い!)
「こら、クロ、戻れ!」
「キャ、ワンちゃん・・・あら」
「すみません。うちの犬が・・」
「キャン!キャン!」(ご主人!)
「まあ、まあ、パビィ!何故、自衛隊の駐屯地で?探したのよ~グスン、グスン」
・・・クロは、キャンプに来たご主人一家と離れてしまい。
自衛隊の天幕まで紛れ込んでしまった迷い犬であった。
「有難うございます!」
「ハハハ、だから、女性を見ると、駆け寄ったのですね」
「ワン!ワン!ワン!」(今まで、ありがとう!)
その後、物品名簿から、クロの名前は消えた。
最後までお読みいただき有難うございました。




