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エピローグ

「我の前方に60度扇形、射界清掃実施せよ!」


「「魔王様前方60度扇形、射界清掃了解!」」


 アズサは、ヤマダ王国と魔族領との国境付近に進出していた。

 射界清掃とは、つまり、草刈りである。


 視界をふさぐ草を刈り、そこから、射撃を行うのだ。


 命じられた団員は鎌を取り出し、アズサの前の草を刈る。


 アズサは伏せ撃ちをするつもりだ、無声式でないのは、敵はまだ現われていないからだ。

 待ち伏せをしている。


 ・・・ヤマダ王国との交易が始まってから、すぐに、不具合が発生した。

 盗賊がいたのだ。護衛をつけていたがやられた。

 盗賊には剣の達人がいた。


「殿、申訳ない。手練れの忍び10人やられたけ」

「ヨザエモン、いいのよ。これも、この世界のならい。しかし・・」

「ええ、勇者の可能性があるけえ。生き残りの証言じゃ、電光石火の剣だったそうじゃ」


「剣使いは、どんな男?」

「危険なので、遠くから尾行させている。フードを被っているので分からんのじゃ」

「そう・・」


 ・・・もしや、剣聖勇者、アルバート君?盗賊をやっているの?


 アズサは一抹の不安を覚えた。あの男に勝てるのか?距離50メートルなら、スキル俊足を使われて、銃を持っていても間違いなく負ける。確実に勝つには、遠くからの意識外の攻撃しかない。

 だから、遠くからの射撃を試みる作戦を立てた。およそ、500メートルである。


「来た!」


 ・・・肩付けヨシ、頬付けヨシ、見い出しヨシ、吸う、吐く、止める。暗夜に霜が降りるごとく引き金を引くべし。


 アキラから習った事を無意識に心の中で復唱するのは、アルバートがアズサにとって、命の恩人であるから、それとも、特別な思いがあるからなのか、

 理由は、本人にも分からない。雑念を払うように、基本基礎を確認した。



 ☆500メートル先


「へへへへ、勇者様、次はどうしますか?」

「適当な敵、見繕ってよ」

「へい」


 剣を持った一人の男を中心に、小汚い5人の男が付き従う。


「勇者様、たまげたぜ。あっという間に10人の護衛を斬るなんてよ。何で俺らの先生をやって下さるので」


「強くなりたい。魔王に挑まなければならない。魔族なら襲ってもお咎めないだろ?斬って、斬って、斬りまくって、早く、強くなって、あの人の仇を・・いや、いい」


 ・・・冒険者ギルドに登録したが、F級は薬草探しから・・時間がかかりすぎる。だから、俺は盗賊に参加した。この前の商隊の護衛は、人族だったけど、中々強かった。レベルも上がったぜ。次は、魔族を狩って強くなる。あの人を殺したあいつに、復讐・・・「う、うわ」


 パン!パン!パン!パン!・・・


 と遠くから、小さな銃声が響いた。



 ☆アズサ視点


「殿、危険じゃ!こいつ、まだ生きている!」


 ・・・検死に向かったアズサ一向。倒れた6人の中から1人だけ立ち上がった。

 健太だ。


「・・・・健太君」

 彼は右足を引きずっている。強く剣はふるえないだろう。

 アズサとは1年ぶりの再会であるが、それに構わずに、絞るように声を出す。


「ひ、卑怯な」

「そ、現代戦の戦術は卑怯が基本よ」


「違う。この世界に銃なんて卑怯だ。銃があれば、お前なんか。倒せる!」


「そう」


「殿!」

「「「魔王様!」」」


 アズサは何を思ったのか、自分の64式自動小銃を健太に手渡す。


「さあ、撃ちなさい」


「ううう」


 健太はアタフタしながらも、左手で銃を持ち。体を木に寄っかかって支え、アズサに狙いを定める。

 時間がかかるが、アズサは何もしないで見ているだけだ。


「遠慮はしないぜ!」


 しかし、アズサは素早く、射線を外しながら、健太に接近し、銃の機関部の上、コウカンを抑えた。


「ひ、引けない」

「あのね。ここを抑えたら、銃は動かないよ。エイ!」


 アズサは健太を蹴り。尻餅をつかせ。銃を奪った。


 そして、狙いを定め。


「もう、心残りないわね」


 パン!


 一発銃声が響いた。


「殿・・お見事じゃ」

「ヨザエモン、この男はこの地で埋葬してあげて、他の盗賊の死体は、一番近い宿場町で、サラシて」


「御意!」


 死体をサラス、残酷なようだが、犯罪を抑止をするためだ。




 ☆ヤクーツ城


 城に帰ったアズサは、残存勇者の行き先の調査を命じた。

 野に放った勇者が盗賊をしていないかの確認のためである。


 しかし、イワン、エミリア、ゴーリキの3人は、アズサに謁見を求め。

 風間、他8名の勇者を殺害したことを自白した。


「魔王様、風間他8名のクラスメイトを殺害したのは私の独断です。この二人は命令をきいただけでございます。責はありません」

「いえ、私も・・」

「いや、私がエミリアを誘い・・」


 イワン、エミリア、ゴーリキは、魔王アズサの前で、お互いにかばい合うが、


【バン!】

 とオーガ族長のブゼンが、足を踏み鳴らし

「黙られよ!魔王様の御前であるぞ!」

 と一喝した。


 シーーーーン


 玉座に座るアズサは、少し思案顔をした後。


「イワン、私はあの時、武器庫で言いましたよね。『ヤクーツ領内で、謀略もあるだろうけども』とあの時は、謀略を認めていました。しかも、私はあの時は、魔王アキラ様の一臣下でした。

 だから、罪には問いません。

 しかし、私は今、魔王です。これからは、私のために謀略をしなさい」


「「「御意」」」


 ・・・しかし、このまま下がらせては、溝が出来る。


「イワン、これからは、人族代表を辞任し、魔王付きの秘書官に任命します。次の人族代表はヤクーツ王家から選任することを約束します」


「謹んでお受けします」


「エミリア、ゴーリキ・・・半年間の休暇をあげます。その間に、結婚しなさい。イチャイチャが、イチャイチャが目立つのよ!その次は、休暇が終わったら考えます。ハア、ハア」


「ヒィ、魔王様・・・」

「・・えっバレてた」

「これ、二人とも、返事は『御意』だ!」

「「御意!」」


 ・・・健太君のことで、風間君たちが、クズ勇者化してないか、確認作業したけども、聖王国に向かったクラスメイトは、鑑定ギルド、鍛冶ギルド、冒険者ギルドの名簿で確認が取れた。

 やっぱり、あの時、殺しておいた方が良かったのかな。これは今考えても仕方ない。

 それよりも、委員長は・・元気かな。



 ☆聖王国女神教会


 教会の中庭で、委員長の声が響く。


「ワンツー!そこで、スイッチして、ストレート!バックステップして、左右のフック!」

「「「はい!」」」


 その指示に、6人の聖女が合わせてボクササイズをしている。




 委員長は、聖女セイコから習ったボクササイズのコーチをするまで、回復をしていた。


「はあ、はあ、サチコ様、フォームが綺麗。流れるような動きですわ」

「ええ、聖女セイコ様のおかげです」

「あら、今日は聖女セイコ様、いらっしゃらないのね」

「何でも呼び出しを受けたそうですわ」

「まあ」



 ☆取り調べ室


「聖女セイコ殿、さすがに、いかんでしょう。聖女が魔王に、手紙と金貨を送っては」


 教会の怪鳥通信を使いたいと申し出た聖女セイコに、聖騎士の取り調べが入った。


「ウグ、ウグ、見逃して下さい!」


 手紙の内容は、


「検閲します・・・何?何?『金貨100枚同封します。ドランホランの継続購入希望、聖女より』」

「何の暗号だ!」


「そのまんまよ!」


「これ、この騒ぎは何事だ」


「スタイリン教授!ここに来てはダメでしょう!」


「聖女様、この方は法王様です」


「フォフォフォ、欺していた。ワシは異世界研究が趣味で教授もしているのだ。二足の草鞋、すまなかったのう」


「ヒィ、ただのズレた研究をしているお爺ちゃんだと思っていた!」


「アハハハ、たいがいじゃのう」


 ・・・


「そうか、そうゆう事情か、しかし、もう少し、待て、今、魔王は人族だ。魔族と通商条約を結ぶ準備をしている。さすがに、筆頭聖女が禁則を破ってはいけないのう」


「そ、そんなーーー、グスン、グスン」


(うわ、ガチ泣きしているよ)


 しばらく、聖女セイコの泣き声が響き渡ったと言う。





最後までお読み頂き有難うございました。


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