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第2話 

 令和5年、教室は光に包まれた。

 気が付いたら、西洋のお城、床には魔方陣が描かれている大広間に、2-Bの先生を含め28人が転移させられたらしい。


 私たちはすぐに鑑定を受けさせられ。ジョブとスキルを基に検査をされた。

 そして、戦闘序列を付けられた。

 先生は特別で、1番、2~28位は生徒の序列で、私は28位である。

 27位は坂口君の村人、私は召喚士である。


 検査の結果、私のスキルは等価召喚、何だかふざけた名前だが、召喚に対価が必要とされる。その代り、現地にとどめることが出来るというもの。対価で、召喚元の矛盾を解決するらしい。

 例えば、伝説のドラゴンを召喚しようとしたら、伝説のドラゴン級の何かが必要。

 全く意味がないと判定された。


 実験では、この国では高価な魔石を対価に、召喚したら、アスファルトが出てきた。

 あちゃーと声こそ聞こえてこないが、失望されたのが分かった。


 そして、今、私は召喚したこの国のブリトニー王女殿下に質問をしている。


「魔王城に、日本に帰れる転移の門があるとしたら、世界征服を企むほど好戦的な魔王のことです。日本に現われますよね。私には、日本に魔族や魔物があふれたとのニュースが流れた記憶がありません。本当にあるのですか?」


 金髪、アイスブルーの綺麗なお人形さんみたいなお姫様は、言葉を濁し

「そ、それは、その、ええ、と」


 とオロオロしているだけ。庇護欲をそそる仕草だ。更に追い撃ちをかける私は性格が悪く見えるのだろう。

 してやられた。私は悪者に見えている。


「それで、何故、私たちなのですか?私たちは戦ったことがありません。自衛隊や武道家の方を呼ばない理由の説明をお願いします」


「グスン、グスン、呼んでしまって、申訳ありません。世界の危機なのです。隣国が魔王軍に襲われて、魔族に支配されました。民は過酷な支配を受けてます」


「知らんわ!」


「ヒィ、そうですよね。しかし、貴方たちは勇者様です。どうか、我国を救って下さい。グスン、グスン、ウウ、呼んでしまってごめんなさい」



「おい、さっきから、佐々木、お姫様、困ってるよ」

「そーよ。何でも質問すれば答が返ってくると思うなんて世の中、知らなすぎ」

「佐々木殿、悪手でござる。我々は、この王国に衣食住の面倒を見てもらわなければならないでござる」


 ・・・質問の結果、私はクラスメイトたちに責められている。

 お姫様の説明に、違和感があった。だから質問をしただけだ、

 ここは日本ではない。異世界である。

 世界征服を企む魔王軍に隣国を占領された。次は我国だ。だから、助けて欲しい。

 魔王を滅ぼしたら、魔族のお宝を奪って、魔王城にあるという転移の門で日本に帰っても良い。この国に残って貴族になるのも良いよと提案をされた。


 初めから、戦わないで、日本に帰る一択でしょう。ここは電気もガスも水道もない世界だ。

 それに召喚という名の誘拐だ。


 八巻先生、いつも、平和、平和と言ってるくせに、熱心に、メイドさんの説明を聞いている。

 拳を握って戦う気満満だ。


 その時。ブリトニーは、騎士に目配せをした。このような事態も想定済み。

 男ならメイドが、女なら騎士が引き止める作戦である。


 騎士の中から、一人、兜を脱ぎ。豊かな金髪の巻髪をさらして、ブルーの目の青年が佐々木の前で膝をつく。


「私は、伯爵家出身のクルスと申します。17歳です。異世界の姫よ。不安なのはわかります。しかし、我々と訓練をします。私たちと一緒に頑張りませんか?実は、一目見たときから、貴女に心を奪われました。伯爵家の家族に紹介したい。どうであろうか?

 ここは、貴方たちのいた世界とは違い。魔法のある進んだ世界です。1日3食出ます。どうか、私たちと一緒に頑張って欲しい。」


 ・・・はあ、魔法のある進んだ世界、1日3食、違和感が半端ない。

 気が付いて、先生はダメだ。委員長なら、もしかして、気が付いて!気が付いて!


 しかし、私の願い虚しくクラスメイトたちは拍手喝采だ。


 パチパチパチ!

「クルスさん。マジパネ!勇気ある告白!」

「佐々木さん。ちゃんと目を見て、答えを出してあげて!」

「佐々木、クルスさんの男気、応えてやれよ!」

「いい話でござる!」


 ・・・しまった。どうしよう。あのお姫様や神官、騎士達を欺くのは無理だ。もしかして、研究されている。

 なら、クラスメイト達を怒らせる。


 場を壊さなければ、このまま、こいつらの言いなりになる。

 人生の決定権を他人に委ねてはいけない。


 私は、場を壊す天才だった親戚の伯父さんを思い出す。

 古い芸人さんの似ていないものまねをして、ケンカになりそうな場を、さらに混沌とさせる。

 ダメだ。これしか思い出せない。


 差し出された手をパチンと払いのけ。


「無理ー、私には『オ~ホホホホ!』何て、出来ませんわ。佐〇系男子が好みなの。ゲット!」


 とクルリと回って、両手の人差し指を、巻髪の騎士に指した。


「「「アハハハハハッハ」」」

「クルス、フラれてやんの!」


 ・・・あら、異世界人には、大好評だ。

 しかし、クラスメイトたちは、大激怒だ。


「佐々木、クルスさんは真面目にお前のことを・・」

「サイテー」


 クルスっていうの?巻髪はプルプル震えながら、

「なんだ。おもしれー女か。なら、しょうがない!これはノーカントだ。令嬢じゃない使役獣・・」


 ・・・ヨシ!奴らの本音が引き出せたかもと思ったら、


【クルス!】


 ・・・ここで、先程まで、オロオロしていたお姫様が、大声を出した。

 皆、気が付いて、しえきじゅう。使役獣と私たちのことを思っているよ!

 それに、『おもしれー女』、微妙にずれているけど、研究もされている。過去に誘拐(召喚)された日本人いるよ!

 気が付いて、気が付いて、気が付いて


 しかし、ここで、お姫様が、大ナタを振るった。


「私どもが呼んだのは、勇気のある勇者様でございます!戦いたくないのならよろしくってよ。しかし、召喚したのは、我が精霊国でございます。戦って頂けないのなら、仕方ありません!面倒は見させて頂きますわ。

 次の中からお選び下さい。

 ①他の勇者様の召使いになる。

 ②貴族へ養子縁組み

 ③城を出て、冒険者になる。もっとも、冒険者は1年後に半数は死ぬ狭き門。扶持は1週間分だけ渡す」


 ・・・クルスは口説いた令嬢の数を自慢するクズであった。思わず地が出てしまったな。

 妾は、カス王朝精霊国の第一王女、ブリトニー、不穏分子などいらない。


 さあ、②を選べ。貴様は貴族位を持っている娼館の主に売られるのだ。異世界人でも抱きたいという酔狂な客は大金を出す。①なら、他の勇者サルたちのヘイト受け要員にしようぞ。

 正解は③だ。か細いが唯一自由になれる可能性のある選択肢だ。お前は、正解を鼻に突きつけられて、気が付かずに自滅するのだ。


「ハイ、ハイ、ハイ、戦闘序列28位、佐々木梓は、③を選びます!皆もそうしようよ」


 ・・・無理と分かっているが、私はクラスメイトに大声で話しかける。

 流されてお願い。流されて、


「はあ、佐々木はオワコンだよ。お姫様、いいよ。一度、外に出して世間の厳しさ、身を持ってたたき込んだ方がいいよ」

「そうよ。佐々木さん・・・・失望したわ」

「うむ。佐々木殿は28位でふてくされているのだろう。我は知っている戦いは厳しいのだ。錬金術士である我が18位なのは納得しているでござる!」


 次々と罵声が浴びせられる。


 ・・・ダメだ。誰も、私と外に出ようとしない。



 ブリトニーにとっては選んで欲しくない選択、戸惑いを隠すように、佐々木を説得する。

「あら、でも、本当に厳しいのよ。考え直して見ては・・私、つい、カッとなったの。ごめんなさいね。突然、この世界に来て驚いたでしょう。仲直りしましょう」


 ・・・しかし、ドレスを、クイ、クイ引っ張って、妾に耳打ちをする奴がいた。


「お姫様、佐々木さんに・・一度、外の世界の厳しさを教えた方がいいと思います」


 ・・・ほお、いいんちょうか、妾のドレスを素手で触るとは、後で礼儀を教えなければならないな。

 仕方ない。一端、放流するか。しかし、ササキの位置だけは知っておきたい。



「分かりましたわ。ササキ様・・・あの、このペンダントをどうぞ。身分証明書になりますわ。一週間城下町をみてくるのもいいですわ。いつでも、王城に来てもらえば、生活の保障はしますわ」


 私は何も言わせずにペンダントを奴の首に掛けた。純度の高い魔石がはめ込まれている。位置は術者ならわかる。範囲は王都周辺までなら分かる。鎖は金だ。

 いくら魔石の価値が分からない野蛮人でも、金は捨てまい。


「えっ」

 ササキは一瞬、怪訝な表情をしたわね。バレているか?


「このペンダントは、豪邸がかえるほどの値段ですわ。もし、無くしたら、弁償して頂きますから、ご注意下さいませ」


「え、これが?」


 ・・・腹が立つ。食うに困って帰ってきたら、皆の前で土下座させようぞ。


「後は、神官のドメル殿の指示に従って下さいませ。真の勇者様たちには、これからの生活の説明をしますわ。さあ、こちらの部屋に・・・戦う勇気のある方専用の貴賓室ですわ」




 ・・・私、佐々木は、神官から、突き当たりを右、三番目の部屋に行くように指示をされた。

 最期、お別れをしよう。精一杯、陽気に、思えば、あまり、皆とは話さなかったな。


「は~~い。では、皆様、さよなら」


「さ、佐々木の野郎、手を振りながら、スキップをしながら出て行きやがった」

「どこまでもふざけている。な、委員長、そうだよな」


「・・・でも、佐々木さん。あんな性格だっけ?」

「委員長、私、ビンタをするとこだったよ。もう臆病者のことは忘れましょう」



最後までお読み頂き有難うございました。

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