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エピローグ

「ここが、女神信仰圏の総本山、聖王国の教会か。委員長、遂に、着いたよ」


 コク「・・・・・」


 魔族領を通らずに、南回りで、半年かかった。

 他のクラスメイトたちは脱落した。


『健太、俺は鍛冶職だ。戦闘は無理。この町の親方に弟子入りすることに決めた。娘さんと結婚できるように頑張る』

『私は鑑定士だよ。貴族のお雇いになるよ。ねえ。もう、健太君も打倒魔王を諦めなよ。佐々木さん。普通じゃなかったよ』


 ・・・・・・・・・


 ☆☆☆


「聖女様・・・我国に亡命者が来ました。打倒魔王に参加したいとのことです。聖女様と同じ、黒髪、黒目です・・転移者と名乗っています。剣聖と聖女です」


「そ、分かったわ」



 ☆応接室


「なるほど、精霊王国は、現代軍によって、陥落したのね。佐々木という女子が、魔王軍の幹部・・・それで、規模は?召喚よね。武器や弾薬は無制限で出せるタイプのものかしら?」


「・・・分かりません。多分、100人ぐらい。佐々木はいつも護衛10人は連れていました」


 ・・・まるで、調査をしていないわね。ここに来て、魔王軍と戦いたいと言って来ているのに、敵を知ろうとしなかったのね。


「貴方たち、ご苦労様、我が国は受け入れますわ。情報料として、それぞれ、金貨一枚渡します。私が推薦状を書くので、聖王国市民として暮らしなさい」


「有難うございます。俺を勇者パーティに入れて下さい!」


「無理ね。1からF級冒険者から出直しなさい」


聖女セイコは即座に拒否をした。


「な、何故ですか?」


 「理由は二つあります。貴方は、①裏切り者。②弱い。以上」


「俺は剣聖だ!騎士団長とも闘えます!裏切り者とはどうゆうことですか!!」


 思わず健太は立ち上がった。


「フフフフ。あのね。何故、魔族領からここまで来られたの?勇者のジョブを持つ者を野放しにするのは危険よ。私が魔王軍だったら、お金を渡さずに、抹殺しているわよ」


「それは、クラスメイトだから当然だ!」


 ・・・はあ、この子、馬鹿だ。気が付こうとすらしない。


「それに、隣の聖女さん見てみなさい。会話をしたのは、いつ、かしら」


「えっ、いつも、していますよ。そうだろ?委員長」


「・・・そう・・・」


「ほら、話しています。昨日、宿に入るときに会話しました!」


 ☆昨日夕方


『この宿でいい?』

『そう・・』


 ・・・・・・・・・


「彼女、心の病気よ。どれ、病歴を見るわ。【聖女の診断!】


 委員長の体を青い光の輪が包み。聖女は、「なるほど・・可哀想に、だから、心神喪失の状態になったのね」

 と一人納得する。


「心神喪失状態ね。かなり、悪くなっている。旅の始めの頃は、もっと話せたのではなくて?」


「病気ではありません。普通です。委員長、基本、物静かですよ!」


「貴方には、男には明かせないわ。本当に鈍い。弱いわね!」


「だから、何!」



「シスター、彼女の荷物を調べて」


「はい!聖女様!」


 委員長は、為されるがまま、荷物と服を調べられた。



 ・・・



 委員長、佐伯幸子のカバンの中から、魔道録音器と、二つの羊皮紙の書類が見つかった。


「貴方が、馬鹿だから、再生するわね・・・内容によっては、貴方を殺すわ」


「だから、もったいぶる・・・」


 聖女の目つきに健太は黙る。見たことがある。

 あれは、

(佐々木と同じ目だ・・憐れみと厳しさを併せ持つ不思議な目)


 魔道録音器からは、アズサの声が聞こえてきた。


『・・・委員長、佐伯さん。貴女に酷い事をした城兵や貴族・・殺しておいたわ。こちらの回復術士の判断では、旅をするのが良いそうよ。

 ヤクーツの回復術士や魔族の祈祷師には心の病を治せる人はいない。人族の医療ギルドで、心の病を治せる人がいるかもしれないと皆は判断したわ。

 病気が治ったら、魔族領にも来られるようにしておいたから、それまで、健やかに・・・』


 聖女は分からない顔をしている健太に、羊皮紙の説明をする。


「この羊皮紙は、一つは一生、医療費は、アズサ・ササキの口座から引き落とす誓約魔法が施されているものよ。サチコ・サエキさん限定だわ。他人が使うと、呪いがかかるようになっているわ。


 もう一つは、彼女が放心して放浪していた場合のもの。身元を無事にヤクーツ領まで連れてきたら、賞金白金貨一枚(数億円)を払う約定よ。

 これを見たら、盗賊すら、彼女を賓客としてもてなすでしょうね」



「だから、委員長は・・何の病気だよ!ブリトニー王女殿下からは、臆病風に吹かれているから、反省房に入れたしか聞いていない!

 委員長も納得しているよ。学級裁判をやったから、彼女、倫理チートにかかったと判決されたよ」


 ・・・こいつ、殺したいわね。彼女、城でレイプされたのよ。

 口惜しいけど、まだ、聖女とよろしく出来たら、御利益があると馬鹿な事を信じるヤカラがいるわ。

 きっと、娼婦まがいのことをさせられたのね。


「女神信仰圏のプライドとして、この子は、私が預かります。治療費も私が持ちますわ。聖王教会にも、対話を通じて、心の病を治す術を開発中ですわ。

 臨床試験の名目で、彼女に最新の治療を施せられますわ」


「彼女は、俺のパーティの一員だ。勝手な事をするなよ!」


 健太は思わず。剣を抜いたが

 周りは落ち着いている。


 即座に、パキン!と剣が折れる音がした。


 聖女が手を軽く払って、魔法かナニカを放ったのだ。


「声を出さないのは感心したわ。多少は、修行したようね」


 違う。健太は呆気にとられ動けない。話せない状態だ。


「いいこと、女神圏の勇者達は、旅に出てもらうの。仲間は国が用意したり、自分で探すように促したり、時代と国でそれぞれだけど、その意味は分かる?

 友情・・・仲間を思いやる心が、魔王を倒せる力になるの。

 魔王と勇者パーティを戦わせるために、多くの騎士達が戦場で死ぬわ。

 その思いを背負って、勇者は能力以上の力を発揮するのよ。

 貴方にはそれが足りない。いえ、無いのよ」



「・・・・」


「Fラン冒険者として出直しなさい」


 健太は思い出す。

 城から出るときに、佐々木は何か言っていたと。

 思い出せないが、ひたすら委員長を頼むと言っていたような気が・・・


 それに、旅の始めの頃は・・・


 ☆6か月前


『委員長、また、医療ギルド?聖女が医療ギルドに行ったらシャレにならないよ。一体何の病気、リーダの俺に言えない病気か?』


『ええ、その、あの、少し疲れたから』


『ああ、もう、行くよ。1日でも早く聖王国に行って、打倒魔王軍に参加しなきゃいけない』


 ・・・・・


 旅の始めの頃は「そう」以外にも話していた。

 まさか、悪くなった?


「もう、それ、帰ってもらって」


「良いのですか?剣を抜いたのに・・分かりました。おい、帰れ」


 ・・・アズサ・ササキというのね。情報を分析すると、相当の手練れ。統率力がある。

 同じ学校で、剣道部の次期主将候補と、帰宅部。一体、ササキはどんな試練や訓練をこなしたのかしら。


 魔王軍に現代軍が存在することが確かになった。


 もはや、勝てないわね。


「あら、お肌が荒れたわ。この『聖光破斬』を使ったらお肌が荒れるわね。この世界、基礎化粧品がないから・・・早く持って来いよ!アキラめ!」


(聖女様・・・聖光破斬なんて魔法はございません。勝手に聖魔法を魔改造して・・・)

 この人、本当に聖女か?

 と護衛騎士は、心の中で疑問に思う。



 あれから、半年、未だに化粧品を持って来る約束を果たせていない魔王であった。





 ☆☆☆魔族領ヤクーツ城郊外


「まさか、ドワーフさんの中に、ドワーフ王が混じっていたとは」

「王様じゃない!息子に譲って来た。これは王の特権だ!」


 ・・・最近、ドワーフさんが増えてきたと思ったら、その中に王冠を被ったワシムさんがいた。

 尋問をしたら、王と判明した。各国が大金を出して招聘したがるドワーフ職人が500人もいる・・・



 今日は反射炉が初めて稼働する日、記念式典だ。アズサの召喚した本を試行錯誤して、どうにか。江戸時代末期の韮山反射炉とほぼ同じものが完成した。


「お、アズサがドレスを着ている・・・どれどれ、お前、某公共放送の高校野球で、チラとアップで映るチアみたいだな。

 何というか。化粧気はないが、磨けば光る美少女の素材だ」


「魔王様、それ、セクハラですよ!」


「アハハハハ、褒めているのさ。さあ、やろうか!俺が最初に火を付ける役だな」


 ・・・反射炉の足りないところは、この世界の風の特性を持つ魔石、火炎の魔石や魔法で補う。

 これで、鋼鉄を作り、人族の経済圏に殴り込みをかける。

 経済で相互に依存出来れば、戦争は起きにくくなる。

 あくまでも、起きにくくなるだけだ。


 条約を結ぶのが当面の目標、しかし、平和条約では弱い。

 いえ。もっと、何かが必要ね。


「おお、闇から出でよ。黒炎の~、あれだ。ファイヤーボール!」


「「「オオオオオオオオオォーーー」」」


 歓声が上がり。ドワーフや人族が、働きだす。


「さあ、アズサ様、次の予定がございますわ」

「エミリア、途中で、商業ギルドに寄って」

「畏まりましたわ」


 副官と共に、新たに召喚した軽自動車で、商業ギルドに向かう。


 アズサは同級生たちを放逐した後、毎日、残高を確認していた。

 始めの頃は、医療ギルドから引き落としがあったが、

 ここ、数か月、引き落としがない。



(委員長、元気なのかな)


 ・・・大丈夫よ。知らせがないのが無事な証拠。


 アズサは自分に言い聞かせる。

「アズサ様!」

奥からギルド長が慌てて飛び出してきた。


「ちょうど、良かった。今から王城に向かうところでした。アズサ様、人族方面から、貴女様宛ですか?・・・現代軍指導者宛てに、怪鳥通信便で書簡がきています」


「有難う。私が確認します。・・・えっ」


書簡の内容は


『サエキはこちらで治療中、アキラに〇―ラ以外のスキンケア用品を送れと伝えて

 聖女より』


であった。


「・・・聖女だけではわからないわ。どこの誰?〇―ラと言えば、お母さんがよく使っていたメーカー?・・・でも、委員長、良かった」


 アズサは、しばらく、空を見た。


 もう、この世界で生きて行く。後戻りはしないわ・・・


 今日、聖王国で開かれた女神信仰圏国王級会議で、魔族領への侵攻は、当分の間、凍結される決議がなされた。



最後までお読みいただき有難うございます。

ブクマ、イイね。評価して頂いた方、励みになりました。


後、もう少し続きます。

宜しかったらお付き合い下さい。

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