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第25話

「魔王が来るのか?」

「いや、大幹部らしいぞ」

「殺されはしないだろう」


 占領から一月後、王城の謁見室に、王都在住の貴族、商人が集められた。

 彼らの周りに、オーク、魔族兵が取り囲み。決して、歓迎はされていないことがうかがえる。


「おい・・・勇者たちもいるぞ」


 その中には、アズサの同級生もいた。


「来たぞ・・・人族だ!なら、話が分かるってものだ」


 アズサは、対勇者戦闘団の一個班を率いて、王座に座る。


 男爵が叫んだ。

「な、何だと、ふざけるな!使役獣だと、そこを降りろ!」


「それ、殺して」


「御意!」


 パスンと警備の魔族兵により、体を真っ二つに斬られた。


「「「ヒィ」」」


 一瞬で場は凍りつく。


 次に、魔法剣士の風間と同級生達は、ワラワラと壇上に向かおうとしたが、

 榊原と山口は、服の裾を掴んで止める。


「止めなって」

「私、捕虜になってわかった。佐々木さん・・・本当に殺すよ」

「強がっているだけさ。同級生だろ?俺たちも魔王軍に入るぜ」

「自衛隊の銃がある。俺たちも銃を持てば無双出来るよ」


「それ、ダンス!」

 アズサは隣に控えていたエミリアに命じた。


 副官のエミリアは意図を察し具体的に命じる。

「魔族兵は待避!」

「ゴーリキ、足下に撃て」


「「「了解!」」」

「了解!ダンス!」


 アズサの意図を察知し、部下達は動く。89式自動小銃で、元同級生達の足下に銃弾を撃ち込む。


 パン!パン!パン!パン!


 バシ!バシ!と床が削れ、弾丸は跳ね上がり、周りの貴族達にも当たる。

 一部、悲鳴があがる。

「ヒィ、イタい」

「死んでる」


「な、な、な。佐々木・・・どうして」


「話始まらないから、早く、負け側に戻りなさい」


 皆はようやく、魔族の恐ろしさを思い出した。

 外見は10代の女子で人族、どこか軽んじていた。


「遷都します。最低賃金を定めます。細部はエミリア、説明しなさい」


「了解ですわ・・・」


 ・・・


「司令官殿・・・獣人族にまで最低賃金を渡したら国は回りません。どうかご再考を」

「国を回す気はありません。再考しない。以上」


「へへへ、ラクーア自由都市の駐在員ですが、その、債権を少し返して頂けないでしょうか?これは、ダークエルフや地竜を引き渡せないのなら。お金を返して、いえ、半分でいいのでお返し頂けたら・・・」


「はあ?馬鹿なの。貴方たちは投資で失敗したのよ。投資で失敗したらお金が返ってくるの?商人の誇りがあるのなら、損害を甘受しなさい」


「あの、王都市民代表ですが、そろそろ、格闘技大会を開いて頂きたいとの要望が出ています。魔族の迫力ある戦い。早くみたいと」


「馬鹿なの?自分たちでやりなさい」


 ・・・ああ、面倒くさい。既得権益が多すぎる。遷都を決定して良かった。アリスちゃんがまともで良かった。

 つくづく貴族と王都市民は、恩恵を特権と勘違いしている奴らばかりだと思い知った。

 大貴族の財産は占領軍の特権として没収。


 さて、とどめを刺しますか。


「ここに、魔王アキラ全権代理、魔王軍精霊王国方面軍司令官アズサ・ササキの名において宣言します。

 カス朝精霊王国の消滅と、新たに、グロスター朝精霊王国の復活を宣言します。初代国王は、アリス・グロスター、尚、カス王家の王族は6歳未満の児童以外は処刑、当分は魔王軍が治安維持に当たります。質問は認めません。以上」


「国が無くなる・・・爵位がなくなるだと」

「死ぬしかない」


「次は、風間、田貫・・・以外は退場するように」


 ・・・


「さて、貴方方には、3つの選択肢を与えます。

 ①グロスター王朝の下級官吏として、北方で魔獣退治に勤しむこと。お給金は最低賃金しかわたせません。

 ②能力封じの魔道具をつけて、対勇者戦闘団の下働きをしてもらう。様子を見て、私のお眼鏡にかなったら、正規の訓練を受ける権利を与えます。対勇者戦闘団の一員になれるかもしれませんよ。

 ③扶持を渡すので、職を探し、第2の人生を切り開く」



 ・・・剣聖の武藤健太君も、委員長も全員③を選んだので、そのまま放逐をした。

 健太君は終始黙ったままだ。彼はブリトニーの死体を担いで、王都を彷徨っている所を・・・捕獲された。

 メンタルが心配・・いえ、人の心配をしている場合ではないわ。


 だれか、1人でも②を選んでくれたら、助けられるのに、守ってあげられるのに、

 あれ、エミリアが、背中をさすっている。ミーシャちゃんが肩に額を当てて来る。甘えているのかな。


 あれ、


(涙が頬を流れている。もう、皆と会えないのね)


 もう、日本に帰れないと分かった以上、立ち止まってはダメね。私はこの世界で生きていく。


「エミリア、ミーシャ、皆、通常業務に戻るわよ」


「「「了解」」」


 ・・・


「風間君、どうする?」

「考えがあるって、佐々木を出し抜くぞ」

「あんなに金貨があるのに、俺たちにはこれっぽっちしか渡さない。ざまぁをする展開だよ。健太お前も来るよな」


「・・・俺はいい。国を出る」

「私は、佐々木さん怖い。離れたいわ」


 残ったクラスメイトの半数は健太について外国に行き。

 風間についた半数は、王都内のある場所に向かった。


 ☆☆☆王都内人族軍駐屯地


「ほお、カザマ殿・・・総司令官殿の平民学校の同級生だと」


「そうだよ。俺たちをイワンさんの騎士団に入れてくれたら佐々木よりも活躍できるぜ」


「まあ、そうだの」


「大体さ。銃があれば無双出来る。佐々木は銃を出すだけでいいのさ。そう思いませんか?」


「私は、難しい事は分からない。今のままで充分だ」


 私はイワン、旧ヤクーツ王国の元国王だ。現在は主に魔族領の事務を任されている。いわば魔族に所属する人族だ。人口30万人の人族は、事務方で重宝されている。これも、魔王アキラ様が、我等を処刑しなかったおかげだ。

 魔王様は転生者、きっと見抜いていたのだな。


「現状維持じゃ。佐々木に更に抜かされるよ。俺が佐々木を説得して、銃を騎士団にも配備されるようにするよ」


 ほお、頭はいいな。これもかの世界の平民学校の教育水準が高いことを示している。


「しかし、銃を扱うには、それ相応の訓練が必要だと聞いたぞ」


「え、引き金を引くだけでしょう。少し訓練をすれば大丈夫だよ」


 まあ、頭はいいが、想像力が足りないな。私は小国だが、8人の兄弟姉妹達を出し抜いて王位を継いだのだ。


「まあ、確かにそうかもしれないな。現に私も総司令官殿から、銃を渡されているぞ」


「え、見せて下さい」


 私は9ミリ拳銃を取り出し、彼らに向けて撃った。


 パン!パン!パン!


「ウグ、ハア」

「ヒィ、何故?」


「君たちは、無双される方です。使い方次第で、このジジでも勇者を倒せる。と想定しなかったのですか?・・・」


 銃声を合図にエミリアとゴーリキが突入する。


 ほお、ゆっくり、お互いに、距離を取って、入ってくる。

 しかも、相手の動きの先を読んでいるのか?


 パン!パン!パン!


 魔法剣士から打ち取った。


 この「ゆっくり急げ」の行動は興味深い。騎士団でも使えぬものか。


「「「・・・・」」」


 彼らは沈黙した。


「甘い。敵対勢力に、丸腰で会うわけないだろう」


「イワン様・・・私は、アズサ様の同級生を殺してしまいましたわ」


「様付けはいい・・・アズサ殿に同族殺しをこれ以上させるワケにはいかない」


 アズサ殿は、戦いになると、苛烈だが、その他はどこか甘い。

 私が助けてあげなければ・・・

 だから、皆ついていくのだろうな。

 彼女に出世して頂いて、魔族の中の人族の地位を上げなければな。


 王城で、こいつら、アズサ殿の仲間になること拒否したそうだ。

 アズサ殿は涙を流したそうだな。


 全く、やるせない。


「せめて、魂だけでもかの地に行かれるように」


「イワン・・・殿。こいつら」


「ああ、そうか。全く、殺しておいて良かった。このような奴らは信用におけない。その金に触るな。そのまま埋葬しろ」


「「了解」」


 彼らのポケットには、1人銀貨100枚入っていた。


 アズサ殿が、扶持としてポケットマネーから渡したと聞いたぞ。

 アズサ殿が城を出たときは、役人に中抜きされ、銀貨2枚しか渡されなかったのに、恵まれている。

 あの口ぶり。アズサ殿に感謝する気持が微塵も感じられなかった。


 ・・・③の選択肢を選んだ半数は、城を出て、わずか3日後に、死亡した。



 ☆王城


「あれ、イワンさん。撃った?」

「少し、射撃訓練をさせてもらった」


 武器庫に弾を補給しにしったら、アズサ殿がおられたわ。


 ・・・何だ。目が怖い。


「・・・エミリアやゴーリキを巻き込んだらダメだよ」


「えっと」


「ヤクーツ領内で、謀略もあるだろうけども、2人は付き合っているみたいだからね。団員を使う場合。私に許可を受けてもらいたい」


「ああ、そうだな。その通りだ」

 ・・・エミリアとゴーリキと連絡を取っていることがバレていたか。

 しかし、何をさせていたかは把握していないとみた。


「そう言えば、勇者達が私の騎士団に入団したいと来た。まあ、お断りしたがな」


「そう・・・」


 アズサは寂しそうに返事をした。


(いつか、本当のことを話そう)

 と決意するイワンである。


最後までお読み頂き有難うございます。

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