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第21話

「斥候が帰って来ないだと!更に出せ!」


 前線の異常に、司令部は混乱を極めた。


「連絡するでござる!早馬と、魔道通信で連絡するでごわす!ホウレンソウは大事なり。ラノベでも・・」


「ええい。状況が分かってからだ!それまで、連絡は無しだ!魔導師、ヤマナを拘束せよ!」


「ハッ【緊縛!】」


 魔導師が詠唱すると、指輪が光りヤマナは動けなくなった。言葉を発せなくなる。


(悪手でござる!連絡を軽視する軍は滅びる傾向なり!)


 ・・・どうする。ここには3000人しかいない!


「人影多数!我が軍の旗と、鎧です!」


 土煙が消え。視界が良好になった頃合いに報告が来た。


「まだ、こんなに沢山生き残りがいるじゃないか・・・魔王軍も甚大な被害があるはずだ!」


 辺境伯デービットは自分に言い聞かせるように発言をするが、


 しかし、様子が違う。

 皆、青い顔をし、口を半開きでヨダレを流している。

 体が一部欠損している者もいる。


「「「「ウゴーーーーーー」」」」


「ヒィ、ゾンビ化している!」

「攻撃だ!魔導師は集まれ!」


 ☆☆☆魔王軍丘の上、本陣


 簡易トーチカの上では、皆が骸骨博士と呼んでいる死霊使いが、大鎌をふるって、空気をかき混ぜるように大鎌を操り。エミリアが操るドローンから送られてくる映像を見ながら、ゾンビ達を操っている。


「便利じゃのう。これでここにいながら、操れるのう。え~と、闇夜に救う。いや、巣くう・・・何じゃったのう~」


 ・・・骸骨博士さん。魔王様の魔法のご師匠だけあって、詠唱を忘れているけど、操れている。何故?


「アズサちゃんや。詠唱は、地図みたいなものじゃ。目的地が分かったら、地図はいらんじゃろ?」


 とアズサの疑問に答えるかのように、アリーシャが答える。


 やがて、敵本陣は、ゾンビの波に飲み込まれ、消えて行った。


「ゾンビの浄化をお願いします」


「命令しなきゃだめじゃのう、総司令官殿、ほれ」


「・・・骸骨博士さんとアリーシャさん。ゾンビの後始末と浄化を行うように!」


「了解じゃのう」

「勿論じゃ!」


 ・・・そうだった。私は精霊王国方面軍の総司令官になったのだった。気が重い。

 魔王様の言葉を思い出す。


『指揮の要訣!

 指揮下部隊を掌握し、明確な企図のもと

 適時適切に命令を与えて

 その行動を律し、もって任務達成に邁進させるにある。

 この際、指揮下部隊に対する統制を必要最小限にし、

 自主裁量の余地を与えることに留意しなければならない。

 指揮下部隊の掌握を確実にするため、

 良好な統御、確実な現況の把握及び実行の監督は、

 特に重要である』

『アズサ暗記しろ!』


『はい・・・指揮の要訣!・・・』


 総司令官に任命されたときにもらった言葉はこれだけだった。


 命令は単純なものほどいい。


 ブゼンさんには、

『会戦後、精霊王国の辺境伯領都を占領後、直ちに、先遣隊を王都に派遣せよ』

『了解しましたぞ!アズサ総司令官殿!』


 イワンさんには、

『辺境伯領と王都に行政官を派遣せよ。その他詳細は任す!』

『畏まりました。アズサ総司令官殿』


 鹵獲した魔道通信機をイワン隊、ブゼン隊に配備した。魔導師なら使える。

 しかし、私の対勇者戦闘団が王都を占領するまでは無線封鎖だ。


 さて、私の隊には、まず。大目標、王都占領を達成するための小目標を命令する。


「我が隊は、王都近郊の森にいる獣人族の部隊と合流する。それまでの戦闘は最小限!経路はダークエルフの協力の元、森を抜けて、精霊国の側面に出る。乗車!」


「「「乗車!」」」


 ・・・


 ダークエルフとの約束の地に着いた。

 木々が深い。とても、車両が通れないと感じる。

 本当に通れるのだろうか?

 お、あれは長老殿・・


「アズサ殿、よくこちらの要望に応えて頂いた。我等の部族も魔王軍に参加する。まだ、分村には、戦士や魔導師が残っていた。彼らが森に道を作り、警備もしますぞ!森の中は安心してお休み下さい」



 ・・・ワシは長老として、今回、勇者に本村を襲撃されたことで痛感した。魔王軍、人族の両勢力に挟まれている場合、小勢力であるワシらの中立は簡単に破られる。どっち付かずが一番質が悪い。

 魔王軍につくべきだとな。


「【木々の精霊よ。盟約により、道を開けられたし!】」


 長老が詠唱すると、木々の枝やツルが引き。車両一台分が通れる幅の道路が出現した。


「・・・すごいですね」

「光栄です。司令官殿」


 アズサ達、一行は、森の中を抜ける間は、連絡要員として、班長一名と操縦手以外は、リラックスするように命令をした。

 班長と操縦手は交代で休まさせる。


「ここを抜けると休息は無しと思え。今のうちに装具の点検と休息を取るように」

「「「了解!」」」


「・・・・その命令はアズサ戦闘団長もですよ!女性専用車両でお休み下さい!」

「ええー」


 エミリアに促されて一番後ろから二番目の車列の高機動車に乗せられた。

 車列は全部で6両、一番先頭は軽装甲機動車、ここに班長を含め4名が乗車

 次の4台で男衆が分乗して休み。

 5台目が、私とエミリアと、ミーシャちゃんと、エミリアの従姉妹で回復術士のロゼ。

 今回、エミリアには副官としての役目をになってもらうので、派遣してもらった。


 ミーシャちゃんは、付いて来たいと懇願した。

 最初は断ったが・・・


『イエネコ族は夜目が利きます!』


 との一言で見張り要員として来てもらうことにした。

 今、ミーシャちゃんは夜に備えて、お眠りして頂いている。

 何故なら、予定だと、夕方には、森に抜け。精霊王国の領土に着く。

 そこからは休み無しに王都まで突っ切る。

 夜間も車両行軍をするからだ。



 最後の一台は、魔法袋と、すぐに使えるように、一部、弾薬類や食料を載せている。


 現代軍は物資を多量に喰う化け物だ。物資があっても運ぶ手段がなければ、この世界では現代軍は少しもチートではない。出オチになる。

 しかし、この世界の魔法袋と組み合わせれば、多量の物資を随伴するチート軍隊に早変わりする。


 この高機動車は、ドワーフさんに頼んで、車体には圧縮鉄鋼を取り付けてもらい。フロントを防弾ガラスに代え、燃料タンク周りには、防弾ゴム。防火素材を取り付けてもらった。


『有難うございます。これで、ファイヤーボール一発で火の車になることはなくなりました』


『・・・・』

 しばしの沈黙の後に、


『『『ギャハハハハハハ!』』』

『アズサ殿は面白いな!火の車!』


 ・・・解せぬ。何が親父の心に刺さるか分からない。

 しかし、ドワーフさん。数が増えているな。まあ、戦時だからいいけど、


 ドワーフさんの同行は遠慮して頂いた。

 何故なら、


『戦場に連れて行って欲しいですか?作戦行動中はお酒飲めませんよ。それでいいなら』


『ドワーフ族は酔えば酔うほど強くなるんじゃ!』

『そんなことあるか!車両整備部隊だから強くなっても仕方ないですよ!』


 やっとのことでなだめて、城に残ってもらった。

 イワンさんの第2陣で来てくれるだろう。

 それまでは、タイヤ交換ぐらいは、私たちで訓練した。

 ドワーフさんの技量は上がってきている。

 戦後は民生品を作ってもらおう。



 ☆☆☆その日の夕方


「皆様!ここが森の出口です!」

「クゥ、クゥ!」


「サーラちゃん・・いや、年上だからサーラさんと地竜のクゥちゃんが森を抜けた地点に出迎えてくれたのね。うれしい」


「お久しぶりです。サーラさんとクゥちゃん。可愛いですね」

「クゥ、クゥ」


 ・・・あら、可愛い。飛龍系のドラゴンさんのお背中に乗ってから、ドラゴンに好かれるようになったわね。

 もっと、再会を堪能したいけども、これからは時間が勝負だ。


「全員、これから、敵地に入る。食事、今のうちに用便を済ませるように。ここは神聖の森、きちんと穴を掘り、テントを立て・・・」


 ・・・去年まで女子高生だったのに、今は部下の用便の心配をしている自分がいる。

 考えられない。

 私もすまさなければ・・・


 ・・・


「行軍中は、ヘッドライトの点灯を禁止する。ウィンカーの使用と異常時はハザートで対処する。操縦手は、暗視眼鏡を装着し、目視で操縦せよ。時速40キロを基準とする。

 各自のライトは赤色灯のみ許可をする。

 軽装甲機動車の銃座には、ミーシャちゃん。見張り要員!」


「ミーシャ、見張り要員頑張ります!」


 ・・・赤色のライトは遠くから見られにくい利点がある。夜間戦闘中に唯一点灯して良いライトだ。


「休憩は四時間に一回を基準とする。その間に、操縦手の交代、車長の交代をせよ。必要に応じ給油」


「質問!」


 その時、今回、初顔であるロザが手を挙げて控えめに質問をした。


「あの、私は何をすればいいですか?騎士団の演習に参加したことが一回しかありませんわ。その~」


「ロゼ回復術士は休息しつつ、怪我人が出たら対処をせよ」

「え、でも」

「回復術士が大忙しの場合とは我隊に怪我人が続出したときのみです。我々のために、今は休んで下さい」


「そうだと、回復術士が疲れていたら、オラ、不安だぞ」

「そうだ。心細かったら、エミリア殿の側にいるが良い」

「フフフ、休めと言われたら休むのが任務よ」


「はい!」


 ・・・私はこの隊の雰囲気が大好きだ。

 皆が皆を気遣う。


「アズサ様の部隊に、精霊様のご加護がありますように・・・」

「クゥ、クゥ」


「「「有難う」」」

「貴方たちの帰路の安全を願います」



 ☆☆☆王都近郊の森、早朝


「来たぞ!あれが、深緑の魔女殿の部隊ですか?ガオスの旦那!」

「ああ、ヤクーツに交易に行ったときに見た。あの馬無し車で間違いない!」


 予め、交易のネットワークで連絡を受けていた獣人族は、王都スラムを抜け出し、この地に集まっていた。


 獣人族は人族よりも、力が強いが、魔法が使えず。数も多くない。

 この地の獣人族が、人族に支配されてからの初めての大規模な反抗である。王都での仕事を放棄して、この地に集まっていた。


「よお、アズサ殿・・・いや、アズサ様、到着お疲れ様!」


「ガオスさん・・お久しぶりです」

「一日休んでから攻める?それとも、今日?」


「フフフ、今からよ」


「へッ?マジ?」

「マジよ!」


 さすがにあっけに取られる獣人族の顔役、狼獣人のガオスの後ろから、声がもれ聞こえてくる。


「大王様・・・」

「ああ、大王様が来て下さった!」

「今日、解放されるぞ!」


 やがて、獣人族の間でささやきが伝播し、歓声が上がろうとする予感がした。

 その時、


【黙れ!】


 ガオスは一喝した。


「この方は魔王軍所属だ。勝手に主にして、負担を掛けるなよ!」


 ・・・何故、私を大王と呼ぶの?

 アズサは一抹の不安を感じた。




最後までお読みいただき有難うございました。

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