第1話
☆☆☆一年前、カス王朝精霊王国王宮
「まあ、ご覧になって、あの黒髪、カラスのようですわ」
「見て、スカートを、膝までしかない。まるで娼婦のようね」
「男はサル獣人かしらね」
「皆様、いけませんわ。魔王軍と戦ってくれる大事な道具ですわ。物は大事に扱うと長持ちするとお祖父様が仰っていたわ」
今、妾達は、召喚の間の隣の控え室で、のぞき穴から、おのおの、召喚獣を観察している。
「ゴホン!」
とメイドたちに、妾は咳払いをして黙らせる。
我国の高位貴族出身の令嬢たちよ。
もし、蛮人たちに聞かれて、へそを曲げられたら、現時点では打つ手はない。
団結されたら、騎士の方がやられるわ。
蛮人の世界は、魔法のない世界、しかし、異界渡りをするときに、強力なジョブとスキルを得る。これが馬鹿にならない。
さて、観察を続けるか。
(文献だと、黒髪、黒目とあるが、茶髪が混じっているわ。でも、誤差の範囲だろう)
この異世界召喚の禁法、民が危機に陥った時のみ使うべしと伝承にある。古くさい。妾と有志は、大規模召喚を実施し、そして、成功させた。
異世界からの獣、大漁じゃ、28体の召喚獣の捕獲に成功した。
調教して、使役獣として戦争に使う。
奴らの周りには、神官と騎士達に囲ませている。
光で目がくらみボウッとしておるわ。
こやつらを使い魔族領から、財宝、奴隷、領土を分捕り、この精霊国、第一王女、ブリトニー・カスがこの精霊国を豊かにしてみせるわ。
父王の代で、魔族領に侵攻したが、大敗し、属国を失ってしまった。
王家の求心力が落ち。父王も政に関心を失った。
妾がこの国を立て直す!
「さあ、皆様、いきますわ。くれぐれも、勇者様とお呼び下さい」
「「「畏まりましたわ」」」
☆☆☆生徒視点
「何だ。ここは・・・」
「召喚された系?」
「うわー、お姫様だ!」
「金髪に、アイスブルーの目、お人形さんみたい」
「本物のメイドさんだ!」
「うむ、皆の衆、ラノベ初段の我に聞くべし」
「山名、お前が頼りだ!」
・・・ザワザワザワうるさいのう。
使役獣の調教
調教1
まずは、沈黙
妾は膝を付き。周りのメイド、神官、騎士は不動の姿勢を取らせる。
静かになるまで、言葉を発さない。
何を話すか期待を持たすためじゃ。
静かになったのう。
調教2
次は、ゆっくりと、しかし、大きな声で同じフレーズを繰り返し言う。
「グスン、勇者様たち、どうか、私の民を救って下さい!」
「魔王軍に攻められて我国は危機に瀕しています。どうか、民を救って下さい!」
「民を救って下さい!グスン、グスン」
「魔王は世界征服を企んでいます。我が民を救って下さい」
・・・亡くなったペットのことを考える。獣人族の猫だったのう。妾が躾をしたら死んでしまった。やり過ぎたわ。
次、飼うときは優しくするぞよ。
ここで、誰かが、代表して聞きに来るハズだわ。
「あの、お姫様、事情を説明して下さい・・」
「グスン、グスン、貴方様は?」
「クラス委員長の佐伯幸子です。私たちは授業を受けていました。突然、光に包まれて、気が付いたらここにいました」
ほお、召喚獣の成体は、ボッとしている。水晶の目をもっておるな。あれはメガネと言ったかのう。
「さえき」とかいう奴が実質的な長とみて間違いないか。
妾は、隣国が魔王軍に占領され、魔王軍がもうすぐここに迫ってくることと、隣国の人族の開放を訴える。
嘘は言っていない。
「おお、俺たちは勇者だ!」
「スゲー、民を救おうぜ!」
調教3
気を落すことを言う。
「しかし、魔王軍との戦いは大変、厳しいですわ。厳しい試練を受けてもらいます。勇者様方に、死んで欲しくない妾たちの真心と受け取って頂きたいですわ」
「「「シーーーーーン」」」
・・・おお、静かになったのう。
調教4
そして、今度は・・持ち上げる。希望と褒美の話をする。
「魔王城には、貴方たちの世界に帰れる転移の門がございます。民から奪った財宝が沢山ございます。魔王を討ち取ったら、その財宝は差し上げます。異世界に帰るのも。我国の貴族になって頂くのも自由ですわ。貴方様たちは勇気のある勇者です。選ばれた戦士、人族の希望の星ですわ!」
「貴族か・・・」
「日本に帰れるの?」
「さあ、皆様、これから、鑑定を受けてもらいます。そこでジョブとスキルを鑑定し、序列を付けさせてもらいますわ。戦いは厳しいものです。序列に従って、チーム分けと、戦う敵を選ばせてもらいます」
一連の流れは、矢継ぎ早に行い。やつらだけで話す機会を与えない。
「さあ、勇者様がた、こちらの部屋においで下さい。私は神官のドメルと言います。よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
・・・
別室で、神官達が鑑定しておる。結果は分かり次第、妾に木札が届く仕組みじゃ。
・・・ほお、中々、大漁じゃのう。
茶色の頭が勇者で、いいんちょうが聖女、賢者は・・「せんせい」か。剣聖もおるの。
戦闘職種、戦闘支援職が合計15名、後は、後方支援職じゃな。
さて、これから、誓約魔法を掛けて、指輪を付けるか、我国のために働く、その代り衣食住の面倒を見てやる。
野蛮人の世界から見れば、この城は天国のハズじゃ。
「さあ、皆様、これから、契約をしますわ。皆様、ドメル殿の・・・」
「あの~契約の前に、質問があります!」
一人の女生徒が手を挙げて、王女殿下の言葉を遮った。
「誰じゃ」
・・・誓約魔法を掛けるまで、我慢じゃ。かければ、罰として激痛を与えることが出来る。
そしたら、礼儀を教えてやろう。
「はい、序列28位の佐々木梓です」
「まあ、良い。しかし、ここでの生活のことなら後で説明する」
「いえ、戦わないで、日本に帰りたいです」
「説明したであろう。魔王城に転移の門があるのじゃ」
「魔王城に、日本に帰れる転移の門があるとしたら、世界征服を企むほど好戦的な魔王のことです。日本に現われますよね。私には、日本に魔族や魔物が現われたとのニュースを聞いた記憶がありません。本当に転移の門はあるのですか?」
・・・何じゃと面倒くさい奴じゃのう。序列28位のくせに。
最後までお読み頂き有難うございました。