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第16話

「良いですか?この72式対地竜地雷、名前は対地竜ですが、実は魔族の方が乗っても危ないのです」


 地雷から300メートル離れ、丸太を地雷の上に傘型に立て、ヒモをつけた石を吊す。大体、〇〇キログラムだ。

 ひもを切ると、石が地雷の上に落ちる仕掛け。


 実は、世界各国の対戦車地雷の起爆荷重は、想像したよりも軽い。

 人が乗っても、条件次第では、起爆する。

 対地竜と名付けたのは、この世界では、戦車は馴染がないので、地竜にしたのだ。


「はい、皆さん、物陰から見て下さい。123でひもを切ります」


 何だ。何だ。ザワザワザワと魔族、オーガ、コブリン族の喧噪が続くが、


「1・2・3・・・今!」


 パーーーーーーーン!


 キノコ雲が高く上がり、土や草がパラパラと降ってくと、彼らは危険な爆裂魔法と認識したようだ。


「あんな爆裂魔法みたことねえぞ」

「あれの上に乗っては危険ってことか?」

「バクレツマホウ・・・」


 ・・・今、私たち、対勇者戦闘団の本部班は私を中心にして、魔王軍との共同戦線を組むために、魔族に、現代兵器の怖さを教えている。


 対勇者戦闘団との対抗部隊として、魔族の方々に相手をしてもらったが、いかんせん、魔族の方々は、火薬の恐ろしさを知らない。

 だから、演習で空砲すら使えなかった。


 実は空砲も危険だ。薬莢の鉄クズ、火薬の組織物が、細い針のように飛び出し、失明や、火傷をする恐れがある。空き缶に、近距離で、空砲を撃つと凹む威力だ。

 私が日本にいたときも火薬の怖さを知らなかった。


 演習中、平気で、銃口を覗くコブリンさんたちに、空砲は使えないと、魔王様が、銃の空撃ちを命じた経緯がある。


 さて、次は、銃と、指向性散弾。この前に出てはいけないと教えなければ・・・




 ☆☆☆回想


 私は、中村君のパーティとの戦いで負傷した後、3日間寝ていた。


 その間、私は夢を見た。


 対勇者戦闘団を結成する前の魔王様との会話だ。


『アズサ、同級生と戦えるか?』

『はい、まず、投降を呼びかけます』

『ああ、それも良いが、最初に銃をぶっ放せ。こちらの優位性を見せつけるのだ。それから、話合いだ。この世界、いや、地球の常識でもあるぞ』

『・・はい』


 魔王様は普段、優しいけど、やっぱり、魔王だ。


 ・・・ムニャ、ムニャ、あ、明るい・・私は寝ていたのだ。


「お、起きた!」

「おお、大丈夫そうだ」

「戦闘団長殿・・・グスン、グスン」


「アズサ!最初に、ぶっ放せと言っただろう!」


「・・・すみません」


「魔王様、大声を出さないと約束したでしょう。嫌いになりますよ!」

「いや、あの、それで、あの、俺、魔王だけど」


 ・・・フフフ、サキュバスの皆さんが、魔王様の前に立ち塞がっている。

 そうか、ここは、ヤクーツ城・・・


 周りには、魔王様、ブゼンさん。骸骨博士、アリーシャさん。対勇者戦闘団の班長、エミリア・・・ヨドムさん・・・ミーシャちゃんがいない。後で顔を見よう。しばらく、この城で居残り、ほったらかしにしていた。


「まあ、まあ、元気そうで良かったのう。アメちゃん食べるかのう?ペロペロキャンディがええかのう」

「アリーシャさん・・アメは、魔王様の前なので、後で頂きます」

「ほほ、ええ子じゃのう」


 銀髪のダークエルフのアリーシャさんは、この神のような美貌で、エルフ種的には、お年寄りらしい。

 全く、羨ましいものだ。


 皆が、集まっていたので、私は、常日頃思っていたことを話した。

「魔王様、皆さん、精霊王国、王都を陥落させるだけなら、実は、簡単なのではないですか?」


「何故、そう思う?」


「まず、魔王軍には骸骨博士さんとアリーシャさんがいます。戦場で倒した王国軍の兵士を死霊化し戦わせ。終わったら、アリーシャさんが浄化をする。それだけでも勝てます。・・・それに、対勇者戦闘団の火力と機動力を合わせれば」


「それで、対勇者戦闘団は、どう使う?」


「魔王様、まず、魔王軍と共同で、精霊王国の辺境伯軍を倒します。そのまま、速度を生かして、先行して、王都まで、突っ切り、王城を占拠します」


「なるほど、作戦は単純なほど良いが、不確定要素もある・・勇者だ」


 ・・・私は、捕虜の坂口君と榊原さんの尋問の様子をエミリアに聞いた。


「サカキハラはともかく、サカグチは不快です・・まだ、合わない方がいいかと、ミーシャさんとお母様が、かなり怒って・・・・」


 ・・・まあ、後で会おう。


「鹵獲品で目に付いたものは?」


「はい、私たちが使っている無線機と似たようなものを所持していました。魔石で起動するタイプです」


「・・・それ、見せて」


 ・・・私は、魔道通信機、山名君が作ったものを見て、決断をした。



「それで、まず、ヨドムさんにお願いがあります。精霊王国の王都で、情報操作をしませんか?対価は・・お金儲けできますよ」


「グシシシ、ブックメーカーですね」



 ☆自由都市ラクーア


 魔族領と女神信仰圏の南、等距離にある自治都市である。

 中央商業ギルドの債券売り場では、商人達が、自慢の商品の口上を述べていた。


「さあ、さあ、精霊王国のダークエルフ債だ。こちらはサキュバス債、地竜債もあるよ。これを買ったら、優先的に奴隷、地竜を買えるよ。頭金になるワケさ」


 その中に、ブックメーカーの出店もある。


「さあ、こっちは精霊王国軍と、魔王軍のオッズ。今、10対1で精霊王国が有利。精霊王国には勇者30人いるって、精霊王国の社交界からの情報だ・・・お、皆、精霊王国か、誰か魔王軍に賭ける人いない?もしかして・・あるかもよ」


 一人のローブをまとった男が手を挙げる。精霊王国の裏組織のドン、ヨドムである。


「女神圏の通貨1億ゴールドと、精霊王国、暴落前のドワーフ作成の良貨で、10億セレスを、魔王軍に賭けます」

「・・・・え、逆張りにもほどが・・魔族領の後背に、女神信仰圏がいますよ・・いや、有難うございます。お名前は?」


「グヒヒヒヒ、ヨドムです。後、もう一人は、匿名でいいですか?」

「もちろんだ!」


 ・・・グヒヒヒヒ、商人の口に戸は立てられませんね。

 これで大もうけ出来ます・・魔女殿の用事も済みました。

 が、情報操作の様子はどうでしょうかね・・


 更に、

 急報がもたらされた。


「魔王軍の幹部、深緑の魔女、英雄グループに討ち取られた!」

「何?あの冒険者を殺しまくっていた奴か、じゃあ」

「ああ、魔王は女神圏方面だ!」

「「「精霊王国軍勝利の方に賭ける!」」」

「魔族領の奴隷、魔石、地竜が入ってくるぞ!」


 ニワカに活気づいた。


 最終的には、オッズ100対1にまでに離れることになる。


「まあ、確実にもらえるなら、100の内、手数料払って0.8でも良い利回りよ。しかも、すぐに手に入る」

「だな」



 ☆魔族領旧ヤクーツ王国


 英雄の中村パーティは健在していることになっていた。


 それは、アズサが鹵獲した魔道通信機で・・・


「あ、あ、私、私、ユウコ・サカキハラ、魔女を討ち取りました。魔族領の奥、魔都に向かいましょうか?ええ?ダークエルフ領で先生、勇者グループと合流しろと?分かりました。中村君に伝えます。皆は・・元気ですよ。声?ああ、たき火で喉がかれまして・・」


 回復術士、榊原になりすましていた。


 ・・・私たちが無線を使うときは、合い言葉を言い合う。

 しかし、精霊王国にはない。まだ、自分たちだけが使っているとの奢りがある。

 山名が作った魔道通信機は、コスト面で問題があり、まだ、勇者グループだけにしか配備されていない。

 連絡はパーティ毎。

 クラスメイト同士連絡させないためにか?


 この作戦は上手くいくかどうかは分からない。いや、混乱すれば良い。


 ダークエルフ領に、本命のグループがいる。

 それを倒して、一気に、王都まで攻めまくれば勝てる・・

 問題は、どう勝つかだ。


 アズサ自身も気が付かないが、戦争の基本、勝ってから戦うを、実践していた。対精霊王国戦線は、アズサを中心に回ることになる。


 一方、魔王は、安心して、女神信仰圏戦線に向かった。



最後までお読み頂き有難うございました。

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