表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/41

第15話

 本当は、連射をしたい。弾をバラ撒きたいが、弾も限りがある。


 だから、「単連射」をする。



 単連射とは、文字通り切替え軸部を単発の「タ」にして、連射すること。

 引き金には「遊び」がある。

 あらかじめ遊びを殺し。

 更に、撃鉄が落ちるギリギリのとろこまで、引き金を引いておく。

 すると、ブレが少なくなり、早く数撃ちが出来るのだ。


 おお、あいつが、リーダーかな。


 パン!


「魔女がいたぞ。囲め!ウワ!」



 撃ったら、引き金をゆっくり戻して、また、ギリギリのところで、引き金を止める。


 ・・・まず。一番大きな声で指示を出す者に1発撃った。


 そして、ローブをまとったいかにもという人にも


 パン!


 ・・・これで2発


「へ、へ、へ?何あれ」


 弓手はいない。お、手ヤリを投げるのね。

 と、けん制して、仲間が突っ込んでくるのね。


「エミリア、手ヤリ、注意」

「了解」



 パン!パン!パン!パン!


 ・・・これで6発


 ヒュン~


 振りかぶって投げる投擲兵器は、よけられるようになった。


 これで最後かな?


 パン!


「ギャアア」


 ・・・これで7発


 残弾13発・・


「ウグ、グ」

「ヒィ、いてえよ」


「残心が大事」


 と、息のある者にとどめを刺す。


 パン!パン!


 ・・・残弾11発。


 あ、後方の林から、銃声を聞いた冒険者の仲間が出てきた。救出に来たのかな?

 この距離なら・・・


「な、何だ。先遣パーティが、1分前には生きていたぞ、皆、やられたのかよ?」


「エミリア、交代、私が後方左右を見るから、89式の三連射で射撃せよ」

「了解」


 パン!パン!パン! 

 パン!パン!パン!

 パン!パン!パン!


「エミリア、弾倉交換の時は、私が援護する」

「了解!」


 パン!パン!


 ・・・あれほど、怖かった冒険者の集団が、今は、冷静に対処出来る。

 彼らは、経験はあるが、それだけだ。


 フィードバックをする場を設けていないのだろう。

 仕事が終わったら、酒を飲んで騒いで終わり。


 経験がなければ何も出来ない。しかし、経験だけなら袋小路に陥る。

 ワンパターンになるのだ。


 わずか、数分の間に、冒険者、三十余名の屍が量産された。


 ・・・現在、旧ヤクーツ王国より東、精霊王国の北方の魔族領にいる。

 ここで、私たちは、バグ取りをしていた。


 最近、冒険者達が、素材取りと称して、魔族を狩りに来ているのだ。


 この先には、サキュバス族のお姉様方が住んでいる村がある。


「「「キャーーー、アズサちゃんとエミリアちゃん可愛いーーー」」」


「あ、抱きつかないで下さい。お胸が、ウワ」

「ヒィ」


 お姉様方は、サキュバス族、頭にコウモリの羽のような翼や羊の角が生えている種族。

 ムフフな種族と思われがちだが、これで身が堅い、一度、伴侶と決めた男性には一途に一生、恋をするそうだ。

 生まれた子は、女の子はサキュバスになる。男は、伴侶の方の種族、一体、どうなっているのかわからん。


「ヒィ」


 あ、エミリアが硬直している。


 女性だけの集落なので、私と、エミリアが様子を見に来た。


「避難しましょう。もっと、奥に、でないと守り切れません。高機動車を出しますから」

「「「やったー、魔道馬車に乗れるの!」」」


 サキュバスさんは、いつも前向きだ。


 あ、無線が入った!


 ガガガーーーー


「戦闘団長、セトル班!コブリン隊より報告有り、マルユ、発見!」

「7,セトル班長、符号忘れているよ。了解!」

「4,失礼しました!」


「マルユ、勇者!」


 魔王軍、魔王様を除いて、精霊王国方面軍で、勇者に対応できるのは、

 ブゼンさんと、骸骨博士とアリーシャさんと・・私たち、対勇者戦闘団だ。

 梅田君が、魔王様に討ち取られたから、現在、合計26名の勇者がいる。

 厳しい戦いになる。




 ☆☆☆勇者視点


「ウワ!また、イタい!」

「また、坂口、落とし穴にはまって・・足の甲までヤリが突き抜けている。ヤリにウンコが塗ってある。汚い!・・・榊原さん。頼むよ」


「・・・はい」

 ・・・またなの。もう、魔力が枯渇するよ。3回目だよ。



「中村君、荷物持ちの僕を前衛に出すのは無茶だよ!」

「ああ、ジョブ村人のお前に出来るのは、それだけだ!」


 シーーーーン


 ・・・俺は順位3位の中村、ジョブは英雄だ。今回の野外実習で、レベル68になった。

 しかし、最近、急に、魔族や、コブリンドどもがいなくなった。

 それにワナを仕掛けるとは・・・知恵が付いたな。


 俺は、剣聖や、委員会パーティとは違う。

 このように、前方に人を出して、常に警戒をしている。


「何だ、あれ!」

「日本語の看板がある。何々、『ここで止まれ。話会いたい』だってさ。どうする」


 ガサ!


「草むらから、人が出てきたぞ!警戒だ」

「緑のマントよ。あれは、冒険者を殺し回っている魔女だよ」

「自衛隊のヘルメットを被っている?コスプレかよ」

「・・・あれ、あれは」


「「「佐々木!」」」


「皆、ここで、待てよ、佐々木、お前、武器を置いて、こっちに来いよ!何か変な魔道具もっているだろう?」


「無理、私たち敵だよ。この50メートルの距離を崩さない。魔王軍に投降しない?」


 ・・・と、私は呼びかける。

 銃はポンチョの中に隠してある。

 戦闘団の皆の反対を押し切って、

 わずかな望みに期待した。

 しかし、彼らの答えは、問答無用だった。


「バブ2倍!魔導師絵美、殺れ!」

「中村君、いたい!1.2倍に下げて」

「うるさい!早くすれば問題無いぞ」


「ええい。アイスソードよ。具現化し、敵を討て!」


 魔導師絵美の頭上に、複数のアイスソードが現われ滞空し、アズサに向かって飛び立つ。

 しかし、決して早くない。


「~からの~散弾!」


 バリ!バリ!


 次の一声で、アイスソードが砕け。散弾のようにアズサの方に向かって飛び散る。


 ほぼ、同時に、アズサは倒れた


 ドサ!

 アズサは、まるで、糸が切れたマリオネットのように、地面にうつ伏せに倒れた状態だ。


「やった!やった!裏切り者を殺せたよ!私が殺した!」

「俺のハブのおかげだ!倒れたぞ!坂口、早く見て来いよ」


「わかった。中村君・・」


 次の瞬間、銃声が響く。


 パン!パン!パン!


 一発は坂口の足、もう2発は、中村と絵美の胸を貫き。二人は、一瞬、信じられないような顔をして、倒れた。


「いてえよ-」

「ヒィ」


 ・・・こちらは、伏せからの~伏せ撃ち・・これで、もう、投降の呼びかけは出来ない。してはいけなくなった。問答無用で、勇者を狩らなければならなくなったわね。


 アズサは、倒れたのではない。自ら、防御姿勢の伏せの体制を取り、そのまま伏せ撃ちに移行したのだ。


 草むらで、控えるように命令を受けていた戦闘団員達が姿を現す。


 ガサガサ!

「「「戦闘団長殿!」」」


「男は坂口、農民、女は榊原、回復系の能力、拘束して」


「「「了解!」」」


「ヒィ、自衛隊なの?佐々木さん。自衛隊に入ったの?」

「戦闘団長の身上を敵であるお前に、説明する義務はない。こっちに来い」


「ヒィ、いてて、治療してくれ!」

「後だ!拘束が先だ!」


 彼らは100円均一で販売しているような拘束バンドで、二人の手首を極めた。

 始めての勇者との対戦で、撃破、戦果は、捕虜を2名得たことになる。


「戦闘団長殿、もう、無茶は許しませんよ!防刃チョッキ見せて下さい!ゴーグルは?被弾してますね!」


「エミリア、ごめん。もう、警告はしないわ」


「あ、防刃チョッキから、血が・・・」


 ・・・しまった。防刃チョッキでは足りなかった。貴重な戦訓だ。

 皆の装備を、防弾チョッキに替えなければ・・・


 アズサの腹に、氷の破片が一枚、突き刺さっていた。

 間一髪、間に合わなかったのだ。


 ・・・ああ、もっと、伏せを練習しなければならないわ。


「「「戦闘団長殿」」」


 ・・・あれ、視界が・・暗くなった・・・


 アズサは、この後、3日間、意識がなくなることになる。





最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ