第14話
「いいか?弾倉を外しても、最低一発は、銃の本体、薬室に残っていることになる。
これから、導かれる答えは
2つだ。
1つ、常に、残弾を頭の中にたたき込み。19発撃ったら、弾倉交換せよ。最低一発は余裕を持たせろ。
2つ、弾倉を装着していない銃でも、必ず弾抜け点検を実施しろ
質問のある者は挙手!」
「はい、戦闘団長殿、連射の場合どうすればいいですか?」
「3連射の時は数えろ。連射の時は、弾をバラ撒く状況なので、数える必要はない」
「了解しました!」
・・・
「ふう」
あれから、2ヶ月が過ぎた。私は17歳になってしまった。
現在、第2陣を教育している。
ゴーリキさんとその友人、数人の騎士と平民、合計30名
貴族の希望者はいた。
面接に2人で来たと思ったら、
「あの、そちらの方も希望者ですか?」
「ドラゴンスレイヤー殿、私の従者です。雑務をやってもらいます」
「はい、不採用」
・・・イワンさん。何故、この国が、魔王軍に占領されたか分かった気がするよ。
私は、ドラゴンの遺産を受け継いだ。
魔法袋の中に、白金貨、城の取引に使われるものや。ダイヤの原石などが入っていた。
「グルグルグルグル~」(君にあげたものだよ。自由に使って)
とドラゴンさんは言ってくれた。
私は、これで、軽装甲機動車1台、73式装甲車を2台、高機動車を4台、ジープを1台、89式自動小銃、無反動砲、迫撃砲、指向性散弾、破壊筒、個人携帯対戦車弾・・
古い装備と新しい装備が混在している。
この世界、道路事情が悪い。
だから装甲車は古いキャタピラの73式装甲車にした。
魔法袋に納め、フィールドによって使う車両を選別する。
ドラゴンさんの遺産で、もっと、沢山、装備を揃えることが出来るが、
人はそうはいかない。
銃を配るのだ。信頼できる人物でなければいけない。
遺産がなくなっても軍の維持が出来なければ意味がない。
ここは中世並の経済力、現代軍一個小隊を養うのがやっと。この世界の軍隊をつなげて、自己完結能力のある戦闘団を作って、運用するしかない。
私の同期は、教育の助教の傍ら、イワンさんに自動車の教習をしてもらった。
お礼は、私のポケットマネーから、スコップとクワをそれぞれ100本贈った。
「・・・皆、同じ大きさ、規格ですね。これは、よほどの腕の職人さんが作ったものですか?」
とイワンさんは目を丸くした。
これなら、この世界の技術でも修理して使えるだろう。
しかし、車はそうはいかないが、この世界、ドワーフ族がいる。
「アズサ殿!これ、これ、もっと見せてくれ!」
ドワーフ族、数十名が、貨幣の改悪を命じられて拒否し、精霊王国から逃げて来た。
ここに来た時、ドワーフ族の皆様が、車をジィッと見ている。
私は、ボンネットを開けて、エンジンをかける。
エンジンの動きを数人のドワーフのおじさんたちが、ジィッと見つめている。
そう言えば、日本でも、村鍛冶の息子さんが、粉ヒキ小屋のエンジンを1日中眺めて、自力で原理を会得して、車メーカーを作った人いたな。
熱心にボンネットの中を覗いているドワーフさんたちは可愛い。
と思っていたが、
ドワーフ族は油断ならない。1日車を見ていたと思ったら、奴ら、車を分解する工具を作ろうとする。
「あの、車を分解しようとしてますね。それ、どうみてもスパナ作ってるよね!バッテリーがあるから危険ですよ!」
「いや、しかし、謎を解明しなければ、死んじまう。なら、始めから見せないでくれ!」
・・・あ~面倒くさい。
「どうせ、やるなら、この壊れた軽トラあげますから、工具も召喚します。図解本も召喚しますから、そっちでやって下さいよ」
「「「ヨッシャーーーー!!」」」
以後、ドワーフさんたちは、戦闘団本部の車両整備係を請け負ってくれるようになった。
☆☆☆
「戦闘団長殿・・・来客ですわ・・そのオーガ族の方ですわ。武器を沢山持っているようですわ。大狼を連れて、こちらも護衛を・・つけた方がいいと思いますわ」
「エミリア、いや、いいよ」
・・・と思いつつも、決闘を申し込まれたときの為に、9ミリ拳銃を仕込んで行く。
誰だ!と思ったら、嫌な奴ムサビ君だった。
「ヒィ、ドラゴンスレイヤー殿にこの刀を献上します。父上から頂いた大事な刀です。これは母上から頂いた短刀、この戦斧は、村の後輩達が贈ってくれたもの。他には・・・これで、今までの無礼を許して下さい!グスン、グスン」
「いらん、そんな気持ちの重いもの。いらんわ!重すぎるわ!」
「ヒィ」
ムサビ君が泣きながら、武器を私に差し出した。断ったら、逃げて行った。何がしたいのよ。
あら、大狼ちゃんが、後を追いかけて、首根っこをくわえて、引きずって連れてきた。
「ワオン~」
「・・・分かりました。気持は受け取ります。勿論、貴方に免じてね」
「ワオン!」
ガオスさんを思い出す。
元々、ムサビ君は相手にしていない。人族は組織力、オーガは個人の武勇。
同じ土俵にない。
むしろ。群で生活をする大狼ちゃんの方がわかり合える気がする。
「ムサビ君、この子のお名前は?」
「ガオンです・・・この子だけは、渡せません。お許し下さい」
「お迎えしたいけど、いらんわ!大事にしなさい!」
「ヒィ」
・・・狼系は皆、ガオガオなのか?
まあ、獣人系はあまり名に執着しない。
「フフフ、ガオン君、よろしくね」
「ワオン!」
☆☆☆
ガオンちゃんで、ガオスさんを思い出したら、その日のうちに、やって来た。
「戦闘団長殿、来客ですわ。獣人族と人族ですわ」
「え、また来客」
行ってみると、
「アズサ様~」
「ミーシャちゃん!」
「ひどいです。お礼を言いたかったのに、黙って出て行くなんて、グスン、グスン」
ミーシャちゃんに
ポカポカと胸を叩かれる。
おお、ええのう。
ミーシャちゃん一家はキャラバン隊に連れてきてもらったそうだ。
もう、王都では仕事がないそうだ。
「よ。アズサ、じゃなくて、もうアズサ殿だな」
「あ、ガオスさん・・と、」
ガオスさんの隣に、ヨドムさんがいる。
「グシシシシシ、お久しぶりですね」
「ヒヒヒヒヒ、是非、貴方にこれをもらって欲しくて来ました」
「地図!」
精霊王国の地図だ。この世界では地図は国家機密だ。何故、これを?この世界の地図にしては、情報量が多い。
「お高いのでしょう?」
「無料でいいですよ。投資ですよ」
「いりません!」
「!!!」
「おい、アズサ殿」
・・・ヨドムさんは精霊王国の住民だ。いくら、この世界、国家意識が薄いとは言え。
怪しすぎる。
「さすがですね。そうでなければ・・・ただ、ジョブやスキルだよりの城の勇者とは違いますね。グシシシシシ」
「意味深なのは嫌いだよ」
「私ら、裏組織の人間は、正義があるから、成り立つのですよ。隙間産業です。しかし、今、王宮自体が、裏組織化しましてね。私らの出番がなくなりつつあるのです」
・・・そんな一般論では納得しないよ。
あんたは、一般論を押しつける活動家か?
具体性がない。
「もしかして、貴方は、カス王家の対抗勢力ですか?」
「・・・・・」
黙った。肯定だよ。
・・・その後、精霊王国の事情を聞く。
「もう、交易は終わりだよ。やつら、対価にこんなものを差し出して来たよ」
ガオスさんが紙を差し出す。
お札?
「うわ。何か、ルネッサンス前の下手な絵画のような。この顔はブリトニー?ブリトニー一万セレス紙幣?」
「おお、そうよ。こんな紙を無理矢理受け取らせたよ」
「ルネッサンス?」
「それで、精霊王国の王都は・・・持ち直した?」
「グシシシシシ、ええ、王都は持ち直しましたよ」
・・・なるほど、物資を地方から無理矢理集めている。
これは王都さえ落せばそれでいい。
後は、地方政権が出来ても、各個撃破が出来る。
「貴方の主が誰かは詮索しません。私は魔王様の部下です。貴方の主を、魔王軍攻略後の精霊王国の代表にするとは断言できません。そもそも、精霊王国の民は、魔族の支配を嫌がるのでは?」
「グシシシ、ええ、魔族の魔王ならネ。もし、人族の貴女が・・・魔王になったら?」
「・・・今の話は聞かなかったことにします。魔王軍にも反逆罪はありますよ」
結局、地図は、ヨドムさんが、応接室に忘れていったことになった。
書き写せと言うことだろう。
また、しばらくしたら、取りに来る。
しかし、甘い。
私は発電機を起動し、コピーをした。
ミーシャちゃんは、私のポケットマネーで、メイドとしてお迎えして、お母さんは、戦闘団のお針子係。
記章付けや、戦闘服のお直しの仕事を受注してくれることになった。
「まあ、すごい・・有難く頂きます」
お母さんに刺繍、裁縫セットを贈った。
今回は、気まぐれ精霊からではない。アズサからの贈り物として、受け取ってくれた。
私はもう余所者ではない。
ミーシャちゃんの朋友?扱いかな。
「・・・秘書は私ですわ!勝手に人を雇わないで下さい!」
エミリアが、しばらく、とげとげしくなったのは誤算だった。
最後までお読み頂き有難うございました。