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第13話

「人族のドラゴンスレイヤー部隊だ・・・」

「スゲーよ。あれ、何やっている・・いや、意味がある重要な訓練だ」


「人族の希望・・・俺も入れば良かった」

「あの女傑、我が息子と婚約出来ないものか?」


 ザワザワザワ


 ドラゴンを倒して以来、

 訓練を見学に来る魔族や人族が多くなった。

 人族のからかいや嘲りの声はピタッと無くなった。

 私は、占領軍が一目置く人族との位置づけみたいだ。


 魔族の見る目も変わった。

 それまでは、魔王様の気まぐれ部隊。

 人族はいつ裏切るかわからない

 全くの無駄だとの声もチラホラ聞こえてきたが、

 一旦成果を出すと、妬みがなくなるのが、魔族の良い所だ。

 ムサビ君も、お城で私を見ると、「ヒィ」と声をあげて逃げ出すようになった。

 全く、女を見て逃げ出すなんて・・


 今、やっているのは、私たちの近接戦闘訓練だ。

 私はついこの間まで、女子高生。

 エミリアはご令嬢、

 皆も平民、付け焼け刃の格闘技は危険だ。


 10メートル先から、バディが駆け足で向かってくる。


「行きますわよ~」


 ダダダダダダ


 その間に、弾倉交換し、装填し、撃鉄を落すまでの訓練。


(引く、外す。つける。放つ。装弾ヨシ)


 カチャ!


 エミリアが1メートル先まで来たときに、引き金を引けた。


「班付き、成功ですわ!次は私ですわ!」


 これは、戦闘中に、弾倉が空になった。

 それに敵が気付いて、突撃してくる。

 格闘では無く、弾倉を素早く交換し、近接でも撃てるようにする。


 これは、現代戦でも起こりえる現象だそうだ。


 外目では、友達を見つけて、駆け寄って来る仲良しに見えるだろう。


 しばらくして、

 魔王様が帰って来たが、訓練を見に来ない。



 訓練を初めて、二ヶ月と少し経ち、

 皆が訓練になれた頃、それは突然やって来た。

 朝3時、就寝中に


 カンカンカンカン!

 と鐘がなる。


 いつもの非常呼集だ。


 皆、慣れたもので、素早く動く。


 行軍し、いつもの仮想敵に攻撃!状況終了にはならなかった。


 状況は、魔族の村が勇者に占拠された。


 100キロ先の村


 その間にも、仮想敵が潜み撃破していかなければいけない。


 私が班長、軍隊で言えば、軍曹役だ。


「状況、川向こうの村まで、高機動車で前進、想定60キロ、友軍の勢力圏内!」


「乗車よ~~~~~い。【乗車!】」と私が号令をかける。

「「「乗車!」」」

 皆は、背嚢や武器を車に乗せ。左右の座席に、5人ずつ座る。合計10名

 私が運転席で、エミリアは助手席で警戒。


「セトル班員、交代で、休息せよ。詳細は任す!」

「交代で休息、了解!」


 疲れる前に休む。すると、永遠に疲れないが、軍隊式だそうだ。

 教本には書かれていない。諸制式と言われるものだ。



 四時間かけて、村に着く。道の状況が良くない。


「状況!3つ先の村まで、友軍が占拠!ワナ無し、しかし、人族軍の小部隊が散見される」


「了解、接敵行軍を行います!」


 普通に歩き、見つけ次第攻撃するやり方だ。

 ここからは高機動車を降りる。

 イワンさんが車を運転する。

 まだ、高機動車には、破壊筒、無反動砲を積み込んでいる。


 これを、8時間かけて約30キロ歩く。

 50分歩いて、10分休みが基本、


「状況、これより先、人族軍占領地帯!」


 車から無反動や破壊筒を降ろす。

 ここからは人の手で運ぶ。


 何故、車で、敵の拠点の前まで行かないのか?


 それは自動車だからだ。

 実は、この高機動車は、海外派遣用ではない。防弾ガラスも、装甲もない。

 だから、歩いて行く。


 この世界でも近距離での弓、ボウガン、カタパルト、魔法と、大きい車はマトになる。

 高機動車の車体はホロで覆っている。


 装甲車があれば、村までドーンと行けるのに。


 私が下士官役だ。


 まず、伏せて地面を見る。

 この世界に地雷はないが、落とし穴はあるだろう。


 あ、ありやがる。地面の色が一部違う。仮想敵のゴブリンの皆様が作ったな。

「班員は援護せよ」


 私はゆっくりと、警戒しながら、前に進む。


 そして、模擬手榴弾を投げる。


 ボン!


 やはり、地面はへこむ。


 中は、安全のために浅く、ヤリなどは仕込んでいない。

 が、落ちたら、怪我、死亡の判定をされる。


 常に警戒し、夜は見張りを交代でし、野宿する。


 時々、襲撃が起きる。

 ヒュン~ヒュン~


 あ、矢が飛んできた。


「襲撃!散開警戒!」



 コブリンさんたちが襲撃に来るが、ヤリの穂先はない。矢は矢尻がない。

 私たちは、空撃ちをし、撃退と判定される。

 怪我判定なら、1日攻撃不参加になる。


 4日経過した。


 あ、また、魔王さんが飛んでやって来た。


「状況、糧食無し!」


「糧食無し。了解」


 これからは地獄だ。飲まず食わずで歩く。


 疲れてくると、皆、自我が出てくる。反応は様々だ。


「グスン、グスン」


 エミリアさんは泣いている。泣き上戸だ。


「う、この石め。こんなところにあるから、俺が躓くんだ」


 セトル班員は、石に怒っている。


 私は・・・五感が冴え渡った。


(草が踊っている・・・)


 風が吹いているが、あの場所だけ。動きが違う。


 私は小声で命令をする。


「距離、300北西の草むらで、敵の待ち伏せが予想される。攻撃準備」


「やった。背嚢をおろせる」

「歩かなくてすむ」


 怪我判定された班員に、背嚢や荷物の見張りをさせ。


 私たち8名で、草むらに隠れて、ゆっくり、近づく。


 距離50メートルで、立ち上がり。銃の空撃ちをする。


 カチャ、カチャ、カチャ


 間抜けだが、

 陣地から、白い旗が揚がった。


「撃破!・・・・」


 魔族の若者は目を白黒している。

 近づいてくるのが分からなかったそうだ。


 ゴブリンさんたちは、くつろいでいた。

 完全な奇襲成功である。


「お、ここから、道が見える」


 ウシシシシシッ、捕虜尋問。


 私は、コブリンの長に、城下町で買った黒曜石のナイフを渡す。


「あの道は、どこに通じるの?教えて下さらない」


「・・・アノムラ、ヨンホンツノサマイル」


「ほお」

 ヨンホンツノ、魔王様の別名だ。


 この世界、戦争条約はない。捕虜は奴隷として売られたり、身の代金を要求するのが、慣例だぞうだ。

 勿論、訓練相手なので、そんなことはしない。

 捕虜役に、物をあげて感謝の気持ちを示そうと思っていた。


 私は、新たな道を見つけ。


 目標の村を攻撃する。


 ☆☆7日目


「援護射撃!」

 カチャ、カチャ、カチャ


「爆破1分後」


 村には、逆木や障害物で囲まれていた。

 それを破壊筒で撃破したと想定する。


 次に、村の門を、苦労してここまで運んできた無反動砲で攻撃する。

 勿論、模擬弾だ。実際に撃たない。


「後方ヨシ。安全装置ヨシ。てぇ!」


「1・2・3~弾ちゃ~~く、今!」


 そして、突入!


 村の講堂まで、一目散に・・・と思ったら、くす玉がパーンと割れた。

 くす玉から、出た垂れ幕は、大陸共通語で、


「状況終了!お疲れ様」


 と書かれていた。


 魔王様、ブゼンさん。骸骨博士、アリーシャさんと、ダークエルフの踊り子さんが、花びらを巻きながら、踊りを披露されている。


 周りには、この訓練に敵として参加してくれた魔族の若者や、ゴブリンの人たちもいる。



 パチパチパチパチパチパチパチパチ!


 と拍手をされる。


「グスン、グスン」


 あ、エミリアさん泣いている。嬉し泣きだ。


「さあ、湯浴みと食事があるぞ。湯浴みをしてから、スープを飲め」


 と魔王様が言っているが、これはワナだ。


 すぐにばらけてはいけない。


「【整列!】各自、武器、装備点検!」


「「「異常なし」」



「回れ~~~~~【右】武器を置け」


 銃や無反動砲を置くときは、銃口を人に向けないように、後ろを向く。

 そして、また。魔王様の方に向く。


「回れ~~~~~【右】」



「服装を正せ!全員、魔王様と、訓練に協力してくれた方たちに、挨拶!【敬礼】」


 魔王様が、自衛隊式の10度のおじきを返すと、


 こちらも、敬礼を解く。


【なおれ!】


「各自、解散、武器監視は私がやる。休憩せよ。【別れ!】


 と言ったが、皆、うずくまって、泣いている。


 ああ、何か、私もこみ上げるものが来たよ。

 嬉しいじゃない。



 ☆☆☆


「MVP、エミリア!」

「グスン、グスン、グスン」


 パチパチパチパチパチ!


 エミリアさんが表彰された。

 全員一致で、エミリアさんだ。


 お嬢様で回復術士に、この訓練はキツいものだ。

 それをしっかり付いて来た。



最後までお読み頂き有難うございました。

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