第12話
ドラゴン撃墜の報は、精霊王国のブリトニーまで届いた。
「なんじゃと、あの炎のドラゴンが、魔族に討ち取られたと!」
「御意にございます!魔族に占領されたヤクーツの人族が、討ち取ったとの噂がありますが、デマでしょう」
「魔王か?」
「いえ、魔王でないことは確かです。その日、魔王は不在で、奴は女神信仰圏と戦っていたと、第三国経由で確認済みです」
・・・うぬ。寿命が近かかったとは言え。あのドラゴンを倒すとは、いや、寿命で、魔族領に墜落したのだろう。
ドラゴンの勢力圏近くで野外実習しているのは、カザマか?
「ふうき委員グループのカザマに、ドラゴンの遺産を確保させよ。魔族に先を越されるな」
「御意!」
☆☆☆大陸北方
「風間君、そろそろドラゴンの勢力圏だよ」
「ああ、俺は風魔法を使えるから、空への攻撃も大丈夫だ。ドラゴンを討ち取って、ドラゴンスレイヤーの称号を、そして、魔王を討ち取る。そしたら・・」
・・・ブリトニー王女殿下と結婚も夢ではないかも、俺は序列8位の風間、ジョブは魔法剣士だ。風紀委員だった。
先生はあらから部屋に籠もって、魔法の研究ばかりしている。
個室が与えられている俺たちは、2-Bのエリートだ。
本来なら、聖女の委員長も来るはずだったが、彼女は、ブリトニー王女殿下に叛逆して、オリに入れられている。
代わりに、剣聖グループ所属の榊原さんが回復術士としてきている。
副委員長の上級魔法士の安田と、美化委員の結界師の鈴木さん。書記だった支援職の田貫。これだけでも、魔族兵数百は簡単に殲滅できる戦力だ。
「皆、委員会グループの力を見せるぞ!」
「「「おおお」」」
「ええ・・」
「榊原さん。大丈夫だよ。俺がついている。声を出していこう!俺が守るぜ!」
「風間君、何かが降ってきている。それに、熱い」
パラパラ・・と彼らの頭上から、火の粉が降ってきた。
「「「何だ!」」」
次の瞬間、燃えた硫黄が隕石のように降り注ぐ。
「「「ギャアアアアアアア」」」
彼ら委員会グループは、戦いの基本である。警戒を怠っていた。
空には二体のドラゴンがクルクルと太陽を背にして旋回をしている。
彼らは、プレスの射程の短さを克服するため。
上空で、くわえていた硫黄の固まりをかみ砕き。
プレスで、火を付けて、吐き出していた。
焼夷弾だ。
混乱しているスキに、もう一体が、地上すれすれまで急降下し、射程におさめると、風間達に向かって、プレスを吐く。
ボオオオオオオオーーーーーー
「「「ギャアアアアアアアア」」」
委員会グループのうち、風間、安田、鈴木は黒焦げ、榊原だけは難を逃れた。
「ヒィ」
(あれは戦闘能力ないから、いいや)
(何か、同じ、種族なのに全然違うね)
☆☆☆委員会パーティーから、後方500メートル、騎士団
「勇者の奴ら。何も知らない顔をだな」
「奴隷は奴隷と思わせないのが管理のコツだ。俺たちの役目は、魔法袋に、ドラゴンが集めたお宝をがっぽりと収納して殿下にお届けすることだ」
「しかし、王女殿下、ネコババしないように、誓約魔法を俺たちに掛けるか?普通?」
「何だ!なにか向こうで、火の雨が降っているぞ!」
羽根飾りの兜を被った隊長に、騎士が勇者たちの方向を指さし報告をする。
「た、隊長、空から、木が・・・」
「ウワワワワワーーーー」
勇者グループを襲撃すると同時に、
もう、1体のドラゴンが、足で掴んでいた大木を騎士団の本部にめがけて降らせた。
その後、三体は空で合流する。
(兄じゃ、羽根つき頭、やったぞ)
(地上に降りるぞ!)
(((グオオオオオオオオ))
ドラゴンは地上に降り。生き残った騎士団に攻撃を仕掛ける。
飛龍系ドラゴン。地上でも並の戦士では歯が立たない。
(兄じゃ、これ、魔法袋?)
(ああ、これで、お姫様に、親父の遺産、渡せる)
(親父を地に埋めてくれたお礼)
三体は、光輝くものを集めると、魔法袋と一緒に、北方の山に飛び去った。
☆☆☆精霊王国王城
「ブリトニー王女殿下、勇者軍、ドラゴンに敗北と、魔道通信で連絡が来ました。
勇者たちは重傷、サカキハラから連絡がありました・・」
「何じゃと」
・・・もしかして、こいつらは弱いのかもしれない。レベルは一月で騎士団長を超えたはずだが、
「ケンタついてこい」
☆☆☆騎士団訓練所
「そこの騎士、ケンタと真剣勝負をやれ、お前が仕込んだのだろう?」
「御意、しかし・・・王女殿下、私のレベルは36です」
「ええい。勇者どもは弱すぎて話にならない。ケンタ、命令する。この騎士を殺せ!」
ブリトニーが命令すると、指輪が光る。
この誓約魔法は、ブリトニーが命じた場合のみ。精霊王国の人間を害することが出来る。
「・・はい」
と俺は返事する。命令は逆らえない。
俺はあの日から、戦いが怖くなった。
使い物にならないと・・・お、教官、遅い。
パスン!
騎士の首が落ちた。
「・・・まあ、良い」
・・・我が国がどこからか経済攻撃を受けている。
魔族如きに出来るはずがない。女神圏か?最近、我国の社交界に顔を出している。
貨幣が少なくなったわ。
貨幣を増やせばいいだわ。
ドワーフに命じて、金貨一枚を三枚にすればいい。いや、5枚か?
―――――――――
この指示を、ドワーフは拒否し、やがて、魔族領に行くことになる。
☆☆☆魔族領、ヤクーツ王国
ドラゴンを倒してから一週間、訓練を中止し、王都郊外に、大きな墓穴を掘り。骸骨博士さんが、ドラゴンをゾンビ化して運び山の中に埋葬した。
今日は、葬送の式典の日だ。
ドラゴン災害、奇跡的に、避難途中に怪我した数名以外、直接の負傷者はなく、死者は0である。
あのドラゴンは人口密集地帯を襲おうとしたようだ。
ダークエルフのアリーシャさんが、舞を披露し。
その後
私たち人族部隊と、魔王軍幹部は、黙祷した。
「黙祷、終わり!」
とブゼンさんが号令をかける。
「ふう、これから、1日休み。夜の点呼の時間から、訓練再開、それまで、駐屯地近辺の外出も許します。各自、足りないものを準備するように」
「「「「了解」」」
・・・もっと、お休みをあげたいが、敵は待ってくれない。早く、仕上げなければ。
と思案していたら。
空から、ドラゴンが3体現われた。
「ドラゴンだ!」
「警戒!皆、分散・・・」
「待って!」
・・・あの日から、ドラゴン語が分かるようになった。
ゆっくり降りて、羽をたたみ。石碑に礼をする。
「グルグルグルググ」
「・・・どういたしまして、え、これをくれるの?」
3体の中で、一番大きなドラゴンが私に袋を渡す。
魔法袋だ。
おお、とても良いものだ。お城が帰るぐらいのお値段で、大勢の兵の糧食を収納できる特大サイズのものだ。
私個人が持っているものは荷車サイズである。
私は深々と頭を下げる。
「ギャア、ギャア、ギャ」
「え、お背中乗せてくれるの?」
まるで、おんぶしてあげる!と言うように、私に背中を見せる。
「え、寒いから、何か暖かいものを着た方がいい?」
私は忠告を聞きOD色のポンチョを着込む。
・・・
「班付き・・・ドラゴンの背中に乗っている」
「寂しいですわ。まるで、私たちの手の届かないところまで成長されてますわ」
「骸骨博士殿、ドラゴンの巫女殿が誕生しましたな」
「ブゼンさんや・・・わしは1000年生きていて、初めて見たのう」
「ああ、これで、数が少ない魔王軍、こちらの戦線も攻勢に出られる。訓練が終わり次第魔王様に、意見具申だ」
ドラゴンの背中に乗った梓は、多くの者に目撃され、以降、ポンチョの色から深緑の魔女と二つ名で呼ばれるようになる。
最後までお読み頂き有難うございました。