第11話
「引く・叩く・放つ・狙う・撃つ!」
「「「引く・叩く・放つ・狙う・撃つ!」」」
私たちが大真面目にトントン!と銃を叩く訓練をやっていた。
これは銃がジャムった時の訓練だ。
そしたら、魔族の地竜兵がやって来た。
「ブゼン殿から通達、訓練中止!ドラゴン災害!アズサ殿は至急、王城まで来られたし」
ドラゴン災害、私は知らない。
「「「ヒィ」」」
皆は怯えている。
なら、皆を城の武器庫に避難を命じ、私は城の会議室に行く。
「魔王様のご不在時に、ドラゴンの襲撃の狼煙が上がった。既に北方からこちらに向かっている」
とブゼンさんが言う。
今、ここにいるのは、死霊使いの骸骨博士と、その弟子、ダークエルフのアリーシャさん。イワンさんとその他、魔王様と同じ赤黒い魔族たち。
あ、嫌な奴。ムサビ君もいる。
魔王様は、女神信仰圏の戦線にいるらしい。
すぐには来られない。
「良いか。人族も忘れずに城に避難させろ」
と言っている最中、ドラゴンが王城近くに現われた。
「ヒィ」とムサビ君は悲鳴をあげるが、他の魔族たち声こそあげないが、恐れているのが分かる。
「あの~嬢ちゃんの、人族部隊で、戦えないかのう」
と骸骨博士が、提案する。
・・・私はドラゴンを見る。目が赤い。舌を出している。火を吐いている・・・あれ?
これって?
ヘリ?と同じ?
私は答えた。
「・・・やります。倒せるとは断言できませんが、戦う術は持っています」
「あん?地竜なら、オーガ族で倒せるけど、飛んでいるドラゴンを倒せるワケないだろうがよ?黙って、石の家で震えてろ」
「これ、ムサビ、戦士なら、戦う者を罵倒するな!アズサ殿、戦って、己の力量に合わないと分かったら、すぐに避難だ。これは恥ではない」
・・・無理なら逃げろと限定付きながら、許可を得た。
私はすぐに武器庫に向かう。
その途中にアルバート君にドラゴンについて聞く。
「飛龍系ドラゴンは厄介だ。空を飛ぶドラゴンに攻撃手段はない。地上に近づいて、火を吐いて獲物を丸焼けにする。獲物を食べるために地上に降りるときに、一斉にかかるしかない。
しかし、あのドラゴン、病気だ。狂竜病にかかって、見境無く襲っている・・・アズサ殿勝算はあるか?」
「ある。アルバート君は勇者だよね。協力してくれる?」
「ああ、しかし、聖剣が無ければ、私では無理だろう」
「でも、怖くなければ、それでOKだよ」
「いや、怖いが、それでも戦うのが勇者だ。君と一緒なら・・」
「え、何?あ、もう、武器庫ね」
・・・私は、アルバート君に軽トラの運転をさせることに決めた。
他の隊員は・・無理ね。この世界の人は、ドラゴンの恐ろしさが身に染みついている。
だから、弾倉に弾込めだけを命じた。
「班付殿・・・もしかして、ドラゴン討伐するのですか?」
「・・・・・・」
私は答えない。
しかし、
「どうせ、やるのでしょう。作戦を教えて下さい!」
「僕たちは一緒だ。班付だけ危険な目に遭わせるなんて出来ない」
「アズサ班付殿、私は貴女のバディですわ。いつもバディ行動しろと言っていた貴女が一人だけ行くなんて、矛盾しておりますわ!」
【バーーーン】
と私は机を叩いた。
皆は黙る。
「命令下達!敵情、飛龍系ドラゴン1、我、軽トラ一台、乗員、操縦手アルバート、荷台の上は、私とエミリア!その他の者は現地で示す。各自、弾倉にため込め。3分でできるだけ込めろ!」
「荷台の上了解ですわ!弾倉に弾込め」
「「「弾倉に弾込め了解!」」」
思えば、初めての命令下達だ。
作戦というほどのものではない。
アルバート君に軽トラを運転させる。石畳の道に、白は目立つ。
大きな獲物と誤認して、襲ってもらう。そして、私の7.62ミリ弾を撃つ。
エミリアは弾倉交換時の補助。
皆の銃は5.62ミリ弾だ。ドラゴンが軽トラを襲わなかったら、他9名は、セトル班員の指示の元、城の防衛、対空戦闘、彼は一番リーダシップがある。指揮は出来るだろう。
「ドラゴンだ。早い!」
と皆は言うけれども、私に取っては既知の早さだ。
この世界の乗り物は、馬、魔族は大狼、小型の地竜の地竜兵
地球でも、19世紀に蒸気機関車が誕生するまで、時速20キロの乗り物しかなく、
40キロの機関車の登場で夢の高速化社会といわれたそうだ。
ドラゴンのプレス。
自衛隊の携帯放射器なら、射程は、ゲル化したガソリンを使えば、40メートル。普通のガソリンなら、20メートルまで落ちる。
充分射程範囲だ。
貫通力
7.62ミリ弾は圧縮鉄鋼17ミリ、その他の鉄は50ミリまだ大丈夫だそうだ。
ドラゴンの鱗は圧縮鉄鋼よりも、強くなく薄いはず。
こちらが、チョコマカと動けば、急降下はできまい。追いかけてプレスを吐けばめっけもの。
と思って出撃したが、
「急降下してきますわ!」
ドンドン
軽トラの運転席側を叩く。
アルバート君が右折する。
そうか、まっすぐに動くのはダメなのか?
私は窓からジグサグに動くように指示をするが、難しいか?
キゥウウウウウーーーー
急ブレーキだ。道は行き止まりだった。
「キャア」
私とエミリアは抱き合う格好になる。
後ろは壁だ。ドラゴンは羽を広げて、ゆっくり近づいて来る。
そうか、高い建物に囲まれている。急降下の邪魔になる。
動かないから死んだと思い、爪で引っかけてどっかに持って行こうとしているのね。
私は、切替え軸を「レ」にする。
パンパンパンパンパン!
パリン、パリンと鱗が落ちる。
「ガアアアアアアアア」
すぐに弾倉が空になる。
エミリアが、弾倉を手渡す。
私はまた、撃つ!一瞬で弾倉が空になる。
「避難だ。落ちてくるぞ!」
アルバート君が私とエミリアさんを荷台から放り投げる。その直後、ドラゴンは墜落し、尻尾が軽トラにかかる。
ドカーーーン
軽トラは破損したが、ドラゴンは倒せた。
「ふう」
とため息を付いた。
「エミリアとアルバート君、無事?」
「擦り傷以外、無事ですわ」
「ああ、俺はだ・・・まだ、いるぞ!太陽に隠れていた!」
上空にドラゴンが3体、私たちの上をグルグル回っている。
弾倉は、飛散している。
ドラゴンは賢い。
今の武器を見たら、対策を考えるだろう。
と思って見ていたら、
「アズサ嬢、避難だ!」
「班付、こっちに行きますわ!」
「大丈夫だよ。あれは・・・礼をしている」
・・・あのドラゴンは、翼を広げ、上下に揺らしている。
病気になった仲間の死に様を見に来たのね。
ピコン
「翻訳スキル、ドラゴン語を取得しました」
私は手をふる。
二人は唖然と私を見ていた。
思えば
この日から、アルバート君は護衛をしなくなったな。
最後
「君は強いだろ。一人でも大丈夫だ」
と言い残し、去って行った。
まるで、フラれたみたいだ。
ドラゴンの遺体は、埋葬することに決めた。
討ち取った私が決める権利があるそうだ。
素材を取りたい!という意見が大半だったが、
私は仲間のドラゴンの報復を恐れた。
次は、強力な対空ミサイルがないと勝てないだろう。
そんな予感がする。
最後までお読み頂き有難うございます。