第9話
私は対価を提供され、商品をお城で召喚する。
私は売上げの1割をもらう契約になった。
その代り、対価は魔王軍が準備し、安全と生活は保障される。
自由時間は外に出ることも出来るが、
「あれ?何故、アルバート君がついてくるの?」
「アハハハハ、アズサ殿、護衛だ。新しい仕事は君の護衛だった」
「えええーーーー何故?」
護衛は止めて欲しいと魔王様にお願いしたら、
「君ね。ここは、まだ、この世界基準で治安がいい。しかし、日本の比にならないくらい犯罪率は高いよ。もし、君が強姦、殺人の被害にあって、犯人が捕まっても、君の純潔や命は返ってこないのだよ」
・・・なるほど、まだ、日本の感覚でいた。そもそも警察はいるの?
「一応、衛兵隊がいるけど、現行犯以外は逮捕出来る能力は、ほぼないね。裏組織に情報を提供してもらって、捕まえられるぐらいだよ。江戸時代レベルだ」
「分かりました」
「大丈夫、君はこれから強くなるから、そしたら一人で買物に行けるよ。宿題はやってきたか?」
「・・・はい」
「諸元、口径7.62ミリ、最大射程〇〇〇〇メートル、最大有効射程〇〇〇メートル、有効射程〇〇〇メートル・・・四条右転・・」
「銃、分解!」
・・・
「3分・・まあ、合格だ。で、この部品は?」
「ピストンカン、補助逆鈎バネ、ピストカン止め用バネピン、上部被筒・・・切替え座金、消炎制退器止めネジ・・・」
「おお、頭がいいね。覚えているね。感想は?」
「バネがやたら多い・・・」
「そうだ。銃はバネと撃ったときの排気ガスで動く、しかし、自動と名前が付いているが、最初の弾込めは手動だよ。だから、君は初めての戦いの時に、弾が撃てなかった」
・・・魔王様は、時間を見つけては、私に、銃の解説をする。
まあ、この世界、銃の扱いは覚えていた方がいい。
「ヨシ、射撃予習だ」
・・・私は、城の中庭に連れて行かれ、ここで毛布の上で伏せ撃ちの姿勢の練習をする。
マトが100メートル先に設定され、銃の後方に付いている照門をのぞき、銃口の先端についている突起物、照星をマトに合わせる。
マトが完全に照星にピタッと止まることはまずない。
映画のように、スナイパーの照準眼鏡の十字のマークに、ピタッとターゲットに止まることはない。人間は呼吸、筋肉の収縮などで、必ず揺れる。
照準の際は、片目はつぶらない。両目を開けるのが、軍隊式だそうだ。
常に警戒だ!と言うことだ。
そして、息を吸い。吐く。止める。撃つ。
カチャ
空撃ちをする。
私が銃の窓と呼んでいたコウカンを引く。
すると、弾は入っていないが、引き金を引くと、カチャと音がする状態になる。
この動作を繰り返す。
「引き金は、闇夜に霜がおりるが如く引くベシ!」
「闇夜に霜がおりるが如し!」
・・・私が初めての戦いで弾が詰まったのは、ガク引きだったからと説明を受けた。
「レ」は連射のレ、ゆっくり、引き金を戻さないと動作不良を起こすそうだ。
そして、「タ」は単発のタ
「あの、魔王様、私に自衛隊の教育をするつもりですか?」
「違うよ。自衛隊の教育はこんなものではないよ」
この世界、やる事がない。
召喚の仕事もそんなに多くはない。
だから、暇を見つけては、銃の分解結合、整備、射撃予習を行う。
また、様々な自衛隊の兵器の本を召喚し、研究をする。
そして、今日は、実弾射撃。
魔王さんに黒い羽が生えた。忘れていた。ここは魔法の世界だ。
「えええーーー」
「お姫様抱っこだ!我慢しろ」
郊外の野原に連れて行かれる。
あらかじめ召喚していた巻き尺で距離を測る。
200メートル、300メートルの位置にマトを置き。
撃つ
パン!パン!パン!パン!
双眼鏡で、マトの弾着痕を見る。
「おお、全弾命中だ!」
と喜んだが、魔王様は違う所を見ていた。
「あ~ダメだ。弾がまとまっていない。一発一発の間隔が大きい。姿勢が悪い。撃つと、必ず銃身が跳ね上がる。力を抜いて、自然と元の姿勢に戻るように鍛錬!」
「はい」
魔王様がいない時は、一人で学習する。
たまに、アルバート君に付き添ってもらって、郊外の野原で実弾射撃をする。
伏せ撃ち。膝撃ち。立ち撃ち。
まあ、いつも、羽を生やして、魔族領、あちこちに行っている。魔王様は忙しいのだろう。
☆☆☆魔族領と精霊王国の境
「黒炎の何とかーーーーーーーー」
ボオオオオオオオオオオオオ!
何だ!あっという間に、騎士たちが全滅した!
今日、俺たち2-B、剣聖グループは、野外実習でコブリンの村を討伐した。
奴らにもメスがいて、雄達が棒や石を投げて、逃がそうとする。
100匹くらい討伐して、メスを追撃だとなったら、空から、赤黒い奴が現われた。
反撃するぞ!
「ケンタ君、空だよ。攻撃できないよ!」
「オープン!」
・・・俺はステータスを見る。レベル56、スキル、空を攻撃出来るスキル。
真空斬・・・
「やあ、戦いの最中に、ステータスを見るなんて失格だよ」
「「「魔王!」」」
・・・気が付いたら、背後に来ていた。
「オッス、オラ、魔王アキラ、転生者だよ。君たちが殺したコブリンは、女もいたはずだ。単性ゴブリンは南の方にいるよ。どうして、殺したの?」
・・・振り向いたら、殺される。
そんな感覚がしてならない。
「降伏するのなら、生かしてあげるよ。君たちはまだ、子供以上大人未満だ。召喚した精霊王国も悪い。その指輪を取っちゃおうよ。俺が斬ってあげるよ。そして、治療もしてあげる。どうかな。魔王軍は強いのが一番、殺した兵は気にしないでとは言えないけど、一生懸命頑張れば、軋轢は消えるよ」
俺は剣道部のエース、ブリトニー王女殿下に呼ばれた選ばれた戦士だ。降伏なんて考えられない。
「剣聖グループの力を・・」
「梅田、止めろ!」
・・・俺は叫ぶ。敵う相手ではない。
「ヒィ、梅田君!」
・・・上級剣士の梅田の首は無かった。
「攻撃したら殺すのは当然じゃない。まあ、君たちはよく考えてよ。次、非戦闘員を殺したら、問答無用で殺すよ。じゃあ。竜巻の何とか、震えて帰れ!」
「「「ギャアアアアアアア」」」
・・・俺たちは、精霊王国側に、竜巻で押し返された。
数百メートルは飛んだ。
大けがを負ったが、生きている。
回復術士の榊原さんは竜巻で飛ばされなかったからだ。
余裕か?
☆☆☆ヤクーツ城。
「あ、魔王様、お帰りなさい」
・・・空を飛んで仕事に行っていた魔王様が帰ってきた。
どこに行っていたのだろう。
「お、アズサ、人族の魔王軍部隊を編成するぞ。お前も魔王軍幹部会議に出席しろ」
「えええ」
「こう忙しかったら、防衛が間に合わない。人族の手も借りたい」
・・・私はこの時、この日がゆったり過ごせた最後の日だとは思いもしなかった。
最後までお読み頂き有難うございました。