第一話 忌川と狩内
長編です。
少しずつ話が進みます。よろしくお願いします。
第一話 忌川と狩内
やっと終わった四時間目、次は飯だと用意をする。
それと同時に授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。
「忌川〜飯食おうぜ」
「い"ッだ……」
チャイムと共に俺の肩をぶん殴るこいつは狩内爽太。『かりうち』ではない。『からない』だ。
俺の幼馴染で黒髪。目つきが悪いのでヤンキーだと思われがちだがただの陰キャである。
そして俺が忌川渡。『いみがわ』である。
割と薄めの茶髪で、学校が変わり進級するたび茶髪申請を出さなければいけない。ちなみに狩内と同じく陰キャだ。
「いきなりぶん殴るのやめろよお前、だからモテないんだぞ」
「関係なくね?僻みか?」
実際のところ俺も狩内もド平凡なモブ野郎なので僻みもクソもない。
「違いますー。今日も飯は屋上で食うの?」
「あそこ広いしな。騒いでもバレねえ」
「バカお前そういうこと言ってるとバレるんだわ」
そんな無駄口を叩きながら屋上へと向かう。
今日の飯なんだっけな、と想いを馳せるが今朝は母親が早朝出勤になってしまったためコンビニ弁当だという事を思い出す。
いつもの段差に腰掛けて、膝の上に弁当を乗せる。
「何お前今日コンビニ弁当なの?自炊しろよ」
「は?最近のコンビニ舐めんなよ、そこらの店と同じくらい美味えから」
「そうじゃないんだよな、自炊しろって言ってんだよな」
そう言う狩内の弁当はいかにも男子高校生といったような飾り気のない弁当だった。
「お前自炊したの?」
「今日母ちゃん早朝出勤だから」
「なんだよ、お前んちもかよ」
「あれ、そうじゃん。俺らの母ちゃん同じ会社の同じ部署だし当たり前だったわ……馬鹿が露呈しましたね」
「すぐそうやって難しい言葉使おうとするところが馬鹿だよな」
世界中を見てもこんなに内容のない会話はないだろうと言うほどに内容のない会話をしているわけだが、ここで俺はとんでもないことに気づいてしまった。
「なあ、全然関係ないんだけどさ」
「なに?」
「俺忌川じゃん、んでお前狩内じゃん?」
「そうだけど」
「二人合わせて『いみがわからない』じゃね??」
「天才か????」
こいつとは幼稚園の頃から一緒だが、今気づいた。
およそ十二年ほどの年月のうちに気づかなかったのか。
やっぱり馬鹿なんじゃないか俺達。
「コンビ名決まったし漫才でもやるか?」
「それこそ『意味が分からない』じゃんね、ウケるわ」
「お前やっぱりノリいいよな。天才だわ」
そんな下らない会話をしながら急いで飯を完食した。
そして先程作った深夜テンションのようなコンビ名を後輩に自慢する事になった。どんまい後輩、安らかに。
ウキウキで階段を降りて下の階の後輩のクラスまで来たわけだが……。
「なんであんた達がいるんすか」
絶賛反抗期。碌なことじゃないだろって顔をしている。
流石だよお前。当たってるもん。
ちなみにこの後輩の名前は難波港。『なにわ』ではない。『なんば』である。当然というかなんというか関西出身だ。
「俺今忙しいんで早よ……早く帰ってもらえます?」
「お前クラスでは猫被ってんの?ウケる」
「うざいんでずっとウケててください」
「てか話しに来たことはそれじゃないんだわ」
すかさず狩内が引き止める。ナイスだ。
「なんです?しょうもない事だったら張り倒しますよ」
「あらやだ暴力反対」
「しょうもない事なんですね帰っていいですか」
そんなツレないことを言う難波を無視して話を進める。
「今日俺気づいちゃったんだけどさ」
「話聞いてます?」
「あ、難波絡まれてんじゃん草」
そう言いながらこちらに歩いてくる女子生徒は江戸街桜。『えどまち』である。かなりのオタクで、ネットスラングをよく使う。俺は奉行って呼んでいる。江戸だし強そうだから。ちなみに女子力はドブに捨てたと本人は語っている。
「奉行じゃん、元気?」
「仮にも奉行に馴れ馴れしすぎで草」
「桜お前笑ってないで助け舟くらいだせや」
「おだまり」
奉行がそういうと先程までうるさかった難波が黙り込んだ。後輩の力関係(闇)を学んだ気がする。
「んでなに?あたしの知らないところで面白そうな話してるじゃん忌川パイセン」
「そうそうそれなのよ。俺天才かって思うくらい面白いんだけどさ。俺忌川じゃん?そんで、こいつ狩内じゃん?二人合わせて『いみがわからない』じゃん??ヤバくね??」
「思ってたよりは面白かったけど、それよりパイセンの語彙の方が心配だね」
「語彙飛ぶくらいすげえってことよ」
「語彙飛んでるんはいつもとおんなじちゃいます?」
「忌川に対しては思ったより深刻な反抗期だなお前」
「あんたもですよ狩内さん」
難波の深刻な反抗期に関しては割と前からなので気にならないが、どうして奉行の言うことは聞くのかが分からん。
「なんで奉行の言うことは聞くんだよお前。奉行だからか??」
「奉行って呼んでんのはあんただけですよ。それに桜の言うことだけ聞いてるとかじゃなくてこの中でまともな人間が桜くらいしか居ないだけです」
「あたしまとも枠なの?大草原」
「『百歩譲って』やからな」
「そんな強調しなくて良くない??」
そういえば、と狩内が何かを思い出し話し始めた。
「お前らの学年から聞いた噂なんだけど難波と江戸街が付き合ってるってマジ?」
「は??????」
「難波ガチギレしてんのウケるな」
「誰がそんなバカみたいな噂垂れ流したんですか?」
「いや知らないけど、根拠があるらしくて」
はぁ、とため息をついてこちらを睨む難波。俺らは関係ないぞ。睨むんじゃない。本当だ。
「まあ根拠ぐらいは聞いてあげますよ。なんです?その根拠ってのは」
「他の女子を呼ぶときは苗字にさん付けかちゃん付けなのに、桜だけ呼び捨てだからって言うことらしい」
「最初にそんなこと言い出したやつはなんでそんな細かいこと覚えてんです?きっしょ……」
「『きっしょ』がガチトーンで草」
そんな話をしていると、昼休み終了のチャイムが鳴った。
「じゃあ、俺ら戻るから」
「もう来ないでいいですよ」
なんて、辛辣な言葉を浴びせられたがこれも日常茶飯事なので気にしない。
言葉を交わしてくれるだけいいだろう。反抗期なのに。
そして狩内と駄弁りながら教室に戻り、俺の前に着席した狩内に話しかける。
「次なんだっけ……化学?」
「化学だけど、お前宿題やった?」
「え、宿題あったっけ??」
「プリントあるぞ、表裏」
宿題なんて物があった事を完全に忘れていた俺は、急いで机の中のプリントを漁る。
中に入っていた物はついこの間返されたゴミのような点数のテストばかりで、宿題なんてそんな物は入っていなかった。
なんでこんな机が汚いんだ。俺だけど。
本当に自分のものぐささに呆れる。俺だけど。
授業つまんねー、と思いながら受ける授業ほどつまらんものはない。
先生の言葉が別の言語に聞こえる。
日本語でオナシャス!!(※日本語)
ぼうっとしながらペン回しをしていると、目の前の狩内が当てられた。
当てられてやんの。ざまあみろ。
特に恨みはないけど。
「狩内、ここの問題は分かるか?」
「え、あー……分かりません」
「じゃあ他にわかる奴いるか?」
その後、理系の奴が回答して五時間目の授業は終了した。
次は体育……らしいんだが、噂によると男女合同でガチドロケーをやるらしい。小学校か???
「忌川、ガチで行くぞ」
「おうよ、狩内」
そう言ったものの、ドロケーなんて久しぶりすぎて俺はどうすればいいかわからん。
俺ら二人はケーサツ陣営に配属された。
全員逮捕できるように頑張ります。
次回、第二話
ガチドロケー!!指先タッチはノーカンで!!
お楽しみに!!
【キャラ設定】
・忌川 渡 (wataru imigawa)
18歳 高3
182㎝ B型 7月5日
得意科目 現代文
苦手科目 科学全般
好きな食べ物 ポテトチップス
苦手な食べ物 タルタルソース
特技 ペン回し
ストレスの原因 勉強
・狩内 爽太 (souta karanai)
18歳 高3
185㎝ A型 9月16日
得意科目 数学全般
苦手科目 政治・経済
好きな食べ物 ポップコーン
苦手な食べ物 タピオカ
特技 ねりけし作り
ストレスの原因 勉強
・難波 港 (minato nannba)
17歳 高2
176㎝ A型 10月30日
得意科目 世界史
苦手科目 物理
好きな食べ物 浅漬け
苦手な食べ物 納豆
特技 ツッコミ
ストレスの原因 先輩二人
・江戸街 桜 (sakura edomachi)
16歳 高2
145㎝ A型 9月4日
得意科目 倫理
苦手科目 体育
好きな食べ物 寿司(マグロの赤身)
苦手な食べ物 ツナ
特技 スレ立て
ストレスの原因 ガチャ結果
不定期です。