ようこそ楽しいお茶会へ④
「いらっしゃい、ロザリアさん。」
そう微笑んだアルテミスはとても上品で洗練されていて、美しかった。
その微笑みからは間違っても嫌悪感などというものは感じ取れず、お手本のような貴婦人の姿がそこにはあった。
「ロザリアさんが最後のお客様よ。」
「え?!ごめんなさいっ!!早く出たつもりなのですが皆さんをお待たせしてしまいましたか?」
ロザリアが慌てて謝罪するがアルテミスは微笑みの表情を崩さず大丈夫だと首を緩やかにふった。
「今日の主役は貴方だもの。主役は最後に堂々と登場すると相場が決まっているわ。」
「主役だなんてっ」
「今日集まって下さった方々は皆貴方に会いたくて今日こちらにいらして下さったのよ。私も滅多にお会いできないような方々も貴方に会うためならと遠路はるばるお越しくださったのだから。」
「私のために!?私、とっても嬉しいですっ!!」
感激したロザリアは勢いよくアルテミスに抱きつく。
あまりにも無礼な行動に周囲に控えていたメイドや護衛の騎士が驚き眉根をよせアルテミスからロザリアを引き離そうとするが、アルテミスは視線でその動きを制した。
「今日はきっと忘れられない楽しいお茶会になると思うわ。」
「はいっ!!とっても楽しみです!!」
ロザリアは前回ラザニアのお茶会にデイモンと出席した際に受けたアルテミスの冷ややかな態度と鋭い視線、投げつけられた叱責から自分は酷く嫌われているのだと思っていた。
なので今回アルテミスから再度お茶会に招待され時、何とか愛するデイモンの母であるアルテミスやラザニアと打ち解けられたらと強い決意を持って参加したのだ。
しかし、蓋を開けてみれば前回とは打って変わって穏やかな表情を浮かべ温かな言葉でもてなしてくれたアルテミスにロザリアは拍子抜けしてしまった。
そしてどうやらアルテミスは彼女の大切な人達をわざわざ集め自分を御披露目しようとしてくれていると知り、天にも昇る気持ちだった。
それはつまり、ロザリアをデイモンのパートナーとして認めステラ家の一員として受け入れられたということだと感じたからだ。
今にもスキップしそうな足取りでニコニコと満面の笑みを浮かべ、ロザリアはアルテミスの案内に従いティールームへと足を進める。
扉の前に立つとアルテミスは後ろを振り返り優しく微笑む。
「ようこそ、楽しいお茶会へ。」
カチャリと静かに扉が開き、長い長いアルテミスの楽しいお茶会が幕を開けた。




