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覚醒2

 

「ファラーラ様、いかがでしょうか?」

「え? あ、うん。素敵ね。ありがとう」

「は、はい! 申し訳ございません!」

「え?」

「え?」



 シアラはなぜか急に謝罪して、それからびっくりした顔で私を見た。

 もちろんすぐに顔を伏せたけど、戸惑いがすごく伝わってくる。


 あ、そうか。

 私ってばいつもドレスは少なくとも三回は気に入らないって着替えるものね。

 最低だわ、私。

 そして面倒くさいわ、私。



「シアラ、このドレスでいいから、次は髪を結ってくれる? あまり引っ張らない緩い感じがいいわ。ハーフアップでどうかしら?」

「は、はーふあっぷ、ですか?」

「ああ、あの、こういう感じのこと。でもきついのはいや」

「か、かしこまりました」



 そうか。この世界ではハーフアップとは言わないのね。

 って、この世界じゃなくて私の世界、よね?

 今日は変な夢を見たから頭が混乱しているみたい。


 ただ一つ言えるのは、我儘はやめようってこと。

 あれがただの悪夢なのか、予知夢なのかはわからないけれど、客観的に見て夢の中の私には腹が立ったから。

 ファラーラにも蝶子にも。


 それと、衝撃的なことに気付いてしまったけれど、私は王太子殿下のこと、好きじゃないんだわ。

 それなのに将来の王妃って地位に惹かれて、お父様に婚約できるようねだってしまっていたのね。

 いや、まあ、好きじゃないけど嫌いでもないから、このまま結婚ということもありと言えばありなんだけど。


 でもでも待って。

 そうなると婚約破棄されてサラ・トルヴィーニ伯爵令嬢に立場を奪われ、私は発狂してしまう可能性あり?


 それは嫌だわ。

 そうならないように穏便に婚約解消して、サラに譲る?

 うーん? それともあれは私が超絶嫌な女だったから?


 わからない。

 あれはやっぱりただの悪夢かもしれないし、先走って婚約解消なんてしたら私の将来に傷がつく。

 お父様の立場もあるし……。

 よし、傍観しよう!


 そう決めるとお腹が空いて、朝からもりもりご飯を食べた。

 シアラはそんな私に驚いていたみたい。

 それもそうよね。

 私は好き嫌いも激しくて、あれが嫌これが嫌って何度もお皿を下げさせて新しいのを持ってこさせていたもの。

 それで私の周りに使用人は近寄らなくなって、私専属の侍女のシアラだけが私の我儘に耐えていたのよね。



「シアラ……」

「はい、いかがなさいましたか? お茶をお淹れいたしますか?」

「ううん、何でもないわ。大丈夫」



 謝ろうかとも思ったけれど、友達ならともかく、使用人にいきなり「今までごめんね」なんて言う必要はないわよね。

 これからあまり我儘を言わないようにすればいいわ。

 そもそも今でも変に思われているんだもの。



「シアラ、今日一日の私の予定は?」

「は、はい。本日は十四時よりカルリージ伯爵邸にて催されるお茶会に出席予定でございます」

「……それだけ?」

「はい?」

「いえ、いいわ。うん、そうよね」



 あまりの予定のなさに驚いたけれど、私はまだ十二歳だものね。

 晩餐会や舞踏会に招待されるわけもないんだわ。

 それにいつもお昼まで寝ていたから、午前中は予定も入れていないのよ。



「……ねえ、シアラ」

「はい、いかがなさいましたか?」

「明日からは午前中に……語学や計算の勉強をしたいから、十時くらいから先生に来てもらえるよう手配してくれるかしら?」

「べ、勉強でございますか?」

「ええ、そうよ。ほら、私も殿下と婚約したし、今までのように嫌いじゃすまされないでしょう? 学園に入学してから恥もかかないようにしないと。だから一通り……魔術の先生にも来てもらえるようにして?」

「かしこまりました!」



 昨日までの私は勉強嫌いだったから、シアラが驚くのも当然よね。

 本当は今も嫌いだけど、勉強ができなくて陰で笑われるのはもうたくさん。

 夢の中の私は気付いていなかったけど、蝶子が笑われていたもの。


 似たようなものよね。

 そう、今から努力をしておかないと。

 来月から私は学園に入学するのだから。




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― 新着の感想 ―
[一言] 蝶子はファラーラを感じても全く何も思わなかったのに ファラーラはいきなり客観的に見れて即座に実践してるのは違和感がありました。 蝶子もどん底まで落ちる経験をして ファラーラの物語を思い出すく…
[一言] 客観的に自分を見られるようになった切っ掛けが弱い気がしますねぇ。 蝶子の振る舞いを他人のものとして見たから…ですかね?
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