勉強会1
「あれ? ひょっとしてみんなで勉強会?」
「きゃっ、あ、え、い、はい!」
「ププ、プローディ先輩! お、王太子殿下まで!」
ええ?
何で教室に入ってくるの?
リベリオ様がご一緒だったから、殿下はそのあとについてきたって感じではあるけれど。
せっかくの女子会が――そう、これは女子会なのよ。
男子が乱入すると、残念なことになるじゃない。
なんて顔には出さず、立ち上がって制服のスカートを摘まんで二人に軽く膝を折る。
「ごきげんよう、殿下。リベリオ様」
私が挨拶すると、信じられないといった様子でぼうっとしていた三人も慌てて立ち上がって挨拶をした。
教室内も突然の王太子殿下他おまけの登場で騒然としているわ。
ああ、せっかくの和やかな勉強会が……。
しかも殿下はにこやかに微笑んでいらっしゃるけれど、内心では「面倒くさい」って見え隠れしていますよ。
それならなぜリベリオ様を止めない。
リベリオ様はこうなることをわかっていて、私たちにちょっかいをかけにきたことが丸わかりなんですけど。
隠す気もありませんね。
あら、不思議。
どうして私はこのお二人のお気持ちが手に取るようにわかるのかしら。
以前はまったくお気持ちも空気も読めなかったのに。
はあ。迷惑。すごく迷惑。
せっかく初めての勉強会。
はじめて自主的に集まってくれた女の子たち。
それが王太子殿下とリベリオ様の登場で台無しだわ。
何よ、あなたたちなんてね、身分とお金を取ったら顔しか残らないんだから。
あ、確か成績も一、二を争っているって聞いたわ。
ということは、残るものいっぱいあるんじゃない。
腹が立つわね。
「ごめんね、勉強会の邪魔をして。だけどエヴェラルドが愛しの婚約者が何をしているのか心配みたいでね」
「おい」
「まあ……」
リベリオ様、冗談はその神の御業かっていうほどの整ったお顔だけにしてください。
あと、殿下は本気で「おい」って突っ込みましたよね?
ずいぶんドスのきいた低い声でいらっしゃいましたよね?
ミーラ様はうっとりして感嘆の声を漏らしているけど、今の全部冗談ですから。
リベリオ様の悪趣味な冗談。
だけどそれをわかっているのは私と殿下だけみたい。
ちらりと殿下と目が合って、意見が一致したことを理解したわ。――こいつを湖に沈めてしまおう、って。
いやだわ、こんなことで変な連帯感が生まれるなんて。
どうせなら恋が生まれればいいのに。
そうよね。
一番手っ取り早いのは出家するより国外逃亡するより、私が殿下に恋をすればいいのよ。
恋して愛が生まれれば、あれだってできるはずなのよ。
でもねえ、恋かあ……。
以前の私にも蝶子にも、とんと縁がなかったわよね。
そもそも蝶子は少女漫画が大好きだったくせに、見栄とプライドを優先させてろくでもない男に引っかかったのよ。
だから大学時代の彼氏もK学で、将来のナントカ会代表になるだろうって言われてたSNS映えする相手を選んだのよね。
二か月で別れたけれど。
婚約者だったあの彼だって、初めて会ったときにまずチェックしたのは時計、靴、ちらりと見えるベルト。
時計と靴はよく言われるけれど、ベルトは意外と盲点なのよね。
あ、やっぱり恋に落ちていないことがよくわかったわ。
まず外見(服装)から入って、次に内面(血筋)を知ってから、付き合うことにしたんだもの。
顔と性格は二の次だったわね。
そもそも顔なんて身ぎれいにして自信を持てば、それなりにかっこよく見えるものなのよ。
みんな雰囲気に騙されすぎ。
いえ、蝶子のことはいいのよ。
問題は私で、今目の前に婚約者がいるんだから。
どうにかため息を呑み込んで殿下を見れば、またまたばっちり目が合ってしまった。
本物だわ。本物の美少年(将来のイケメン)がここにいるわ。
外見(制服だけど)も内面も顔も完璧な本物の王子様がここにいる!
しかも私は婚約者!
さあ、どうする!?




