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王宮2

 

「本日はお招きいただき、ありがとうございます。こうしてお出迎えまでしていただけるなど、光栄でございます」

「ようこそ、ファラーラ。出迎えどころか、本当なら屋敷まで迎えにいきたかったんだけど、課題を先に終わらせたくてね」

「嬉しいお言葉をありがとうございます。それで、課題は終わられたのですか?」

「どうにかね」



 すごいわ。

 休日は三日あるのに、初日に課題を終わらせられるなんて。

 やっぱり殿下は真面目でいらっしゃるのね。


 さり気なく腕を差し出されたので手を添えれば、殿下はにっこりされた。

 ああ、美少年の微笑みが私に向けられている。

 これって、なんて贅沢。



「やあ、ファラーラ嬢。今日はエヴェラルドに誘われて?」

「……はい、リベリオ様。こんにちは。リベリオ様も遊びにいらしたのですか?」

「そうなんだ。課題も終わったし、エヴェラルドと遠乗りでもしようかと思ったが、ファラーラ嬢と約束していたのか。もし邪魔でなければ、私も一緒していいかな?」



 普通はどう考えてもお邪魔虫よね。

 でも空飛ぶお爺ちゃん見学にご一緒するために殿下がお約束されていたのかしら。

 私は知らなかったんですけど。


 べ、別にがっかりしているわけではないのよ。

 ただそれならそうと知らせてくださればよかったのに。

 そう思ってちらりと見ると、殿下は笑顔でいらっしゃった。


 あら? この笑顔は以前よく見たわ。

 そうそう。私のことを迷惑だと思っていらっしゃっただろうときの。

 久しぶりに見たわね。


 ん? ということは、今の殿下は迷惑に思っていらっしゃるということ?

 だけど私でも殿下のお心がわかるんだもの。

 リベリオ様も当然わかっていらっしゃるわよね?


 ほら、やっぱり。

 リベリオ様の笑顔がとても挑戦的に見えるわ。

 この笑顔も以前よく見たのよね。

 私が殿下にべったり引っ付くと、何かと理由をつけて引き離そうとされていたときのもの。


 ん? ということは、今のリベリオ様は邪魔をなさろうとしているってこと?

 お二人で空飛ぶお爺ちゃん見学の約束をされていたわけでなく?


 そうよね。

 リベリオ様なら王宮に出入り自由だし、お爺ちゃんの研究室へふらっと見学にいらっしゃっても不自然ではないもの。

 だからわざわざ今、一緒に見学しなくてもいいってことで。


 ま、まさかこれは!

 私のために争わないで! ってやつ?

 それも仕方ないわ。リベリオ様は私のことが好きなんですもの。


 これから私の奪い合いが始まるのかしら。

 腕をそれぞれ摑まれて引っ張られて、私が痛みに涙するとエヴィ殿下が慌てて離してくれるのね。

 それで勢い余って私は「あ~れ~」って、くるくる回るのよ。

 これぞ大岡裁きってやつではなかったかしら。

 愛を確かめ合う的な?


 さすが、私。ファラーラ・ファッジンね。

 おほほほ!

 って、ちょっと待って。

 愛は確かめなくていいのよ。必要ないんだから。



「リベリオ、今日は――」

「せっかくですもの。三人のほうが楽しいですわよね?」

「……ファラーラがそう言うなら」

「じゃ、決まりだな!」



 何だか殿下ががっかりしたように見えるけれど、ごめんなさい。

 私、人の好意は全面的に受け取るタイプですから。

 だって、気持ちいいじゃない。

 もちろん〝驕れる者久しからず〟は身に染みてわかっているから、ほどほどにしないとね。


 でも殿下の好意は私が婚約者だからで、リベリオ様は私が物珍しいからよ。

 要するにこれは縄張り争いのようなものだと思うわ。

 それでも殿下がリベリオ様相手に縄張りを主張されるようになったのは進歩じゃないかしら。

 これも〝狡い大人になろう〟作戦が功を奏しているのね。


 まだまだ子供な私たちは、これからたくさんの経験や出会いがあって、心変わりするのも当然あるわけで。

 今、私がたとえ殿下を好きになっても、将来的には別に好きな人ができるかもしれない。

 まあ、私の悠々自適生活に男性は邪魔だから、あくまでも仮定だけど。

 殿下だってリベリオ様だって、きっと他に好きな人ができるに決まっているわ。


 なぜなら私、性格が悪いですから!

 いつか化けの皮がはがれたときのために、逃げ道はしっかり確保しておかないと。

 どこかの狸のように殺されてしまっては大変。カチカチ。



「殿下、今日は私のまだ知らない場所――王宮を案内してくださるんですよね?」

「あ、うん。それではまず――」

「まあ、エヴェラルド様、リベリオも、ここでお会いするなんて偶然ね」

「サラ……」



 出たな、女狐サラ・トルヴィーニ!

 偶然でないことにリベリオ様の次期生徒会長の座を賭けてもいいわ。

 そして私のことは当然無視よね。


 だけどほら、私は目に入らなくても殿下の迷惑そうな表情は見えるでしょう?

 しかも今ならリベリオ様の呆れ顔までついているわ。

 ほんの数か月まえと立場が逆転したわね。

 この勝負(が何なのか謎だけど)、私の勝ちよ!


 ただ、勝負は水物。時の運。

 いつまた逆転されるかわからないから、早々に戦線離脱するべきね。

 私、勝ち逃げ主義ですから。




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― 新着の感想 ―
[一言] 勝ち逃げしようとして回り込まれる未来しか見えないです(笑)
[一言] 悪役キター!! さぁ王子!どうすんだ!! ちゃんとファラ様守ってよ?リベリオも!!
[良い点] 200話❣️おめでとうございます❗️ これからも伸び伸びと書いてくださいませ♪♪ 日々の癒しです♪ うん!逃げ勝ちしようぜ。 2人の厨二病男子扱うにしても好意があるからまだ良いけど、3…
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