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休日1

 

 どうにか学生生活最初の四日が終わり、疲れ切った私は学生の休日らしく朝寝坊をした。

 お布団最高。

 このままお昼まで寝てしまおうかな。

 それとも一日中ゴロゴロしていようかな。


 ふかふかお布団の中でうとうとしていたら、シアラが申し訳なさそうに寝室に入ってきた。

 シアラが私の睡眠の邪魔をするなんてどういうこと?

 罰として今日の夕飯は抜きって家政婦に言っておかないと。


 というのは、嘘です。ごめんなさい。

 うっかりしていると傲慢ファラーラが顔を出すから気をつけないとダメね。

 そして謙虚なファラーラがお布団から顔を出しますよ。



「シアラ、どうしたの?」

「せっかくのお休みですのに、申し訳ございません。実は先ほど知らせが参りまして、王太子殿下が午後にご訪問なさりたいとおっしゃっているそうです」

「は? どこに?」

「ファラーラ様にお会いしたいと……」

「はあああ!?」

「申し訳ございません! すみません!」

「あ、違うの。シアラが謝る必要はないのよ。シアラのせいではないんだから。ちょっと驚いただけだから」



 ちょっとじゃない。かなりびっくりしすぎて、勢いよく声が出たからシアラを怯えさせてしまったわ。

 今までの私、たった十二歳でシアラにどんなことをしていたの。

 いえ、今の問題はそこじゃないわ。

 殿下が私を訪問したいって言っていることよ。


 自慢じゃないけれど、以前の殿下は婚約していた五年の間、一度も私を訪ねてきてくれたことなんてなかったんだから。

 本当に自慢じゃないわね。


 だけどそれには理由があるわ!

 なぜなら私が常に殿下を訪ねて、付きまとっていたから!

 ええ、自慢じゃないわね。


 それにしたって、どうして急に会おうと思ったのかしら。

 学園でも私がいっさい殿下に会いに行かないから?

 ううん。それはないわね。

 まだ学園に入学してたったの四日だもの。

 おかしいと思うには早すぎるわ。


 う~ん。とにかく理由を知るには会うしかないわね。

 まあ、王太子殿下に会いたいと言われて、断ることなんてできるわけもないんだけれど。



「わかったわ、シアラ。それじゃあ、起きるから……殿下の使者はどうしているの?」

「お、奥様が快諾なされたので、使者の方はお戻りになりました」

「選択肢はなかったわけね……」



 要するにシアラは私を起こして支度をさせろと、お母様に言われてきたのね。

 午後の訪問ということは、お茶の時間だろうから、今からお風呂に入って髪を乾かしながら、朝食兼昼食を食べて、それから着替えってところかしら。

 今日はどんなドレスを着ようかしら……。



「シアラ、お母様はドレスについて何かおっしゃっていらした?」

「いいえ、特には何も」

「そう……それじゃあ、どれがいいかしら?」

「……ファラーラ様は水色がよくお似合いですので、三日前に届いた水色のドレスはいかがでしょうか?」

「そうね。では、そうするわ」


 どんなドレスがあるか、私よりシアラのほうが詳しいから訊いたほうが早いのよね。

 シアラが提案したドレスは私が何度も同じ水色のドレスばかり着ているから、お母様が新しく作らせたもの。

 デザインは似せているけれど、生地が違うから別のものだってわかるのよね。


 私はお気に入りに似たドレスを着られて、お母様は殿下を前に私に新しいドレスを着せることができて二人とも満足。

 シアラのセンスは確かだし、気遣いもばっちりだし、髪の毛を結う腕も確かだし、魔法も使えて、侍女として申し分ない。

 そんな貴重な存在なのに、今までの私は意地悪してばかりだったんだから、どれだけ我儘だったかがよくわかるわ。



「シアラ、いつもありがとう」

「そ、そのような、もったいないお言葉……」



 支度をしてくれているシアラに改めてお礼を言ったら、涙ぐまれてしまった。

 そうよね。未だに私に怯えているところがあるくらいだもの。

 だけどいつか、友達は無理でももう少し心を許し合える仲になれたらいいな。

 そしたらきっと、あの悪夢のような私にならないでいられるから。


 さてと。

 では、殿下が何をしに来たのか確かめに行きましょうか!






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― 新着の感想 ―
[一言] よくありがちな改心して善人になるわけでもなく、蝶子を通して客観的に見たりすこーし反省したりして、根本的なところはそこまで変わってないのが面白いです。 やや改善されたファラーラ様は人間的に面白…
[良い点] 面白い。 [気になる点] 文章が少なくて悲しい。 [一言] 悪役令嬢系は何度見ても飽きないし面白い。
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