制服2
「おはようございます、ファラーラ様」
「……おはようございます、ミーラ様、レジーナ様」
登校してから何か違和感を覚えていたけれど、その正体が今わかったわ。
今日は制服組が多いのよ。
いいえ、正確には制服を着た女生徒が多いと言うべきかしら。
だってミーラ様とレジーナ様も制服なんだもの。
「私たち、ファラーラ様とお揃いにさせていただきたくて制服を着てみたんです。どうですか?」
「……とても学生らしくて可愛らしいわ」
この年頃って何でもお揃いにしたがるのよね。
あの夢のせいで心が荒んでいたからちょっと和んだわ。
「それでは、これで私たちはファラーラ様公認ですね!」
「はい?」
「みんなファラーラ様が制服をお召しになっていらっしゃるからって、さっそく真似しているんだもの」
「ねえ? ずうずうしいわ」
「だ、だけど、公認も何も、これは学園の制服よ?」
「まあ、ファラーラ様ってばご謙遜を。昨日、ファラーラ様がお召しになってらしたから、みんな今日は制服を着ているのですわ」
さすが、私。
ファラーラ・ファッジンはファッションリーダーでもあるのね。
おほほほほ!
ではなくて、これはただの制服だから。
公認とかどうとか、そういうのは面倒くさいわ。
「ミーラ様、レジーナ様、この制服が着用できるのはたったの三年間よ。ドレスは卒業してからいくらでも着ることができるのだから、きっとみんなもそのことに気付いたのよ。この三年間、学生であることを楽しもうって」
「さすがファラーラ様だわ。なんて素敵なお考えかしら」
「そうよね。学生時代なんてたった三年だもの。一般の子たちだけでなく、私たちも制服を楽しめばいいんだわ」
ミーラ様とレジーナ様が納得してくれたと思ったら、クラスの女子もわっと沸いた。
まさか今の話、聞いていたの?
ちょっと離れたところにいるエルダも嬉しそうに微笑んでいるわ。
私、苦し紛れにいいこと言った?
「さあ、もうすぐ授業が始まるわ。席について、勉学に励みましょう?」
「はい!」
いえ、勉強は好きではないけれど、大人になってわかるのよね。
勉強だけ頑張っていれば褒められるあの輝かしい時代。
鐘が鳴る前にみんなが席に着いて、エルダも私の隣に座った。
それからそっと身を乗り出してくる。
「ありがとう、ファラ」
「何のこと?」
「ファラが制服を着てきてくれて、それが広まって今日は貴族の方たちの多くも制服を着ているわ。それにさっきの言葉。きっともっと制服を着る方が増えると思うの」
「そう、なのかしらね……」
「もう、ファラってば。自分がどれだけ影響力があるかわかっているの? ファラのおかげで昨日のようにもう『制服組』って馬鹿にされなくなるわ。ありがとう」
「……どういたしまして」
まったくそんなつもりはなかったのだけれど、エルダはいいように取ってくれたみたい。
これで〝ファラーラ・ファッジンいい人作戦〟第一段階成功じゃない?
棚からぼたもち的ではあるけれど、結果良ければすべて良しね。
だけど私にはわかるわ。
クラスを見回して制服を着ている子たちの顔ぶれを見ればわかる。
ミーラ様とレジーナ様はそうではないようだけれど、他の子たちは毎日違うドレスを着るのが大変なのよ。
それでも『ドレス組』の意地として、違うドレスは必須なわけで。
悪夢の中でも私はドレスの子でも馬鹿にしていたもの。
少しアレンジしただけで、同じドレスを着ている子のことをね。
というか、むしろそれをチェックしていた私が怖いわ。
どんなファッションチェックよ。
しかもそれをみんなの前で指摘していたから、私の周囲にはあまり女の子が集まらなくなって……。
自業自得とはいえ、涙が出そう。
まだ私は十二歳。
だけどみんなの意見を左右できるだけの力がある。
これからも発言には気をつけていかないとダメね。




