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試行錯誤4

 

「え?」

「あ?」

「嘘だろ?」

「浮いてる!」


 まさか本当にこんなに早く実現するなんて!

 さすが私! 


「は? ――っうわ!」

「先生!?」

「ブルーノ!?」



 フェスタ先生が本当に浮いていることに驚いてみんなが声を上げたからか、先生は驚いて転んでしまった。

 どうやら自分が浮いていることに気がつかなかったみたい。

 それで気付いた途端、お約束のように転んでしまったのね。


 だけど浮いたといってもほんの少しだから、バランスさえ崩さなければ転ぶほどではなかったはず。

 お兄様が慌てて助け起こそうとしたけれど、先生はなかなか起き上がらなくて殿下もリベリオ様も駆け寄った。


 まさかどこか怪我をしてしまったの?

 そう心配したのに、先生はいきなり笑い始めた。

 まずいわ。頭の打ち所が悪かったのね。


 それなのにお兄様まで治癒しようともせずに笑いだして、殿下もリベリオ様も堪えきれないように噴き出した。

 え? 何がおかしいの?

 私には理解できない面白要素があったの?



「とりあえず、次は私がやってみるよ」

「ああ、お前の言っていた通りにイメージをしてみたのがよかったみたいだ」

「わかった」



 え? え?

 今度はお兄様が箒を手に持って同じようにポーズ。

 フェスタ先生はご自分で起き上がられて、お兄様を見守る。

 殿下もリベリオ様も笑顔のままお兄様を見ていて、何て言うか……って、浮いたわ!



「お兄様、浮いています!」

「本当だ!」

「さすがチェーリオ殿ですね!」

「マジか……」



 やっぱりほんの少しだけれど、お兄様の足は――体は床から浮いたわ!

 殿下もリベリオ様も興奮したお顔でいらっしゃるのに、フェスタ先生だけ信じられないってお顔なのはたぶん実際に目にしたからでしょうね。

 ご自分が浮いたときよりも、ある意味実感があるのかも。


 ふふふん。やっぱりできると思ったのよね。

 さあ、どうぞ発案した私を褒めたたえていいのよ。

 フェスタ先生なんて最後まで信じていなかったんだから。



「今度は私が試してみてもいいでしょうか?」

「そうだな。これくらいなら危険はないようだし、やってみるといい」

「ありがとうございます」

「では次は僕も試したいです!」



 ちょっと、ちょっと。

 私のことは無視ですか。そうですか。

 だけどまあ、リベリオ様が試したくなる気持ちもわかるから許してあげるわ。

 いつもの大人ぶった態度が消えて、子供みたいね。

 殿下も待ちきれないかのようにうずうずしているみたい。


 あの、私もいるんですからね。

 私だって皆様ほど魔力はないけれど、上手くいけると思うのよ。

 だってイメージなら私が一番できるもの。


 順番待ちをしながら、リベリオ様が宙に浮くのを見守る。

 まさかのフェスタ先生よりもお兄様よりも高く浮いたことで、みんな盛り上がる。

 体重が軽いからか、成長期の伸びしろがあるからか、なんて話しているけれど、間違いなく中二病だからだわ。


 次は殿下の番ね。

 殿下が箒を持って集中する間、三人は箒ではなくやはりボードにするべきだとかどうとか話し合っているけれど失礼よ。

 待ちきれなくても邪魔をするべきではないわ。

 だから私はちゃんと見守りますからね。

 って、ああ!



「殿下、すごいです!」

「おお! 殿下も!」

「やったな、エヴェラルド」



 みんなの中では一番低かったけれど、それでもちゃんと浮いていたわ。

 無事に着地された殿下は私に向けてドヤ顔をされたけれど、可愛いから許せる。

 うんうん。やりましたね、殿下。


 さあ、いよいよ私の番ね。

 私は皆様とは違うんです。なぜなら箒の扱い方から違いますからね。

 それをしかと見せつけてあげるわ!


 胸を張って箒を渡されることを待ったのに、まだなの?

 箒はいつの間にかフェスタ先生がお持ちになっていて、お兄様が柄の部分を指さして何だか難しいことをおっしゃっているわ。

 フェスタ先生、先ほどまでの冷ややかな態度はどこへいったのですか?


 殿下とリベリオ様も頷きつつ、キャッキャウフフしてる。

 いえ、こういう場合はワイワイガヤガヤ?


 何なの、この疎外感。

 小さくて視界に入らないからって、私の存在を忘れていない?

 ちょっと、男子!



「フェスタ先生! 箒を貸してください!」

「え?」

「ファラーラ?」

「皆様、箒での飛び方が間違っていますから。私がお手本を見せてさしあげますわ」

「いや、しかし……」



 なぜそこで皆様がためらうのか意味がわからないわ。

 安全は確認できたのだから、大丈夫よ。

 フェスタ先生がしぶしぶ箒を渡してくださったけれど、これは本来私のものですからね。



「ファラーラ!」

「ファッジン君、それはさすがに……」

「ファラーラ、いくら何でもはしたないぞ」

「ですが、これが箒での正しい飛び方なんです」



 私が箒に跨ったら、殿下たちは驚かれ、フェスタ先生は呆れられたようだった。

 慣れたら横鞍のように座れるかもしれないけれど、それはさすがにまだ怖いもの。

 そもそも箒を持っただけだなんて、自分の体重を腕で支えるようなものでしょう?

 か弱い私にできるわけがないわ。



「まあ、ご覧になっていてください」



 イメージはばっちりよ。

 蝶子の世界で見た映画やアニメでは箒に乗ってぴゅうっと空を飛んでいたんだから。

 ぴゅうっとね。ぴゅうっと……。



「……少し浮きましたか?」

「いや、まったく」



 フェスタ先生、そんな哀れんだ目で見なくてもいいのに。

 いきなりぴゅうっと飛ぶイメージは高度すぎたんだわ。

 まずはふわっと浮くイメージね。

 ふわっとね。ふわっと……。



「……少し浮きましたか?」

「ファラーラ、また次回頑張ろうか」



 お兄様、そんな悲しそうな目で見ないでください。

 いいわ。今日はこれくらいで勘弁してあげる。

 きっとこの箒は男性用だったのね。


 箒をお兄様に預けて、こほんと一つ咳払い。

 殿下もリベリオ様もそんな気の毒そうな目で見ないでください。

 私は気にしておりませんから。

 今日はちょっと調子が悪かっただけなのよ。



「それでは『魔法ラブ』初の活動はこれで終了にしましょうか」

「勝手に発足させるなよ……」



 フェスタ先生、十分に楽しんでいらしたのに苦情は受け付けません。

 殿下とリベリオ様は残念そうなお顔をなさらないでください。

 そろそろお暇するお時間です。


 そしてお兄様は解毒剤の研究を引き続き頑張ってくださいね。

 フェスタ先生とリベリオ様は明日から『魔法ラブ』を始動させるためにお忙しくなりますよ。

 私はあとで――帰宅したら、念のために箒を持っただけの状態で試してみましょうっと。




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― 新着の感想 ―
[良い点] みんな飛べたのにファラだけwww 他のみんなは優秀だもんね。いつか本当の飛び方で飛べたらいいね! 殿下のドヤ顔ありがとうございます!
[良い点] ファラーラきっと想像が違ってたんだよ〜 ぴゅーじゃなくてブワーなんじゃ…必死なフォロー 予習が足りなかった? 何気に私がファラーラ立ち位置なら泣く(T . T) 中1ぐらいなら、悔しくて…
[良い点] ファラ以外空中浮遊おめでとう [気になる点] ファラは魔力量多いと書いてありましたが 未来を思い出して魔力が無くなったとかって展開じゃないんですよね? 先生の表情を思い出したとか、意外と…
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