表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/253

質問2

 

「お嬢様、お噂通り本当にお元気そうですね」

「なぜがっかりしたように言うの?」

「まさかそんな、安堵したのですよ。ただ少し、少々、多少、かなり疲れておりまして、ご不快な思いをさせてしまったのなら申し訳ございません」



 確かに少し疲れているようね。

 うちわ制作を急かしたのがいけなかったのかも。

 だけどせっかく生徒会メンバーのうちわを作っても旬を過ぎてしまっては意味がないものね。

 原価と(ジェネジオの)労力以上の売り上げを出すためには、多少の無理は(ジェネジオが)しないと。



「別に不快に思ったわけではないわ。だけどそんなに疲れているのなら元気いっぱいになる栄養飲料を飲めば少しは楽になるんじゃない?」

「栄養飲料?」

「ええ、色々な元気になる薬草を配合した徹夜を三日くらいしても大丈夫な感じの」

「お嬢様、それはもはや毒です。人間は疲れと眠気によって肉体を休めるようにできているのです。それを無視してしまえば肉体は壊れてしまいますよ」



 そうなの?

 蝶子の世界ではみんな色々と飲んでいたのに。

 ひょっとして似ているようで、体の構造が違うのかも。

 だって蝶子たちは魔法を使えなかったものね。



「ではそういうお手軽栄養飲料を開発して売り出すことはやめたほうがいいのね」

「……誰が開発するのかも考えると、やめておいて間違いないですね」

「そうするわ」



 不労所得の新しい案を思いついたと思ったけれど残念ね。

 ジェネジオは私が許可をしたソファに座ってもどこか落ち着かない様子だわ。

 きっと仕事が忙しくて疲れているのね、気の毒に。



「……お嬢様、このようなことを伺ってよいのか迷いましたが……ご質問させていただいてよろしいでしょうか?」



 いい加減にその前置きはやめてくれないかしら。

 ここでダメって言ったら、我慢するの?

 だけど私が我慢できないから無理ね。



「かまわないわよ。何かしら?」

「ひょっとしてお嬢様は……悪魔か何かを召喚なさるおつもりですか?」

「しないわよ」

「それでは逆に、悪魔祓いか何かをされていらっしゃるとか?」

「していないわよ」



 何なのこの質問。

 私の何がそんなに悪魔を連想させるの?

 以前はともかく、今はこんなに清く正しく美しくしているのに。



「ちょっと、ジェネジオ! あなたやっぱり失礼よ! ファラーラ様のいったい何を見れば悪魔だなんて言葉が出てくるの!? 天使そのものでしょう!?」

「いや、この部屋を見れば出てこないか? 壁面や家具に貼られたあの奇妙な古代文字か何かが怪しすぎるだろ?」

「ファラーラ様が描かれた素晴らしい絵に対して何を言うの!」



 ええ? じゃなくて。

 シアラには絵に見えていたのね。

 それならジェネジオのほうがまだ文字と認識しただけ見る目があるのかしら。

 さすが国一番の商会のジェネジオ・テノンね。


 と、感心している場合じゃないわ。

 そんなに怪しいかしら。あの蝶子へのメッセージ。

 蝶子がもし私の夢をまた見ることができたなら、あれらの貼り紙を見て気付いてくれることを期待しているんだけど。

 ただ蝶子を通してあの世界の文字を見ていただけだから、いざ書くとなったら上手くできなくて歪んでしまったのよね。

 色々な文字がありすぎるのよ、あの世界は。


 ひとまず〝カタカナ〟で書いたけれど、蝶子はちゃんと読んでくれるかしら。

『フリン ダメ ゼッタイ』『セキトウ クズオトコ』『セキトウ クビ』

 私を通してこの世界の夢を見るならと、私の目につくところに貼ったのに。

 だって、いつ夢を見るかわからないものね。


 あら? でも待って。

 私が蝶子を通してあの世界を夢見ているときは、あの世界の文字が読めるんだから、逆もありじゃない?

 わざわざ苦労して〝カタカナ〟を書かなくても、普通に忠告を書いておけばよかったんだわ。



「失敗したわ……」

「そのようなことはございません! ファラーラ様の描かれたこれらの絵はその道の専門家も唸らせるに違いありません! ただちょっと前衛的なだけです!」

「……シアラ、ありがとう。だけどそれ、失敗だから全て剥がして処分してくれる?」

「そんな……。それでは、私がいただいてもよろしいでしょうか?」

「え、ええ。いいわよ」



 ジェネジオと不毛な討論を続けていたシアラは私の呟きを聞いて励まそうとしたみたい。

 だけど褒められていない気がするのはなぜかしら。

 まあ、別に絵ではないからいいけれど。


 それよりも、蝶子への忠告を書き直すならもっと有意義なものにしたいわね。

 というわけで、ジェネジオがいてちょうどよかったわ。



「ねえ、ジェネジオ。なぜ男の人はすぐに浮気をするの?」

「まさか殿下が浮気をなさったのですか?」

「いいえ。今のところはおそらく大丈夫よ」



 まったく。どうしてみんなすぐに殿下と結びつけるのかしら。

 やっぱり殿下も将来的には浮気するってことなのかも。

 その前に婚約を解消して、私は一人で楽しく暮らすべきね。

 ただ蝶子がこれ以上変な男性に引っかからないためには知っておかないといけないわ。



「さあ、ジェネジオ。教えてちょうだい」



 にっこり笑って促すと、ジェネジオは大きな大きなため息を吐いた。

 シアラの前で質問したことが不満なのかしら。

 だけどシアラも知っていたほうがいいんだから、ちょうどいいのよ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 蝶子よ気づけぇ! あんなに嫌いだったのに気付いたら応援してしまっている不思議w
[良い点] シアラ可愛い回ありがとうございますーー(>_<)♪ どんどんお気に入りキャラが増えていく……(笑) シアラちゃんとジェネジオくんのハッピーエンドも早く見たいなあー‼‼
[良い点] 男の人は、と言いますが、咲良も二股どころか…だったので、するやつはするんですよね。 蝶子がされまくってるからどうしても「男は…」ってなっちゃいますけど。 ジェネジオは、これでうちわでもう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ