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ダンジョンカード  作者: 喜右衛門
六章 出口へと続く道
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門番


 さて件のドラゴン、門番なのだが。

 まだこちらに気付いて居ないようだ。

 

 「どうしたものか」

 取り敢えず見付からない様に地面の起伏を使って隠れながらに近付いていく。

 凹み……丘の影……岩の影……静かに……見付からずに。


 一旦、委員長の事は棚上げだ。

 出来ればそのまま有耶無耶にしたい。


 「先制攻撃だろう?」

 やるのだろう?

 そうだろう?

 と、ウズウズを隠さない猫。

 尻尾がパタパタと動いている。


 「一応は声を掛けた方が……他人の家に入るわけだし」

 鎧君は真面目か?

 「挨拶くらいは……」


 「そんな話のわかる魔物も居るのか?」

 ランプちゃんに、一応の確認。


 「魔物ですか?」

 うーんと、唸り。

 「魔物……モンスター」

 そんなに難しいことか? 居ないなら居ないで良いのだが。

 「私も鎧さんも、モンスターですが……」

 うーん。


 「成る程……」

 自分達の事も含めて、それが当てはまるかがわからないのか。


 「一応は……声を掛けた方が」

 ランプちゃんの答え。


 「やっぱり黙っては……ねえ」

 鎧君はやっぱり真面目なのだな。

 後ろからバッサリは性に合わない?


 「魔物退治に騎士道精神を持ち出してどうする」

 猫はバッサリ派だな……委員長と同じ気質なのだろう。


 「うーん」

 「うーん」

 尻尾パタパタ。

 

 「三人の意見はわかった」

 委員長はまるで発言無しだ。

 何時もなら……は、もういいか。

 意見が無いなら、それも良し。

 「ここは多数決で……一声掛けよう」

 それが民主主義ってやつだ。

 

 民主主義は良い。

 説得する人数が、二人よりも一人の方が楽だ。

 それは反感も恨みも少ないって事だ。

 うん素晴らしい。


 「だが、ソッと静かに近付いてからだ」

 頷き。

 「遠くからだと失礼だしな」

 まともな意見だ。

 決して怖がっているわけでは無い。


 「わかったよ」

 猫も頷いた。 

 尻尾は動きを辞めて垂れ下がってはいるが、納得はしてくれたようだ。

 「だけど、声を掛けるのはリーダーの仕事だぞ」


 「うん?」

 誰がリーダーだ?


 「もうその件はいい」

 そう言って俺を指さす猫。

 

 「確かにそうだと思います」

 鎧君も俺を見ている。


 「多数決でもそうなります」

 ランプちゃん。


 「何でだよ!」


 「それが民主主義ってもんだ……諦めるんだな」

 猫が言い放った。


 最悪だな……その民主主義ってヤツは。

 弱者をいたぶる悪法じゃないか。 

 誰だ、考えたヤツは!

 責任者出てこいと、言いたい。

 

 せめてもの抵抗を一つ。

 「リーダーは……委員長……」

 だがそれは、言いかけて止めた。

 また火に油を注ぐような事にも成りかねん。

 「わかったよ……」

 諦めの溜め息を一つ。


 

 ここらが頃合いか?

 もう随分と近付いた。

 そして、ここから先に隠れるような所も見当たらない。

 「行くか……」

 自分に声を掛けた。


 「行けよ」

 猫が反応する。


 「挨拶はキチンとですよ」

 ランプちゃんも。

 

 「最初が感じですからね」

 鎧君も。


 何が何でも俺に行かせたいようだ。

 みんな、自分が行きたくないだけじゃないのか?

 そう愚痴っても始まらないのだろうな……。

 諦めて一歩を前に出す。


 「あのう……」

 ドラゴンと、目が合った。

 「済みませんが、中に通していただければと……」

 

 返事は無い。

 代わりに口を大きく開き、そこに火の玉を徐々に集め初めた。


 これは、見た事が有る。

 巨大亀の時と同じだ。

 たぶん……マズイやつだ。

 

 案の定と言うか……。

 ヤッパリと言うか……。

 ドラゴンは有無を言わさず、撃って来た。

 口から火の玉を真っ直ぐ俺に。


 頭を抱えて飛びすさる。

 命の危険は、スローモーションだ。

 ヤッパリ民主主義は駄目だ!

 それで決まった事が最良の答えというわけではない。

 その昔に爺さんが言ってた。

 「民意を持ち出す政治家と新聞には気を付けろ……それは世論操作の為の言葉だ!」

 その時は何を怒っていたのかは忘れたが……でも今、俺もその意見に賛同する。

 あ……いや……何処かの国に怒っていたのか?

 アレ?

 今はそんな事はどうでも良いのでは?

 この状況を回避しなければ。

 避けなければ! 全力で。

 どうでも良いことは考えるな!


 すんでの所で元の岩陰に飛び込んだ。

 火の玉は岩にぶち当たって爆散する。

 

 「撃ってきましたね」

 鎧君の感想。


 「亀の強化版ですね」

 ランプちゃんの解説。

 「炎じゃなくて火の玉でしたね」


 「ほらみろヤツも先制攻撃派だよ」

 猫が上から目線。


 「わかったから」

 はい、身に染みました。

 魔物はヤッパリ、モンスターです。

 「兎に角、応戦だ!」


 「じゃあ……俺からかな?」

 猫が煙に成る。

 

 「僕も行きます」

 鎧君が飛び出した。


 「二人共、大丈夫なのか? アイツの火の玉は結構強力そうだぞ?」

 声を掛けながらに、岩影からパチンコを撃つ。


 「大丈夫ですよ、鉄の鎧は火には強いですから」

 盾を前にガシャンガシャンと前進を開始した。


 その鎧君に向かって、二発目の火の玉。

 見事に命中。

 完全に火にくるまれて姿が消える。

 だが、スキップで前に飛び出し火は後方で爆散。

 

 「ヤッパリ大丈夫でした」

 たぶん笑っているのだろう、そんな感じの軽い返事だ。


 「よし! さっきの要領でもう一度いこう」

 

 二人の返事がこだました。


 

 だが、今回は苦戦していた。

 流石にさっきの様にはいかなかった。

 サイズの違いも有るだろう。

 形を見ても同じドラゴンでもこちらの方が格上か?

 そして、何より委員長が……。

 じっとして動かない。

 頼むよ委員長……機嫌直してくれよう。


 「おい! どうするんだよ」

 猫の叫びが悲鳴に近い。

 その猫、必死に背中にしがみついている。

 

 鎧君はドラゴンの突進を押し止めるので精一杯。

 それでも、押さえ込んでいるのだからたいしたモノだ。

 だが、サイズのせいでも有るのだろう、上半身の自由までは奪えていない。

 それは火の玉は自由に撃てるという事だ。


 俺は羽を射抜いて飛べなくしたはいいのだが、その先が駄目だった。

 うまい具合に口を開いてはくれない。

 開く時は火の玉を撃つときだけ。

 そこに爆竹を撃ち込んでも、火の玉と一緒に跳ばされてしまう。

 亀の時は火炎放射で飛ばすわけでは無かったのでなんとか成ったが今回は駄目だ。

 それを打破しようと火力を上げる為のロケット花火を持ち出すのだが。

 それも、避けながら、隠れながらに撃つにはタイミングも合わせられない。

 口の中に確実に当てないと爆発力が大きすぎて逆に危ない。

 

 今は膠着状態だがそれもいつまで持つのか。

 体力はドラゴンの方が上だろう。

 こちらには後、もう一手が足りて無い。

 「どうしたものか……」


 その俺の呻きに二匹のフクロウが答えた。

 「ホウ」

 「ホウ」

 俺の頭から飛び出し。

 委員長の頭からも飛び出した。

 そして、空中で交差するように羽と羽を合わせて、その反動で勢い良く回り始めた。

 高速回転。

 

 「合体攻撃のスキルか?」


 徐々に柔らかく溶けていき、混ざる様に合わさる。

 早い動きでそう見えるだけなのか? と、目を擦ったがどうも本当に溶けているらしい。

 そして、七色の光を発し……ポンと一匹の鳥に成った。

 

 巨大な……カラーヒヨコ。

 

 小学校の時。

 帰り道で怪しいおじさんが時々現れては売っていた、色とりどりのカラフルなヒヨコ。

 それが、目の前のドラゴンとほぼ同じ大きさで現れた。


 「フクロウの跡形もない……」

 姿形と大きさがまるで変わっている。

 

 「右側が……委員長さんのフクロウ1号ですね」

 ランプちゃんが目を細めて言った。


 なら……左側が俺のフクロウか?

 つまりは紛れも無くそれはフクロウだということか。

 どう見てもヒヨコにしか見えない。


 まあいい。

 問題はその強さだ。

 成りは大きいのだから強さも……期待出来るのか?

 見た目からか、どうしても疑問系に成ってしまうのは仕方無いことだろう。


 そのカラーヒヨコ。

 俺とドラゴンの間にドスンと地響きをあげながらに降り立った。

 目と目を合わせて睨み合う。

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