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ダンジョンカード  作者: 喜右衛門
 一章 突然の迷子
2/43

ここは何処? あなたは誰?


 「何処? って何よ」


 しゃがみ込んで額を擦っている委員長をそのままに、もう一度辺りを伺う。

 薄暗い中、目を凝らして覗き見る。

 土の地面に土の壁に土の天井、ソコはやはり、洞窟だった。

 「洞窟だ……」


 「なにがよ……」

 そう言い掛けた委員長も立ち上がり。

 「何処? ここ」

 首を振りつつ辺りを確認しながら。


 「暗くて良くはわかんないけど……洞窟っぽい」


 「何でよ!」


 もう、それはさっき俺がやった。

 今さらだと委員長を見ていると、それだけで少しは冷静になれた気がする。

 「もしかして……さっきの委員長の頭突きで、俺達は死んじゃった?」


 「そんな事……有るわけ無いじゃん」

 語尾は少し不安げだ。


 「今、流行りの異世界転生?」

 

 「まだそんなの流行っているの?」

 その手のラノベは委員長の趣味では無いらしい。


 「じゃあ……これは?」

 掌で辺りを指ししめす。

 

 キョロキョロと首を振り。

 その混乱した委員長が少し可愛く見えた。

 

 「何処よ!」


 ループしている。

 思わず笑ってしまった。

 それと同時に、俺の抱えている不安も笑い飛ばされた。

 この洞窟を受け入れたわけではない。

 完全に現実逃避だ。

 それもちゃんと理解出来る。

 そう、今は冷静なのだ。

 「とにかく、出口を探そう」

 

 「出口なんて……在るの?」


 今の一言には、新たに不安が襲う。

 「あ、在るだろう?」

 最後の方が疑問系に為っている。


 委員長が俺を見て。

 辺りを見て。

 「そうね、ここに居ても仕方無い様だし」

 そう言いながらに歩き出す。

 「探しましょう」

 洞窟の前後? もしくは左右? の片方を進む。


 「出口がわかるの?」

 あまりに自信満々に歩き出す委員長に着いていきながら。


 「わかるわけ無いじゃない」

 進行方向に指を立て。

 「勘よ!」

 

 

 



 委員長を先頭に二人はユックリと暗い中を進む。


 「真っ暗じゃなくて良かったね」

 そう委員長に、後ろから声を掛けた。


 「良かないわよ」

 

 「どうして? 真っ暗じゃ歩けないじゃない」


 「この明かり、辛うじて辺りが見えるわよね?」


 「うん」


 「それは……おかしくない?」

 立ち止まり、振り返り。

 「洞窟の中に光の光源に成るものは何処にも無いのによ」


 ん? と首を捻る。


 「本物の洞窟なんて、真っ暗の筈よ!」

 俺の顔前に指を立てて。

 「この不自然な明かりは変なのよ」


 言われて見れば……変か。

 ほんの少しの明かりだが、近付けば委員長の顔も見える。

 足元も、目を凝らせば見える。

 「本物じゃないって事?」


 「見た目は本物っぽいけど……怪しいって事よ」


 「やっぱり……死んじゃったのかな?」


 「死んでないわよ!」

 声を荒げて足音を響かせ歩き進む。

 その委員長の足下で「プギャ」と、小さな叫びが聞こえてきた。

 「あ! なんか踏んだ……柔らかい何か……」

 と、その場を飛び退いた。


 俺は、その場所を顔を近付けて覗き込む。

 一枚のカードがソコに落ちていた。

 「カードだ……」

 拾い上げて委員長に指し示す。

 「踏んだのはこれ?」


 ジッと、見て。

 「違う、もっと立体感が有って、柔らかくて、プチって感じで……」


 よくわからんが……カードしか見付けられない。

 踏んだのは別の何か? か。

 そのカードには、ランタンを抱えた……フェアリー? らしき絵が描いてある。

 それを、そのまま額に当てた。

 

 「なにしてんのよ」

 委員長が鼻で笑う。


 「カードは額に当てるんだろ?」

 あの変なオジサンも言っていたし、それを委員長もやったじゃないか。


 「そんな変なオマジナイみたい……な……事……」


 「信じて頭突きしたんじゃ無いのかよ」

 そう言いながら、委員長の態度がオカシイ事に気が付いた。

 「なに?」


 その委員長。

 俺の頭の上を指差している。

 「出た……」

  

 俺も、その指の先を辿り上を向く。

 ……。

 なんか……居た。


 身長が手のひらサイズで、背中にトンボの羽が着いている……小人。

 想像通りのフェアリーってヤツだ。

 それが、俺の頭上で羽ばたいて飛んでいる。

 その手には、ランタン。

 「何で?」


 「今、カードから出てきた」

 委員長が呟いた。

 「額に当てたカードから、煙みたいなのが出て来て、それが集まって形に成って……その子に成った」


 そのフェアリー、いそいそとランタンをいじっている。

 だが……明らかに不器用だ。

 なかなか火が着かない。

 片手でランタンを支えて、ガラスの筒の部分を持ち上げて、火を着けようとするのだが……着けようとすると、ガラスが落ちる。


 見かねて、小さなランタンを摘まんで支えてやることにした。

 フェアリーが小さくお辞儀をして、左手でガラスを持ち上げ、右手で火を突っ込む。

 良く見れば、その右手の人差し指の先に火が浮いている。

 まるで魔法の様に。

 そして、ボワッと明かりが広がる。

 そのランタンの取っ手の部分を両手で持ち、俺の頭上に翔び、頑張って静止している。


 「で……誰?」

 上を見上げて声を掛けた。


 キョロキョロと辺りを見渡すフェアリー。

 そして、ジッと委員長を見る。


 「イヤ、違うから」

 大袈裟に手を振り。

 「あなたの事を聞いてると思うよ」


 「私?」

 そう答えて自身を指差した。


 頷く俺と委員長。


 このフェアリーっぽいモノは喋れる様だ。

 自分で聞いたのだが、その事に少し驚いた。


 だが、そのフェアリーっぽいモノは小さな首を傾けて唸っている。

 何を考えているのか?


 「あなたの名前は?」

 委員長がそう訪ねるのだが。


 俺としては、何者かを聞きたい。

 種族? もしくは分類。

 フェアリーで良いのだろうか。


 「名前……って、なに?」

 ランタンを掲げてわからないと言う。


 「そう……無いのね」

 冷静な委員長の受け答え。

 「あなたを呼ぶときの記号みたいなモノよ」

 冷静じゃないな、イラついているのだな。

 「じゃ、これからはランプって呼ぶわよ」

 目を細めて睨み。

 「そう呼ばれたら自分の事だと思って返事をしてね」


 「……はい」

 威圧されたフェアリーっぽい……ランプちゃん?


 「で……ランプちゃんに質問」

 委員長が続けた。

 「ここは何処? あなたは何者? カードってなに?」

 続け様に聞くのだが、すべての答えに小首を傾げるだけのランプ。

 そんな様子に。

 「使えないわね」

 吐き捨てた。


 当たりが強い気がする。

 コレが噂に聞く女子特有のマウンティングってヤツか?

 って事は、このランプちゃんは女の子なのかな。

 そういえば、白いワンピースの様な服を着ている。


 「ランプちゃんは、得意な事は有る?」

 俺は、委員長の様に高圧的には為らない、だから優しく聞いてみた。


 そのランプちゃん、答える代わりに自分の持っているランタンを指差し頷いた。


 「つまりは明かりだけの子なのね」

 フンと鼻息を荒げる委員長。

 「あなたの名前……提灯持ちにすれば良かったかしらね」


 イヤイヤ、それは酷いと思うよ。

 別の意味も着いてくるし。

 と、見れば、ランプはわからないと言う顔のまま、しかし怒られているとは感じたのか俺の後ろに隠れようとする。


 それを見た委員長が声を荒げて。

 「あなたの仕事は明かりでしょ! もっと高くに飛んで照らしなさいよ」

 

 「大丈夫だから、怖くないから」

 

 「誰が怖いって?」

 キッと睨まれた。

 それに怯んだ俺とランプ。

 

 その態度に溜め息一つの委員長。

 「いいから……照らしてくれる?」

 

 俺も頷いて、ランプを即した。


 チラチラと委員長を気にしながらも、高くに上がるランプ。

 そして、辺りが明かりで見え始めた。


 ハッキリと見えても、ソコはやはり洞窟の中。

 想像していたそのまま。

 だが、少し想像と違うモノが見えた。

 前方の地面に所々に見える、色とりどりの握りこぶしサイズの柔らかそうなグミの様な物体……それが這うように移動している。


 「スライム?」

 それにしか見えないと、呻いてしまった。


 「私が踏んだのは……あれかしら」

 委員長も、目を細めている。


 「スライムです」

 ランプが普通に答えてくれた。


 「スライムって、知ってるんだ」

 その事の方に驚いてしまった。


 何を勘違いしのか、ランプが照れ笑い。


 別に……誉めたわけでも無いのだが。

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