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ダンジョンカード  作者: 喜右衛門
三章 不思議が日常
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魔女


 逃げ込んだそこは、今の俺達のサイズの廊下だった。

 その先に、下へと続く階段が見える。

 目的の地下だ。

 

 「委員長にはまだ出会えてはいないが……進むしかないか」


 「戻っても……探すよりも先に巨人に追い回されるだけだと思うぜ」

 猫も頷いていた。


 「取り敢えず、進むか」

 肩を竦めて。

 「委員長の事は後で考えよう」


 「それがいい」

 返事と共に歩き始めた。




 階段は比較的に短いものだった。

 あの一階からこのサイズでの事を考えるなら、地下室というよりも床下か? と、思われる。

 体感的には一階層下なのだが、地下室で良いのだろうか?


 そんな感じの扉に突き当たる。

 他に道も無い。

 ソッと開けて、覗き込む。

 

 壁に吊るされたランタンのみの明かりの窓の無い小さな部屋。

 その中央にはベッドが1つだけ、他は何もない。

 そして、その前には1人? 1体? のスケルトンが立っていた。

 こちらを見ている。

 首には白い蛇腹の首巻き、食堂の暖炉の上に飾られた絵の中の男と同じものの様だ。

 

 すわっと、パチンコを手に持ち直し。

 猫も鎧君も剣を構えた。


 しかし、そのスケルトンは溜め息と共に話始める。

 「いい加減に静かにしてくれんのか?」

 ベッドの前から動こうとはしない。


 まるで守っているようだと……良くみてみればソコには人が寝ていた。

 老婆だ。

 身動きの出来ない、寝たきりの様にも見える。

 生きているとかろうじて判別出来る、そんな感じだ。


 「さっきの娘といい……騒がしいのは勘弁してくれ」


 「さっきの娘?」

 委員長もここに辿り着いたのか!

 「今、何処に?」


 「もう居ない……私の渡したカードでここを去った」

 そう言って1枚のカードを差し出した。

 「君もここから出ていってくれ」


 チラリとスケルトンの後ろの老婆を見た。


 「私の孫娘はもう永くは無いだろう」

 そう答えて、ベットを覗く。

 「今はもう寝たきりで……意識もろくに無い」


 「しかし……」

 この世界の魔物のボスなのだろう?

 

 「私達は、君達には何もしていないではないか……配下のモノには、ただ君達をここに招待をするようには命じたが……」


 ああ……確かに、思い返せばそうかも知れない。

 近付いて来ただけっだような気もする。

 見掛ければ、逃げるか……一方的に攻撃をするかだった。


 「私は孫娘が最後の寿命をまっとうするのを見守りたいだけなのに」

 ランタンの揺れる炎に照らされて優しそうに。

 そして、骸骨に落ちる影が、どこかもの悲しそうな顔に見える。


 俺は、差し出されたそのカードを貰う事にした。

 魔物であっても肉親を……老婆であっても孫娘をと、その気持ちは胸に刺さる気がする。

 黙って、手だけを差し出した。

 謝る事は出来ない、魔物は倒すべきモノだと思う。

 他に掛ける声もない、同情はしても……正義は俺達の方だと思う。

 このカードの世界ではその筈だ。


 チラリと俺を見た骸骨……だが。

 カードを出す代わりに、大きな声を上げた。

 「ああああああぁ」

 

 その変化は俺にもわかった。

 老婆が薄く、煙に成り始めている。

 骸骨の叫びと、鳴き声とが混ざっての叫び……。

 

 そして、見た。

 今までピクリとも動かなかったその老婆が、手をほんの少しだけ動かしたのを。

 そして、それは骸骨も見たのだろう、その手をソッと握ってやった。

 最後の最後に、温かみと柔らかさが感じられたかどうかはわからない。

 その瞬間に命が終わったようだ。

 煙を掴む骸骨……。

 死んでいる骸骨が、最後まで生きようとした孫娘に泪の1つも流せないのはとても悔しいのだろう。

 最後はそんな叫びに聞こえた。


 

 

 そして……誰も居なくなった。

 骸骨もすぐに後を追うように煙に変わってしまった。

 老婆が寝ていたベッドには、そこに生きていたと言う証の様に1枚のカードが残されていた。

 

 そして、俺は終わりにすることにした。

 黙って、静かにカードを額に当てた。 

 

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