火事
林の中に逃げ込んではみたが。
俺達の逃げるスピードに追い付かない様だ。
その速度は極端に遅い。
しかし、結局は倒さなければ帰れない。
このまま逃げ回っていても一向に埒が明かない。
そして、なによりもあの巨体なのに体力が無限に有りそうな動き。
林の木を噛み砕き、体重で押し潰し、木々の隙間に甲羅をねじ込みなぎ倒す。
確かに遅いが、その進む速度はどんな障害でも変わることがない。
つまりは、俺達の体力が尽きたその時が終わりだという事だ。
「ヤバイよね?」
「ヤバイなんてもんじゃ無いわよ! 絶望的じゃない」
確かに、デカイし固いし……打つ手が無い。
イヤ、何かあるはずだ。
考えろ!
と、そこそこの距離を開けて観察をしようと構えたその時。
アスピドケロンの口が大きく開いた!
その口に火の玉が少しずつ大きくなる。
「あれって……撃つの? 吐くの?」
委員長が右往左往し始める。
そして、その疑問の答えは吐くだった。
辺りを燃やし尽くす勢いで火を吐き続ける。
林が炎に包まれた。
俺達は、委員長の予測のお陰か、辛うじて避ける事が出来たのだが。
火の周りが早く、もう逃げ場がない。
もう次の火炎放射攻撃には為す術がない。
アスピドケロンはその事がわかっているのか、余裕を見せながらに口を開いた。
火が溢れ出す。
「一か八か……最後の手段だ」
「何する気?」
「俺が走り出したら、皆は亀の横をすり抜けて池に潜れ!」
皆に頷き、自身に頷いた。
覚悟を決めた俺は、一目散に走り寄りその口の中に爆竹を残り全部、箱のままに放り込んだ。
そして、そのまま池に飛び込んだ。
皆が池の中に潜ったのは勿論確認してだ。
大爆発が連続して起きた。
亀はその体を陸に上げている。
水面下に伝わるものも無い。
だから衝撃は水に伝わらず、逆に和らげてくれた。
それでも、相当な衝撃が来たが。
気を失うまではいかない。
爆発が収まった頃合い。
息が限界でもあって、水面に顔を出した。
「やったわね!」
先に浮上していた委員長が俺に抱きついて来た。
見れば、アスピドケロンが煙に成りつつある。
「勝った……」
大きく息を飲み込み。
そして、吐いた。
アスピドケロンの残したカードを確認する。
やはり、出口だ。
「帰ろう」
「そうね……このままココに居ても、周りは火事だし、何処にも行けそうに無いわね」
頷き。
「帰りましょうか……」
少し……どころか随分と心残りが滲み出ていたが、そんなのは気にしない。
気付かない振りだ。
もう……疲れた。
いつもの駄菓子屋の前でへたり込む二人。
「今回のは、疲れたわね」
見れば、ぐったりとしている。
俺も限界だった。
「次は……」
1日2日は休みたい。
幸い明日は土曜日だし、ゆっくり寝たい。
と、かんがえていると。
「疲れたから」
委員長も同じ考えか。
「明日のお昼にしましょう」
! 違った。
どんだけ元気なんだ。
「イヤ……」
「明日はお弁当を造って来てあげるわ、嬉しいでしょ」
有無を言わせる気は無いらしい。
仕方無しにだが頷いた。




