ルート分岐―異邦人は孤独がお好き―
追放されるのがトレンドと聞いて。読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムは展開次第。
・デスゲームなし。
・俺tueee、チート能力。
・中二主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
翌朝、佳宏はイレーネに起こされて目覚めた。
ベッドで休んだ彼女を警護する分身を生み出そうとした佳宏の足元を、白く細長い小動物が駆ける。
その数、ざっと20。イレーネが休んでいるベッドのほか、ベッド脇の机や床に足を降ろして、佳宏とダナエを見つめている。
しゃがみ、じっとその顔を見る。自分を警戒しない彼らに対し、佳宏も敵意を抱かなかった。まるで自分の手や足を見ているようだ。
「……俺も一応、こっちの反応は見てるけど、お前らも日が沈むまで、イレーネを守ってくれない?」
佳宏が静かに話しかけると、小動物達は首を縦に振った。
「おぉ、マジで?言ってることわかんの?よろしく頼むよ」
イレーネが眠る使用人の部屋を後にする。主人夫婦と一緒に食事をとり、佳宏はダナエと共に街に出た。
「これからどうします?」
「聞き込みしてー、それからどこに就くか決めようか」
現在、佳宏が進めるルートは主に3つ。
オルバン王子と共に戦うルート、篝火の団と戦うルート、オークヒルに向かうルート。
前2つの敵手の王弟、西ダーナの貴族側に加わることもできようが、あまり発言力は得られないだろう。
「そんなこと考えてたんですか、私てっきり、気の向くままにぶらついてるだけかと思ってました」
「鈍くさいのは承知してるけど、目的ははっきりしてるよ」
気持ちよく遊んでいたいのだ。
その為には、大陸で何が起こっているか、どんな勢力がいるのか調べなければならないだろう。
あちこち面接して、より条件の良い職場を選ぶ。自分たちにとっての脅威を取り除く。それが佳宏の目的だ。
「ヒルダから黙って姿を消したのに、いまさら迎え入れてくれるとも思いませんが。理解してます?」
「わかるけど…ユリス教の総本山でしょ?宗教はイレーネと相性悪いから、しゃーない」
2人は旅籠や酒場を巡り、情報を集める。
ルービス戦役の趨勢は、王弟ゴードンの勝利で確定しそうだ。
オルバン王子は聖都ヒルダに留まっており、王妃エレーンは未だ抵抗を続ける王子派の誰かが匿っていると噂だ。
国境を超え、レゴマ公爵に保護を求めたのは間違いではなかったらしい。
(イレーネにも意見を聞くとして―…どこにしよう)
王子派に味方すれば、国盗りを特等席で眺められるかもしれない。
篝火の団に味方すれば、騎士結晶について深く迫れるだろう。3番目は後回しでもいいが、これらは時間制限付き。
分身を送れば同時に攻略できるが、遊びにそこまでエネルギーを注ぎ込む気はない。
食料などを買い足してから、佳宏とダナエは夜を待つ。イレーネが起きると、佳宏は意見を求めた。
「俺もそろそろ腰を据えてかかりたいなーって、思ってるわけですよ。あっちにフラフラ、こっちにフラフラしていると気が滅入ってくるし。敵、味方はっきりしてる方が張り合いが出るっつーの?」
「それ、すごいわかる。アタシはどっちでもいいが……王子さまのほうがいいかな?アンタのお友達は貧乏臭さが移りそうだ」
「私は篝火の団に就きたいですねぇ、東ダーナには縁がありませんし」
(え?そこで割れちゃう?)
「いっそ、私たちで旗揚げしては?」
「えー!?街の一つ二つは取れそうだけど、管理すんの面倒くさいよ」
「アタシらが治める必要がどこにあるンだよ?領主にやらせればいい」
「そいつの面倒見なきゃいけないでしょ?」
「アタシが暗示を掛ければいい。切れないようにすりゃ、裏切りの心配はないぜ?」
話が脱線してきた、矢面に立たされそうな気配を感じた佳宏は早めに切り上げる事にする。
「その計画は後でもできる、ミリアさんの方も、オルバンの方も、今しか首を突っ込めないからさ。先にそっちを片付けよう?」
佳宏はオルバン王子ルートを選択。
イレーネの意見に賛同した際、ダナエは目を見開いたまま深い笑みを浮かべて佳宏を見つめた。
佳宏は申し訳なさそうに眼を瞬かせる。トラブルにしようという意図はないらしく、3人はマルドニアを抜け出すと、聖都ヒルダを目指して夜の空に上がった。
彼らは一時間ほどで国境を通過し、聖都ヒルダに侵入。
ユリス教の教主庁が置かれるヒルダ市は、王都ミレーユに勝るとも劣らぬ大きな街である。
街路には石と煉瓦が敷かれ、街の至る所に教会や修道院が置かれている。特に目を引くのが、北端に聳えるオルダーナ大聖堂。
教主謁見室、宝物館を要する、旧ミレーユ城に次ぐ大陸最大級の宗教建築だ。四本の塔を含む外壁では木骨が通っているような凹凸が繰り返され、頂部の尖った尖塔アーチに嵌められたステンドグラスは日光を受けると鮮やかに輝く。
夜、佳宏一行はレゴマ公爵の邸宅を目指して走る。
佳宏とダナエには人の位置が手に取るようにわかる為、難なく辿り着くことが出来る。
門の前には2人の番兵が立っており、話しかけられた方は佳宏がオルバン王子に取り次いでくれるよう頼むと、何を言っているんだこいつ?と言いたげな顔で立ち去るよう告げた。
「…双剣騎士団のヨシヒロって言えばわかるよ。双剣騎士団のヨシヒロの前に、オルバン王子を連れてこい」
「…双剣騎士団のヨシヒロだな、わかった」
話しかけられた番兵は夢見ているような顔で、イレーネの言葉を繰り返す。
もう片方の兵士が、相方の様子を訝しく思い、突如現れた3人に詰め寄るが、突如呼吸が出来なくなり、短い呻きを漏らしながら、チョークサインを作った。
佳宏の念力が気道いっぱいに広がり、窒息状態をつくったのだ。
(落ちろ!殺したら面倒なんだ!!)
言いくるめるのも面倒くさい、気絶してくれ。佳宏は感情の反応によって意識が途切れた瞬間を見抜き、念力を解除する。
(死んではいない見たいだけど…)
佳宏は気を失った兵士のそばにしゃがみ、顔に軽く平手打ち。
「おい、そんな奴ほっとけ!とっとと行くぞ」
暗示に掛けられた番兵に中に通してもらい、屋敷の住人に取り次いでもらう。
ややあってから、オルバン王子とテレサに一か月以上ぶりに再会した。少女と見紛いそうになほど華奢な少年は、佳宏達と応接間で顔を合わせると目を丸くした。
テレサは放埓な佳宏一行への悪印象を会わない間に募らせたらしく、再会を喜ぶ雰囲気はない。
「黙って姿を消したあげく、番兵に暗示を掛けて夜中に押し入るとはな」
「いや~ん☆そんなに怒んないでよ、正式に雇われたんでもなし、ここまで送ってあげただけ上等でしょ?てゆーか王様たちが大変な目にあってるてのに、アンタ暢気そうね」
「黙れよ、元凶。お前らの大暴れのおかげで戦端が開いたぞ、満足か?」
イレーネは侮蔑の笑みを浮かべているが、応接間に通される前、彼女は玄関ロビーに飾られていたシンボルに鋭い視線を一瞬投げた。
半円形の天井を貫く上を向いた剣、ユリス教の図柄である。オルバン王子が首から下げている護符にも、嫌悪感を示している。
(大丈夫かな…、来たの失敗だったかな……)
オルバン達から少し遅れて、栗色の髪を頭頂部に散らした50代くらいの男が執事らしい男性と共に部屋に入ってきた。
寂し気な頭部に反して、口髭は豊かだ。彼こそはレゴマ公ヘンリック=バイゴッド。幽閉された王サザーランドの友人にして、王子の保護者の一人である。
「バイゴッド公!」
オルバンが慌てて立ち上がるも、彼はそれを制して空いている席に座った。
彼は佳宏が再びやってきたと知り、押っ取り刀で駆けつけてきたのだ。目的を尋ねられた佳宏は、旅籠で聞きこんだと答える。
「俺達のこと、雇いませんか?生意気な言い方になるけど、お買い得ですよ」
「傭兵か。幾らほしい」
「1日あたり、銀貨6枚でどうでしょう」
1人頭、銀貨2枚。危険な任務の日当として安いくらいではないか?
ヘンリック卿は佳宏の出した条件を呑んだ。それどころか部下に命じ、金貨5枚を彼らに渡す。
「前金だ、成功すればもう5枚出す。2週間、君達を雇おう」
呆気にとられる佳宏一行に、彼はプレンツ城塞に囚われているサザーランド王の救出を依頼する。
既に病状であった為、相手方の看護次第では監獄内で息絶えているかもしれないが、死体でもかまわないので連れてきてほしいとの事だ。
「即決はできない。俺はその王様の顔を知らない…どうだ?」
「私も見たことありませんねぇ、第一既に埋葬されているとしたら?」
「……アタシも同じ」
ダナエが右の口角に人差し指を当てる。
感情を探知すれば、虜囚はすぐに探し出せる。しかし死体は感情を発しない、死体を標的に探知など試したことはないが、王子を奪還した時以上に困難であるのは間違いない。
イレーネは、強い迷いと恐怖を発していた。
(あれか!?首飾りがヤバいのか!?)
ロザリオのようなものだろう、と佳宏は推測する。
顔を向けると、イレーネは顔を伏せていた。膝に指が食い込んでおり、強いストレスを感じているのがわかった。
何を迷っているのか気になるが、イレーネをこの場にとどめておくのは不味い。
「この場で議論しても答えは出ないよ。とにかく前金の金貨は君たちの物だ、城塞に侵入し、首尾よく王を発見できた場合は救出してほしい…」
佳宏はそこまで言うなら、とひとまず引き受けることにした。話を早く切り上げたかったのだ。
「あぁ、ちょっと待て。今から向かう気か?良ければ、今夜はこちらに泊まっていきたまえ」
「有り難い申し出ですが、緊張できっと眠れないでしょう。安宿のベッドのほうが落ち着くんですよ」
「ハハハ…評判はともかく、実力は期待してよさそうだからね。2週間、よろしく」
佳宏は血の気の引いたイレーネを伴って、公爵の邸宅を後にする。
不審に思われないか気にかかるが、あえて触れた場合、かえって怪しまれるかもしれない。
吸血鬼というものに少し憧れていた佳宏だったが、具合の悪そうなイレーネを見ていると、そんな気持ちも萎えてくる。
ジャノイ川湖畔に築かれた街ルサルカ、そこから南東のシュターゲンにプレンツ城塞は建っている。
夜の明ける気配すら見えない闇の中、川に囲まれた高台に建つブレンツ城塞の城壁を、佳宏はこっそりと窺う。
この頃にはイレーネの顔色も良くなり、彼女は燃えるような瞳で城塞に視線を注いでいる。今にも飛び出していきそうだ。
「おい、王様はいるか?生きてる方がありがたいんだが」
「いる、生きてるみたい…」
「そうですねー。身の危険は感じていないようです、流石に王様だけあって待遇いいんでしょうか?」
「へぇ。よく持ち応えたっつーか、なんで殺さなかったのかね?まず王様を確保して…それからお楽しみだ」
イレーネは佳宏の案内に従って、城塞の最奥に向かう。
城塞の南西の隅に聳える巨大な半円筒形の塔、サザーランド王はその中の牢獄にいた。
しかし、彼の状態は佳宏の予想を超えていた。金刺繍を施された豪華な衣に身を包み、肌艶も良い。
彼が寝起きする部屋の内装は宮殿のように豪華で、文鳥が飼われている。部屋の下には図書室が設けられており、自由に出入りすることが出来ていたのだ。
「迎えが来たのか。ダーナの人間ではないらしいが、ルミナス公の差し金か?」
「えー……元気そうじゃん」
野心があろうと、実兄にして王である貴人を殺すのは外聞が悪い。
ゆえにゴードン公爵は、自由以外のすべてを与えた。考えられる限りのものを与え、据え膳上げ膳で彼をもてなすことにしたのだ。
佳宏達が忍びこんだ時、彼は蝋燭の明かりの前で若い女とトランプに興じていた。
「あの…そっちのお姉さんは?」
「命の恩人の、ディートリッヒだ」
サザーランドは福の神のように目を細めて笑った。
「その人…騎士結晶の…?」
「そう、神の加護の継承者だ。驚いたよ、アイツの子飼いの女だ。治癒の異能の持ち主でね、彼女がいるならさっさと直してくれればいいのに、意地悪なヤツだ」
「それだけですか?弟さんに蹴落とされたんだから、恨み事の一つくらい吐けばよろしいのに」
拍子抜けしたダナエが煽るが、サザーランドは泰然自若としている。
「自由がないなど、今に始まった事ではないしな。飯も出るし、月に一度は道化師も招かれる。恨み事など、逆さに振られても出ないよ」
「…あのー、息子さんがお待ちです。帰りませんか?」
佳宏が畏まった様子で尋ねる。
出ていく気が萎えているサザーランドは答えを渋る。イレーネが前に出て、サザーランド王の目を見た。
「…!暗示。魔眼の使い手ですか」
「そういう事」
イレーネがディートリッヒを突き刺す。
佳宏はイレーネ達と一旦分かれ、王の身柄を侯爵に引き渡すべく城塞を後にする。
不意に疲れが押し寄せてきた。ふと湧き上がった疑問に意識が向き、走るスピードが落ちる。
――仲間と別れたからか。
疲れていたのだ、他人といるという事に。
一人だと時間の潰し方に限りがあるが、気ままに動くことが出来る。
仲間がいる旅は楽しいだろうかと思って今まで彼女らと行動してきた、しかし結果はどうだ。話し相手ができた事を除けば、負担ばかり。
(馬鹿にされてる気がしてムカついたけど、今思うとアイツらは正しかったんだなぁ)
もう顔も忘れてしまったクラスメイト達。
生贄の羊に選ばれた時は腹が立ったが、いま改めて考えてみると追放された当初が一番楽しかった気がする。
(戻ろう)
一番最初の頃に戻ろう。
イレーネ達と縁を切る、佳宏は勝手な話だと思いながら、その為の行動は迅速だった。
王の身柄を侯爵に引き渡した後、ダナエ以外の双剣騎士団員を召喚。彼らに要塞で手に入れた長持…3000枚ほどの金貨を渡す。
彼らの一人が翼に長持をしまう。
佳宏は団員に1つの命令を出す。
ダナエ達と別れる事に決めたので、探さないでほしいと伝える事。
彼らは驚いた様子だったが、否は唱えなかった。肩の荷が下りた心地のまま、佳宏は姿を消した。
ありがとうございました。




