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イレーネの昔の話と、これからの話

追放されるのがトレンドと聞いて。読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムは展開次第。


・デスゲームなし。


・俺tueee、チート能力。


・中二主人公。


・読みづらい。


・残酷な描写や暴力表現あり。


・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 吸血鬼の力を楽しめたんでいたのは、蘇生から5年ほどだったか?

もっと短かったかもしれない。不死も、暗示の魔眼も、怪力もやがて慣れてしまう。

蘇生したての頃、日の光で焼け死ななかったのは、幸運だったのか今はもうわからない。

夜が来るのだ。恐ろしい日光をやり過ごすと、餌を求めてさまようだけの退屈な時間が。人間活動が止んでいる以上、時間だけは腐るほどあった。


 あと何度夜を超えれば、この夜は終わるのだろう。

70年ほど生きるうちには、自刃を脳裏をよぎった事があった。だが死ねない。

死にたくない。無目的な時間が続くとしても、死にたくはない。クリフ教への復讐に生きたこともあったが、ついに初代皇帝だけは討つことができなかった。


 佳宏と出会ってからの事は、はっきりと思い出せる。

しかしクリフ皇帝が代替わりした後、彼と出会う以前の数十年はぼんやりとしか覚えていない。

歩いて、傀儡にして、食べていた気がする。


(帰ろ…)


 ゴロツキに喧嘩を売るのも、指折りで数えられないほど繰り返した。

あの黒羽の小屋に飛び込んでみるのもいい。半ば自暴自棄になりながら2人が眠る小屋に戻り、黒い壁に裂き、内部に突っ込んでいく。

掌で触れて確かめてみるが、毛の立った絨毯のように柔らかい。イレーネは腰を下ろし、ゆっくりと身を横たえる。窓は無く、遮光は万全だ。



 イレーネは恐る恐る目を閉じた。

まもなく意識が深淵に落ちる。ふと気づくと、イレーネは見慣れぬ街にいた。

足元は硬く、灰色の石を溶かし固めたようだ。金属の荷車が独りでに走っており、目だろうか?光を前方に放っている。

背の高い外灯が等間隔で立ち、鎌首をもたげる蛇のように頭を垂らしている。疎らな通行人はいずれも、大陸では見たことのない装束に身を包んでいる。


(すげぇ明るい)


 イレーネの知る夜には決してなかったもの。

日が落ちてなお絶えぬ人の行き来、星々が落ちてきたような明りに照らされた建物。

これが二ホンか。佳宏の話を聞いていた彼女は、彼の故郷と周囲の街を結び付けた。夜でもこれほど明るいなら、確かに退屈はしない。

イレーネはしばらく歩き、一際明るい平屋に足を運ぶ。


 そこはコンビニ。

覇気のない挨拶に出迎えられ、多様な商品の並ぶ棚を眺めて回る。

商店であることはすぐにわかったが、品ぞろえの多彩さにイレーネは内心舌を巻いた。

帽子に短い脚衣、飲み物と思しき瓶や透明な紙に包まれたサンドイッチ。興味がひかれたが、金を持っていない。


(こっちの金……通じるわけねえか金貨)


 何か試しに買ってみたいのだが、それは難しそうだ。

イレーネは佳宏のせい、と判断する。以前に幻獣界に飛ばされた為、そのような結論に至った。

文句言ってやろう、と考えたところでイレーネは目が覚めた。周囲は黒一色。



「!おい、ヨシヒロ!!」

「!?なに、ってうわ!これ、羽」

「待て!動かすな!今、何時だ…?」


 佳宏は自分達を覆うように広がった黒翼に意識を集中する。

壁と言わず、床と言わず、内装全体が黒い羽根で覆われており、裂け目を僅かに作ると日光が差し込んできた。


「チ!日が昇ってやがる、ヨシヒロ、棺桶」

「お、おお」


 言われるがまま佳宏は棺桶を取り出す。

手近な床から、モグラが顔を出すように棺桶が突き出てきた。床に置き、蓋を開けながらイレーネの様子が普段と違う事に気づく。


「ひょっとして寝てた?」

「寝てたら悪いかよ?」

「悪くはないけど、だとしたら棺桶の中は辛くない?」


 狭い棺桶の闇の中で夜を待つのは想像するだけで辛い。

手足も伸ばせない棺桶の中で、吸血鬼にとって有害な日光に包囲されているというのに、周囲の状況は聴覚や嗅覚で把握するしかないのだ。


「じゃあどうすんだよ、羽でも切り離すってか?」

「それはちょっと…日光を防ぐんなら…」


 日光を遮断できればいいんだろう?

佳宏の二次元カルチャー知識に、新しい体が反応する。左腕が疼き、戦斧が通る円形ポータルが開く。

ポータルから黒い羽が紙吹雪のように舞い、イレーネの身体に張り付いていく。驚愕し、佳宏の胸ぐらを掴んだ時には黒い羽が彼女の全身を覆っていた。

頭の頂点からつま先までを覆う、黒と濃い灰色を基調としたボディースーツ。胸当と兜には烏の羽を象った装飾。両目はゴーグルで覆われており、イレーネの活動を示して淡く光る。


「イレーネ様!」

「なによ、こっちは取り込み…中」


 状況を理解した瞬間、イレーネは言葉を失った。

3人を包む黒羽の繭が裂け、自身に日光が降り注いている。年月を経たあばら屋だ、遮光が万全であるはずがない。

温かさを感じるが、数十年前に味わった苦痛は襲ってこない。

持ち上げた佳宏を放り捨て、日光から隠れるように黒い繭の隅にイレーネは蹲る。


ありがとうございました。

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