オードの森の懐かしき結晶
追放されるのがトレンドと聞いて。読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムは展開次第。
・デスゲームなし。
・俺tueee、チート能力。
・中二主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
杖の動きは小刻みであるがゆえに素早く、打たれれば甲冑を身に着けていても致命傷は免れない。
しかし、佳宏とイレーネに見切れないスピードではなかった。佳宏が念力によって縛り上げると、琥珀に包まれた虫のように身動きを止める。
棍棒を構えたまま、僅かに身じろぎしているオーガの身体をイレーネが駆け上がり、急所を次々と切り裂いていく。
やがて瞳から光が消え、オーガの全身から力が抜ける。念力を解くより早く、その身体が溶けるように崩壊した。
(マジか~…死んだかー)
強いと聞いていたが、考えていたほどではなかった。楽に済むのは悪い事ではない。
ただ、作業みたいで面白くないのだ。
佳宏はもっと傷つけ、傷つけられといった激闘が好きだ。
独りなら念力で動きを封じたりせず、身体能力と経験、直感を頼りに突撃しただろう。
連れ合いのいる旅もいいが、『遊ぶ』うえで彼女の存在は邪魔だ。
(でも巻き込みたくはないしなー、分身でも作るか?この顔のままじゃ駄目だから変身して……)
思索に耽る佳宏だったが、デーモンが消えたあたりに掌に収まる程度の大きさの結晶体が現れるとそちらに意識を向けた。
先に気づいたイレーネが手に取り、矯めつ眇めつして眺める。結晶は仄かに輝いている、その光は蛍火のように儚げで優しい。
「それも分かるの?」
「いんや?けど、貴重そうだぜ。力を風みたいに叩きつけてくる。お前はどうだ?」
「うん、俺にも見せて」
ほら、とイレーネが佳宏に結晶体を手渡す。
その瞬間、七帆の顔が視界にちらついた。手が滑り、結晶体を危うく落としかけたが、地面に落下する寸前にキャッチできた。
「アブねぇな!割れたらどうすんだ!?」
「ごめん!けど一瞬、クラスメイトの顔が見えてさ」
「クラスメイト?……あぁ、学校の、お前を追放したやつか?」
「そう。まー、割合よく喋ってた女子でね。どういうことだろう?」
黒翼に結晶体をしまう。
結晶体の情報が意識に流れ込むと、佳宏は思わず口をぽかんと開けた。
――騎士結晶「ナナホ」
異界より招かれた少年少女に宿った異能が物質化したもの。
持ち主の激情に呼応することで、宿った力と共に肉体と結びつく。佳宏はイレーネに読み取った情報を伝える。
「どんな力なんだ、それ?」
「えーと、自分の近くにいる味方の筋力と強靭さを高め、幻覚・恐怖・混乱・魅了から守るらしい」
「なんか、パッとしねぇなあ。どっかで使うかもしれないから、一応捨てるなよ」
「おk」
2人は引き返し、オードの森を出た。夜明けまでまだ時間がある。
「これからどうする?」
「どうって…アタシに聞かれてもな。600年だろ……エルフくらいだろ、アタシらのこと知ってるの」
「金があるからどっかで宿とっても…まだ流通してるのかな?」
「金貨か?両替商に見せればいいだろ、それより早く行くぞ」
2人はタッカー地方に入る。
ルービス地方との境にあるナックル市を目指し、片手間の表情で駿馬のような速度で夜の山岳を抜け、平野を突っ切っていく。
「さっきから行き当たりばったりだけどさ、イレーネはどこか行きたいところないの?」
「今聞くか?」
「えぇ、怒んないでよ。いきなり600年経っちゃったし、知り合いもいないかもだけど、別に行きたいところあるなら――」
「ンな所はねぇ。それより向こう付いたら食事だ。わかってるよな?」
「いいよー」
ナックル市の城壁が見えた頃、どこからともなく声が聞こえてきた。
エルフが声を風に乗せて飛ばしてきたのだ。佳宏が身元を告げると、ややあってから彼らは少し待っているように言う。
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