ミレーユ市北門前でいつか見た牛頭と
追放されるのがトレンドと聞いて。読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムは展開次第。
・デスゲームなし。
・俺tueee、チート能力。
・中二主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
北門前。城壁の周囲には、多数の兵士が展開していた。
守備を担う装甲騎士隊と弓兵隊、司祭達をセットにした歩兵団と敵に接近戦を仕掛ける騎馬隊。
佳宏とイレーネは無言で駆けだす。宰相が告げた敵が本当にただ2人きりとは思っていなかったこともあり、距離が20mを切るまで彼らは反応できなかった。
教えられた人相――敵の接近を報された騎馬隊が駆け出す。
地を蹴った佳宏の姿が、霞となって消えた。
縮地。瞬きのうちに20の兵士が四つに砕けながら落馬。一呼吸のうちに100人の騎兵が佳宏の手にかかり倒れる。
最初の20名は雨霰と降りかかる素手の拳で全身を砕かれ、100人目は戦斧で兜を割られた。
イレーネも負けじと疾走。片手剣を抜き、竜巻の如き勢いで馬上の騎士を斬り捨てる。
騎馬隊が壊滅すると同時に、2人の頭上からサイレンの如き暴風が降り注いだ。
桑染色の牛頭だ。
ラビュリントスの主人の如き威容が、夜のミレーユを背に2人を見下ろす。
足元では数名の兵士が潰れているが、牛頭も佳宏達も気にしない。
「久しいな!黒髪の男!」
「その声…駐屯地の」
「ランディだ」
怪物に変身したランディは口の端を吊り上げつつ、右拳を打ち下ろす。
打ち終わった頃には前に進んでおり、続けて左フック。巨木の幹のように太い腕が振るわれるたび、夜が唸る。
接触せずとも、発生する衝撃波だけで2人を吹き飛ばしてしまう。
佳宏の方は空中に舞ってこそいるが、ほとんど負傷を負っていない。
黒い翼を呼び出して高空に逃れる程度の余裕がある。不味いのはイレーネの方だ。
暗黒神クリフの息吹がかかっている衝撃波。致命傷にこそ至らないが、接触するたびに体力が奪われているのが自覚できる。
ランディは片手剣の女をまず始末するべく、身を沈めた。
それを見た佳宏は雷電を放ち、イレーネの前に壁のように広げる。
目も眩む閃光と轟音、放った佳宏ですら瞼を閉じる。雷撃がランディの外皮を焼き、筋肉は熱した無数の錐に刺されたように痛んだ。
しかし一瞬たりとも速度は鈍ることはなかった。閃光が晴れる寸前、佳宏に鉄槌のごとく左拳が降り降ろされる。右か左か、避けた先に左中段蹴りを浴びせる腹積もりだ。
「!」
佳宏は瞼を閉じたまま、戦斧で鉄槌を弾いた。
左足を浮かせていたランディは姿勢を崩すが、倒れる無様は侵さなかった。
蹴り足に手応え、しかし浅い。駐屯地の時と変わらぬ強敵……と感心したランディは、違和感に眉を顰める。まもなく正体に気づく。
佳宏とイレーネが遠ざかっている。
(吹き飛ばされた?)
佳宏はランディを視界に入れたまま、イレーネの前に立つ。
「大丈夫?」
「…傷はないけど、ちょっと消耗してる」
イレーネは無念そうな声音で呟いた。
昨晩、奇妙な槍が降ってきた時にも感じたことだ。体力が吸い取られたように、四肢に力を入れるのに不自由する。
神の力だ。彼女を含む吸血鬼は、神の祝福を受けた武器に弱い。祈りの文言を聞かされるだけで、頭が割れるほどの痛みに襲われてしまう。
クリフ教の総本山であるミレーユ市は、はっきり言うと鬼門なのだ。
「一旦退くかい?」
「馬鹿か!引いてどうすんだ」
イレーネは四肢に喝を入れて立ち上がった。
佳宏はこのまま彼女を戦わせるのは不安なのだが、それ以上は口にしなかった。
このまま皇帝を討ち取ろうという考えは消えていたが、せまてあの牛の化け物はどうにかしなければ。
佳宏はクリフ帝国軍に大打撃を与えるべく、炎を放った。
ミレーユ市の上空。
皇帝と近衛が守る帝都の空が、突如真紅に輝いた。
殆どの人々は床に就いており、祝宴を催していた市民は、真昼のように明るくなった外と熱気に思わず空を見上げた。
ミレーユ市に蓋をするように、渦巻く業火が広がっている。彼らの思考は漂白され、この晩に起きていた我が身を呪った。
知性を失った竜の群れが襲来しても、ここまで絶望的な眺めにはなるまい。もっとも、起きていようと寝ていようと辿る運命は変わらない。
ただ現れるだけで橋の欄干を溶かし、建屋に火を入れる高熱。
水を汲んだ桶の底を抜いたように、炎の瀑布がミレーユ市の北部を呑み込んだ。
エイル2世の理力が街全体を守っているとはいえ、完全に無力化できる熱量ではなかった。
少なくとも1万を超す市民が焼け出される前に絶命した。向こう数年、ミレーユ市で市を開くことは出来ないだろう。
ありがとうございました。




