ダヌー伯爵救出作戦
追放されるのがトレンドと聞いて。読む前に、以下の注意に目を通してください。
【注意事項】
・ハーレムは展開次第。
・デスゲームなし。
・俺tueee、チート能力。
・中二主人公。
・読みづらい。
・残酷な描写や暴力表現あり。
・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。
フロストマーチ地方。
ダヌー伯爵と帝国軍の間で衝突が幾度となく発生している、傭兵以外にはあまり有り難くない土地だ。
対ダヌー伯軍の陣に、場違いな人物がいた。長い髪を一つに結んでいる、童顔の若い女性。
狩人風の衣装に身を包み、アンダーは丈の短いスカートとロングブーツという奇怪な出で立ち。
ティブル公爵家の令嬢、シャーロットである。
戦場に似つかわしくない人物だ。
裕福な家庭で不自由なく育ち、欲しいものは何でも手に入った。
品のない末端兵士も、社交界の華やかな風景に飽きていた彼女からすれば、それなりに面白い見世物ではあった。
しかし、それもそろそろお終い。
帝国軍がダヌー領各地に部隊を派遣し、ついにバーハラ市に追い詰めたのだ。
明朝、水も漏らさぬ包囲によって、ディーン将軍率いる北方方面第5軍、ルシア将軍率いる第6軍がダヌー伯軍を押し潰す。
そしてその日は来た。
北の城塞都市バーハラを目指し、6000の軍団が進んでいく。
巨馬が蟻を踏み潰すような瞬間を予想し、シャーロットは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
せめて一矢報いてほしい、そうでなければ面白くない。
行軍中の一兵卒を、暢気な声が呼び止めた。顔を向けると、林の中に黒髪の男が立っている。
上背があり肩幅も広いが、筋肉は薄い。書生のような雰囲気の持ち主だ。
怪訝に思ったが深くは考えず、死体の装備品目当ての物盗りだろうと見当をつけた。彼は解放軍の聖騎士の情報を耳に入れていたが、詳しい部分は何も知らない。
「気の早い奴だな。見つかると厄介だから、隠れて待ちな」
「はぁ、その前に質問いいですか?」
黒髪の男はついてきた――佳宏は口を開く。
仕方なしに戦列から離れ、立ち話の姿勢に入る。無論、すぐに戻るつもりだ。
如何にも怪しいが覇気のない口調に、兵卒はますます警戒感を弱める。すぐそばを通り過ぎていく甲冑の群れは、2人を横目に進んでいく。
「なんだ?」
「解放軍と帝国軍、どっちが優勢ですか?」
「そりゃ解放軍だよ、この戦いが終われば、ダヌー伯はもうバーハラ市に追い詰められて後がない。もういいか?」
「あぁ、ありがとう」
不意に声色が変わった。
楽しそうで、それでいて揺るぎない自信に満ちた古強者のような声だ。
短い礼を述べた頃には、佳宏はすでに戦斧を抜き放っており、口をあけて固まった兵卒の頭部めがけて、右腕1本で横薙ぎに振るった。
目撃していた兵卒や騎士たちも、思わず振り向く。衝撃は全体に伝播していない。
「さぁて、始めようか!」
佳宏が走る。立ち止まり、戦列の側面、武器を構えた兵士の眼前に突っ込んでいく。
槍衾を削り、丘陵の中央に向かって斬りこむ。肉が吹き飛び、鎧が音を立てて裂ける。
ヤツデの切れ味は凄まじく、両腕と胴体を一振りで両断できてしまう。馬の上半身が斬り払われ、噴き出した血が勢いのまま回転した佳宏の後頭部を染める。
ディーン軍も負けてはいない。あっという間に囲まれ、四方から剣と槍が佳宏を串刺しにする。
しかし、止まらない。全身から炎を噴き上げ、周囲を炎の海に変える。大蛇のような兵士の列の一角が崩れ、行進が止まった。
「何者だ!?」
「俺は解放軍の佳宏!ダヌー伯をやらせはしない!!」
声は風に乗り、戦列の全てに届いた。
無名の襲撃者で通すより、解放軍を騙ったほうが状況は面白くなるだろう。
炎の壁を突っ切り、兵士達の前に躍り出ると、戦斧をデタラメに振り回す。
弓衆が立ち止まり、矢を射かけてくる。無数の鏃が飛来し、左胸を貫き、右脇腹に刺さった。
しかし佳宏は矢を抜きもせず、樹木を根こそぎ飛ばすほどの竜巻を走らせて反撃、弓兵達を空高く打ち上げる。
「バ、化け物…」
炎の壁は旋風に吹き消されるどころか、さらに勢いを増して煌々と燃え続けている。佳宏は矢を抜く手間を惜しみ、怯んだ歩卒を薙ぎ払う。
「か、囲め!敵は1人だ!矢や剣が駄目なら、魔法だ!魔道士!」
馬上の騎士は命令を飛ばした直後、右肩から左脇にかけてを真っ二つにされた。
魔道士部隊を率いているシャーロットは巨大な火柱が上がった反対側にいた。それ故、目撃することになる。
傷つきながら、確実に馬や甲冑姿の死体を積み上げていく人とも幽鬼ともつかない姿。凄絶な姿に目を奪われつつも、シャーロットはすぐに我を取り戻し、攻撃魔法で黒髪の男を狙い撃つ。
冷気や稲妻が浴びせられたが、佳宏には針穴ほどの傷もつかない。
矢や剣のほうが断然効果がある。恐怖の魔法で精神に干渉してみたが、目に見える反応はない。
佳宏は魔道士部隊に気づくと、彼女らのいる地点に火球を発生させる。男の頭部ほどもある茜色の球体が、シャーロットの視界に唐突に出現。
唸り声をあげて見る間に2倍、3倍と膨らんでいく様に危機感を覚え、退避。
耳をつんざく音と突風。
魔道士部隊の中でもっとも距離を広げていた彼女は、蹴られた石のように転がる。
部下の半分は手足が吹き飛び、その場で絶命。炎の壁を勇敢にも突破しようとしていた兵士達も、骨折と同時に皮膚が黒焦げるほどの熱波で全身を焼かれた。
積まれた死体から丘陵に火が入る。丘陵は戦列の左右から傾斜が厳しくなっており、火を避けるなら切り立った岩肌を登らねばならない。
――軍はほとんど分断された。
佳宏はここで向きを変え、戦列の前方に向かう。
口にしたからにはダヌー伯爵の顔くらいは拝まなければなるまい。
佳宏は立ちはだかる兵士を薙ぎ払いながら、飢えた狼のように走る。恐怖に駆られて道を譲った者もおり、それらは追い討たない。
ありがとうございました。




