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放逐された者は夜に目覚めた

追放されるのがトレンドと聞いて。読む前に、以下の注意に目を通してください。


【注意事項】


・ハーレムは展開次第。


・デスゲームなし。


・俺tueee、チート能力。


・中二主人公。


・読みづらい。


・残酷な描写や暴力表現あり。


・この作品はフィクションであり、実在の地名や人名、団体名とは一切関係ありません。


 A県内にある某都市の高校、担任教師がやってくる前の教室。

30数名の生徒の中で、杉村佳宏すぎむらよしひろがぼんやりと座っていた。今期のアニメや進めているゲームについて考えながら。

そんな彼の評価は、何を考えているか分からないキモイ奴である。


 始まりは唐突だった。

弛緩した空気が水底の落とされたように重さを増し、独りの少年が教卓の後ろに現れたのである。

金髪碧眼の彼は貼りつけた笑みのまま、困惑する生徒達に言い放った。


「朝早くからゴメンね!アンダカと言います。皆さんは幸運にも、異世界転移の被験者に選ばれました!」


 突然捲し立てる少年に、クラスメイトの男子が割って入った。彼の名前を佳宏は知らない。


「今、僕が喋ってるんだ。静かにしてくれ」


 男子の首が水風船のように弾けた。

一歩も動く事なく、指から放たれた光芒によって見知った顔が死体に変わる。

声をあげる者が出なかったことで、少年は気を取り直した。


「さて、これから地球ではない場所に送ろうと思うんだけど。このまま贈るのと、チート能力もらうのとどっちがいい?ハイ、君答えて!」


 教壇近くの席に座っていた小柄な女子は困惑するも、懸命に答えを絞り出した。


「だよね!」


 佳宏には突然の異常事態の中、教室内を見回すだけの余裕があった。

ただならぬ状況に陥りそうな気配があるが、手札が無い。よって静観する。

それに少しばかり興味があった。窒息しそうな空気が裂け、どこに流れ着くのか、舞台の開演を待つ客の如く待つ。


「という訳で、皆に素晴らしい能力を配る代わりに、独り追放してもらおうと思うんだ!30秒数えまーす。30…」


 全ての机の前に、メモ帳からちぎったくらいの小さな紙とペンが出現。

生徒達は慌ただしくペンを走らせる。佳宏は仕方なく、担任の名前を書いた。

きっかり30秒経った頃、ペンと紙片が消える。ペンは見当たらないが、紙片は少年の手の中に収まっていた。

彼は紙を手早く検めてから、佳宏の前に近づいてきた。


「ぶっちぎりの得票数により、追放役は君に決定しました!何か言っておくことある!?」

「それより行き先について聞きたいんだが」


 佳宏はわくわくしながら聞いたが、少年はにやついたまま答えなかった。

少年が指揮者の如く右手を振り、降ろした瞬間――佳宏の姿は教室から消える。


「それにしても酷いね~、君達。追放役を出さなかったら、僕も全員残しといたのになー」

「な!それはお前が!」

「何?佳宏君に投票した、委員長のさ・わ・だく~ん!?」


 沢田魁さわだかいは黙り込んだ。


「さて、残りの皆にはハレン大陸で解放軍に入ってもらいます。異界より招かれた聖騎士としてね」


 佳宏のが見る景色は、瞬きのわずかな間に激変した。

見慣れた教室から、岩肌が剥き出しになった渓谷へ。斜面からは葉をたっぷりとつけた木々が伸び、枝を広げている。

佳宏は現在、渓谷の間を走るカーブの上に立っている。


(送るなら送るで、もうちょっと考えて欲しいんだけど)


 異世界を語るなら、もっとそれらしい景色が見られる場所に送って欲しい。

手元にはスマホと財布しかないというのに。スマホを触ってみるが、ネットも電話もつながらない。

小さく息を吐いて、佳宏は渓谷を進んでいく。30分歩いた頃、渓谷が途切れて山の斜面に出たが、木々に邪魔されて景色は見えない。

ほぼ遭難に等しい状況に追い込まれながら、佳宏が気にしているのは景色が見えない事だった。


(異世界って言ってたけど、言葉通じるのか?)


 空が漆黒に染まり、佳宏は身動きが取れなくなった。

鼻をつねられても相手が見えない闇。仕方なく、山道から脇に入り、下ばえの間に身を横たえる。

自宅の布団とは大違いの硬い地面、枕を恋しく思いつつ、瞼を閉じる。

それから1時間もしない頃、佳宏は痛みと共に覚醒した。目を開けるとそこには、己の胴体に牙を突き立てる狼のような生き物。


 鼻を殴り抵抗する途中、佳宏は周囲から聞こえる足音に気づく。

自分はここで死ぬのか、佳宏は淡々と迫る運命を悟る。肉を裂かれる感触の中、絶命するのは佳大も辛かった。

最後の思考が途切れた刹那、木々の間から自分を見つめる少年と目があった。

少年の名はアンダカ。彼らが放り込まれた世界エリンディアを運営する8柱の神の使徒だ。


「あらあら、ローグウルフに食い殺されて死ぬとは――あ?」


 青年に群がる狼達の側に、佳宏が立っている。


「やあ」


 佳宏は旧知に偶然会ったように手をあげる――その瞬間、アンダカの身体が火に包まれた。

神の使徒たるもの、魔法への抵抗力は備えているが、これは質が違う。瞬く間に全身の筋肉が黒く壊死し、咳き込んだ瞬間、体内を高熱が貫いた。


「今のは覚醒イベントだったらしいね」


 佳宏はニコニコしながら、目線を外した。

アンダカを焼き殺した理由は、生かしておいても得にはなるまいと踏んだからだ。

他者を破壊する事への呵責を、彼は持ち合わせていない。罰せられないなら、彼は殺人も窃盗も辞さない。


ありがとうございました。

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