特別番外編[小野 玲の看護日誌]
「なぁ、よつ葉 俺ら来週から実習なのに春休み真っ只中の看護学科の奴がいるんだよ。なんか損してる気がして仕方ないんだけど」
小野君が、月曜からの実習のことでグチグチ文句を言ってくる。
「散々話し合ったじゃん。じゃあ、4年の夏休み返上するの? 国家試験対策講義出れなくなるよ。散々話し合ったのに文句言わないの!」
久々に小野君に切れたよつ葉。
<補足>
小児看護「隔離」を学べる病院に限りがあるので、3年終わっての春休みを返上する前半組と4年の夏休みを返上する後半組を選ぶことができた。
前半組を選んだ班は4年の夏休みに行われる国家試験対策講義を受講したい人達は春休み返上して小児看護実習に参加します。(紺野班メンバー前半組)
後半組を選択した人達は、前半組の人達から実習記録を見せてもらえるから(見せてもらえる人がいた場合)何を実習してきたのか理解してから小児看護実習に行ける(国家試験対策講義には出られない)
と言う選択ができました。例え前半組の人達から実習記録を見せてもらったとしても同じ患者様で実習できるわけでもないから、人の看護実習記録を見たとしても特に参考になるとは思えないと考えます。なので紺野班は話し合い国家試験対策講義に参加した方が自分達のためになると考えたので迷いなく前半組を選択したのです。
春休み真っ只中の看護学生を見かけた小野君が、グチグチうるさく大きな独り言を言うのです。
「なあなあ、春休みだったら何してた?」
「俺、もし春休みだったら何してたんだろう」
「なあなあ、今頃遊んでたんだろうな」
小野君が一人妄想を楽しんでいる。
「過去問と紺野班の勉強会!」
「天野教授から呼び出されて補講!」
「小野君だけね!」
よつ葉が、質問に全て答えてあげた!
「うわぁ、よつ葉ひでぇー」
小野君が大袈裟に悲しむ。
「はいはい」
適当にあしらってみる。
「おいおい、よつ葉。小児同じ病院だからさぁ…」
何やら怪しい雰囲気なのでバッサリ
「せめて[外科系][内科系][隔離病室]」で分かれる時には別の部所から実習できますように……。
「お守りって前原君担当でしょ?」
「よつ葉、俺も要らん」
前原君も自分の事で、いっぱいいっぱいらしい。
「小野君、見放されちゃったわね。次のも単位落としたら留年候補生になるわよ」
天野教授が声をかけてくれた。
「えぇー、天野教授! それだけは避けたいです」
小野君の嘆きが始まった。
「あなたが成人急性期の単位を落とすからでしょ」
天野教授、いつものように切れがいい!!
「ひとつだけなら秋に追加実習で単位取得が絶対条件。落としたら留年」
小野君の厳しい現実。
「前原、なっ?」
小野君の意味深な「なっ?」に前原君は
「はっ? なに!」
「何でもありません」
よつ葉にすがるような目を向けないでください。
「よつ葉、なっ?」
今度は、よつ葉なの?
「頑張ってね! 子供にバカにされないようにね」
「よつ葉さん、心配箇所の目のつけ所が良いわね」
天野教授に誉められたぁ!
「ふふっ、ありがとうございます」
「うわっ、女ってひでぇー」
小野君、聞こえてるよ!
「小野、同レベルだから友達だろ。あっ、いじめられんなよ」
前原君! 面白い!!
「あらっ、面白いこと言うわね」
天野教授が、前原君の一言に大笑いをする。
「……小学生以下って事?」
思わず出た言葉に天野教授が
「よつ葉さん、小児は15歳以下よ」
あっ、そうだった。けどイメージは小さい子だったんだもん!
「よつ葉、大丈夫。俺も同じこと思っての発言だから」
前原君もサラッとひどい言葉を落とす。
「あはは、小野君は小学生以下の子にいじめを受けるってこと?」
天野教授、声が大きいです。お隣の子達がクスクス笑ってます。
今回の小児看護実習は、前原君・小野君・よつ葉が同じ病院で実習を受けます。
紺野君・柊君・ゆみちゃんが同じ病院。
美羽ちゃんと美佳ちゃんは一人です。他の班の子たちと一緒に参加です。
さぁ、春休み返上して頑張る看護学生に、あたたかいお言葉をお願い致します。




