よつ葉で良いんですか?
朝いきなりの電話。
ん? え? 花陽先輩だぁ。
花陽先輩『もしもし、よつ葉?』
よつ葉『はい』
花陽先輩『よつ葉、今日暇だよね!』
あのぉ・・花陽先輩? いきなり電話で暇だよね!って
「?」じゃなくて「!」
よつ葉が毎日暇みたいじゃん。 って暇だけど。
って、看護師国家試験過去問題集のノルマが23ページあるんですけど!!
よつ葉『過去問題集のノルマが・・』
花陽先輩『あー、明日でいいよ、そんなもん』
先輩! そんなもんって!! 言ってみたいなぁ(笑)
よつ葉『・・・はぃ』
花陽先輩『迎えに行くね! 駐車場着いたら連絡するから降りておいで』
よつ葉『お家まで来てくれるんですか?』
花陽先輩『うん、私じゃないけど(笑)それじゃあね』
はっ? 花陽先輩!! って切らないでよぉ
支度しなくちゃ。
化粧しなきゃ、スッピンはまずい!!
着替えなきゃ、部屋着はまずい!!
バタバタ準備をする、よつ葉。
花陽先輩、昨日の内に連絡してほしいよ!!
今日あったら文句言わなくちゃ。
全ての支度を速攻で済ませ、連絡を待つ。
誰が来てくれるの? 花陽先輩、それくらい伝えてから電話切ってよぉ。
あっ、電話だぁ。
ん? はっ? 何で!! どういうこと?
早く出ろよ!! だね!! すみません。
『はい』
電話に出る、よつ葉。
『もしもし、よつ葉ちゃん! 降りておいで。下の駐車場にいるから』
『はい』
電話を切り、疑問が頭に浮かぶが、待たせる訳にはいかないので下に降りていく。来客用の場所に停まっている高級車。そこからよつ葉を呼ぶ声がする。
『よつ葉ちゃん、ここだよ』
『槙野医師、こんにちは』
『まぁ、乗って。詳しくは中で話すね。白衣のよつ葉ちゃんも可愛いけど、私服のよつ葉ちゃんは凄く可愛いね』
『槙野医師、褒めても何も出ないですよ』
『槙野医師、お一人ですか?』
『うん、そうだよ』
花陽先輩!! どういうこと!!!!
槙野医師からお話を伺った。
今朝、ナースステーションで看護師さんたちにある相談をしたら滝澤看護主任と花陽先輩が
滝澤看護主任『よつ葉ちゃんなら良いんじゃないですか?』
花陽先輩『電話してみます』
ってなってね。と教えてくれました。ここまで来たら仕方ない、付き合いますよ。
『よつ葉でできることですか?』
『もちろん! 来月泌尿器科部長の誕生日でね泌尿器科医師から誕生日プレゼントを渡すんだけどね、買い物担当のくじを引いちゃってね。よつ葉ちゃん助けてよ。医師から集めてきたこれで買えるものを選んでほしいんだよ』
って分厚い封筒を渡されました。見て良いんですか? チラっと覗く。
マジかぁ!!!!!!! よつ葉の月謝にしていいですか?
実習費にしていいですか? さすが、医者!!
『何か買うもの決まってますか?』
とりあえず聞いてみる。
『ん? よつ葉ちゃんにお任せ』
おいおい、丸投げかぁ? マジかぁ。
って、泌尿器科部長って言われても趣味知らないし。
『決まっていないなら百貨店に行きますか? ブランドの店あると思うし』
『おぉ!! そうしよう。さすがよつ葉ちゃんだね』
って誰でも気付くわ!! 心の声がダダ漏れになるところだった。
百貨店の駐車場に着いて、二人で店内に行きましたが、二人して不慣れな場所。
『なにがいいかな?』
槙野医師、よつ葉に丸投げしてますね?
『部長先生って白衣の下ってワイシャツでしたよね?』
槙野医師に確認してみる。
『そうだと思うよ。あまり気にしてないからさぁ』
もう、笑える。
『それじゃあ、ネクタイピンとカフスのセットとかどうですか? 学会とか講演とかの時に使ってもらえるんじゃないですか?』
思いついたのがこれ。
『よつ葉ちゃん!! そうしよう』
良いの? そんな簡単に決めて!
とあるブランド店に入ってみる。
初めてなのでドキドキなよつ葉。
高級感半端ない!! 場違いな看護学生。 いや、医者がいるから良いのか?
『槙野医師、これ素敵じゃないですか?』
と言ってちらりと見た値段。
えっ? マジかぁ!! んな高いのか!!
いやいや、あの分厚い封筒がある。
あのぉ・・先生たちのお給料聞いてもいいですか?
『よつ葉ちゃんのお見立てなら間違いないんじゃない。これにしようか』
えっ? そんなに簡単に決めて良いんですか?
『槙野医師、決めなくて良いんですか?』
不安になって聞いてみる。
『うん、よつ葉ちゃんにお任せ。部長も、よつ葉ちゃんが選んだって言ったら喜ぶから。よくやった!って俺、褒められるんじゃない?』
何で?
『ウチにインターンシップ来たでしょ? 花ちゃんや、看護主任が可愛がってたでしょ。導尿よつ葉ちゃんって言われてたのが部長の耳に入ってね、よくナースステーション来てたでしょ?噂の導尿よつ葉ちゃんを見に来ていたんだよ』
えっ? 初耳なんですけど!! ってかまだ導尿よつ葉って言うんですか?
『・・・・・・』
『照れながら男性患者の導尿したよつ葉ちゃんの話は花ちゃんが楽しそうに話してたから知らない人いないと思うよ』
もう、花陽先輩何してるのぉ。
何だかんだで、泌尿器科部長へのプレゼントはあっという間に決まってしまいました。
『今日お手伝いしてくれたお礼と実習頑張ったご褒美をさせてもらおうかな』
えっ? いやいや、楽しかったから別にお礼してもらうようなことじゃないのでお断りしたら
『こういう時は、甘えておいて』
と言われ、今まで丸投げ状態買い物だったのに、足取りが軽いんですけど!!
とあるブランド店に入っていく槙野医師。
『これなんか可愛くない?』
さっきの部長さんのプレゼント決めの時も、その積極的を発揮してくださいよ!!
『よつ葉ちゃんは、ピンクって感じだよね。薄い方のピングが良いね』
槙野医師? 楽しそうに買い物を楽しんでいる様子。
『よつ葉ちゃん、これ可愛いね』
店員さんが寄ってくる。やばくないこの雰囲気?
『よくお似合いになりますね。他のお色もありますよ』
ほらぁ~、店員さんが来ちゃったよ。
『ピンクが良くてね。他にあるかな?』
どんどん暴走していく槙野医師。
『こちらかこちらですね』
2つの可愛いピンクの鞄が、よつ葉の前に並べられる。
『よつ葉ちゃん、どっちが良い?』
『こっちかなぁ』
『だよね、俺もそう思ったよ』
『でも、いいです』
お断りするよつ葉の言葉を無視して店員さんと盛り上がっている槙野医師。
『こっちのピンクの新品下さいね』
『奥から新しいものをお持ち致しますね』
『槙野医師?』
『今日は助かったよ。ありがと』
『いえ、私の方こそありがとうございました』
『どういたしまして。また行こうね』
は? どういうこと? そう言って会計に行く槙野医師。
花陽先輩からメールが入っていた。
【よつ葉! 楽しめよぉ】
楽しむどころか、申し訳ないよぉ!
槙野医師から立派な袋に入ったバックを、渡されたよつ葉。
『ありがとうございました。大切にします』
『いやいや、使ってよ』
『はい』
お店をでて、ご飯をごちそうになって帰ってきました。
ちょっと遅れてきたサンタさん? でした。
花陽先輩にすっかり騙されたよつ葉。
でも、花陽先輩には逆らえない。
緊張やら申し訳ないやら、嬉しかったお出かけでした。
よつ葉も、女の子なのでプレゼントは嬉しかったです。
帰ってきてノルマの過去問題集に取りかかったよつ葉でした。




