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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第七章 ワーズ(二)
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第七章 ワーズ(二)(2)


「それにしても、こんなにおいしいお店、どうして【do麻呂】先生も誘わなかったのですか」


 ユキが【be子】に訊いた。


「はっ、冗談はやめてよ」


 串を持ったまま天を仰ぐように吐き捨てる【be子】。


「あんな奴連れてきたら、あなたたち、あたしとあの男の串の刺し合いに巻き込まれるわよ」


「ははっ、過去にそんなこと、あったんですか」


 万三郎が冗談だろうと笑って突っ込んだのだが、【be子】は意外にも、ビールジョッキを眺めながら言う。


「過去には、ね」


「えっ、過去に【do麻呂】先生とこの店に来たことがあるのですか」


 驚いて訊き返すユキの後ろから、看板娘、五郎八の声が聞こえたので、杏児はさらに驚いてそちらを振り返った。杏児のビールをカウンターに置きながら五郎八がこう言ったからだ。


「なんだか懐かしいお名前が聞こえました。【be子】さん、もう長い間【do麻呂】さんとご一緒じゃあないでですね。【do麻呂】さん、お元気ですか」


 杏児は五郎八の質問を聞いて、思わず【be子】をうかがう。【be子】は万三郎やユキからも同様に驚きの目で見られていることを分かっているのだろう、少し恥ずかしそうにうつむいて、小さな声で五郎八に答えた。


「ええ、元気よ」


 【be子】はその後に当然期待される説明をごまかすかのように、自分のビールをぐいぐいあおる。ぷはあと言って口を拭ってから、傍らの万三郎に言った。


「あんな男のことより、あなたたちETのあと半分、後ろの席の子たちはどうして来なかったのかしらね。あたしが、黒目と元貴族の娘を叱ったからかしら」


 五郎八は話題が変わったと思い、目礼して去っていった。


 万三郎が答える。


「【be子】会長、彼ら三人のチームは、僕ら三人のチームとはライバル同士なんです。今日は僕らが熱心に講義を聴いて評価されたので、彼らはそれが面白くなかったのでしょう」


「ふうん、チーム対抗なんだ」


 【be子】は今日一緒に来なかった三人の言動を思い出している風だった。だが、好奇心優先の杏児は、チーム・スーペリアのことよりも、先ほどの五郎八のセリフが気になってたまらず、ついに【be子】に訊いてしまった。


「【be子】会長、立ち入ったことですが、大きく分けて三つ、質問があります。第一に、会長は【do麻呂】先生と、以前は仲が良くて、このお店に一緒に来られていたのですか? 第二に、過去にこのお店で【do麻呂】先生と串の刺し合いみたいな喧嘩をされたのですか? 第三に、どうもそれから何年も経っているようですが、今日もあまり仲好さそうではありませんでした。その喧嘩のせいですか?」


 五郎八が置いて行った杏児のビールジョッキの水滴が大きくなって、一筋、二筋と表面を流れ落ちるさまをしばらくの間じっと見つめていたが、ふっと目を上げてニコリと杏児に笑いかけた。


「杏ちゃん、あなた、いいETになるわね」


「は、そうですか?」


 【be子】はアルコールで火照った顔を冷ますように、髪を一度わさりと掻き上げた。そしてほろ酔いで気持ちが大きくなったのか、ふっきれたように言った。


「よし、あなたたちには、あたしの秘密、教えてあげよっかな」


 その言葉を聞いた三人は、素早く内ポケットやらハンドバッグからメモ帳を取り出し、ペンを手に取ってスタンバイする。その三人一致した素早い動作に【be子】は目を丸くして唸った。


「うーん、あなたたち、若いのに本当に優秀なETね」

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