表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第五章 仲間
84/368

第五章 仲間(12)

十二


 祖父谷がハンバーグを口に入れたまま言った。


「過去を訊くな。気分が悪くなって、せっかくの旨いメシが不味くなる」


「おいヨッシー」


 祖父谷は怒気に満ちた顔を万三郎に向ける。


「あ、済まん。それより、お前の社章……」


 万三郎に指摘され、祖父谷は自分の鴨の目が光っているのに気付き、驚く。そして万三郎に向き直った。


「中浜、お前の鴨の目もさっき光ってたんだ」


 万三郎は、発光していない自分の社章をまじまじと見つめ、それから顔を上げた。


「そうか、分かったぞ。GPSで定期的に現在地情報を本社に発信しているのかも知れない。それでこの店、ティートータラーにいると分かったら、俺たちの給料から飲食代が天引き精算されるって寸法なんじゃないか」


 祖父谷が答えた。


「お前、馬鹿だな。そんなくだらない使い方ではなくて、緊急事態に本社に召喚できるように、現在地を把握されているのだろう」


 万三郎はふてくされる。


「緊急事態って、なんだよ」


 祖父谷は手元のハンバーグの最後のかたまりを箸でつまむ。


「知らんよ」


 そう言ってからハンバーグを口に入れる。もぐもぐ口を動かしながら空のグラスを手に取って言った。


「まあ、緊急招集がかかるのはお前ら、みどり組じゃなくて、俺たちだけだろう。すみませーん、水ください」


「チーム・カフェテリアーズか……」


「スピアリアーズやで」


 京子が訂正してきた。


「優れた人たちって意味や。英語力、外見、人間性、使命感、行動力、すべての面において、うちらの方が、上や」


 そう自慢げに言う京子の鴨の目はもう発光していなかった。


 カウンター席から負けず嫌いのユキの声が飛ぶ。


「へえ、まつ毛の長さだけじゃないの? あなたの方が上なのは」


 京子はそれを聞いてすっくと立ち上がった。


「な……何よ」


 ユキはたじろぐ。奈留美がハンバーグをナイフで切り分けながら澄ました顔で言った。


「ダメよ、京子さんのまつ毛を冒涜するのは自殺行為ですわよ」


「あっ、ダメだ、何するつもりだ!」


 席を立ってユキの方に向かっていこうとする京子の前に万三郎が慌てて駆け寄って立ちふさがる。小柄な京子は万三郎を見上げて脅すように言葉を吐いた。


「ちょっとあんた、何カッコつけてんねん。うちら女同士の話、しに行くとこや。のいたって」


 万三郎は両手を広げ、かぶりを振った。


「いや、ダメだ。みどり組の仲間がやられるのを見過ごすわけにはいかない」


 その時、それまでじっと成り行きを聞いていた祖父谷が、口を拭っていたナプキンを置いて、ゆっくりと席を立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ