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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第四章 研修
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第四章 研修(9)


「まあまあ!」

 立ったままいがみ合う杏児と女を、ほうぶん先生が宥めにかかる。

 杏児はそれでも収まらず、「地球を守るって? そりゃあ、僕には君のように、割り箸をあんな風にリサイクル利用するなんて発想は出ないね。ぜひこれからも、そうやって地球の限りある資源を守ってくれ」と言って、女の方を見ながら、顎を受け口の形にして、ざるでどじょうを掬う素振りをした。髪ビシ女は再び耳朶まで真っ赤にして震えながら、下唇を噛み、杏児を睨み続ける。

 怒りか緊張か、再び震え始めた女は、やっとの思いで訊く。

「あ、あなた、な、名前は何だっけ?」

「僕は、三浦杏児」

「あ、あ、あなたとは、な、仲良くできそうね」

 女はそう言うと、少し脇へうつむいて眼鏡のフレームを親指と人差し指でつまんで位置を調整し、そして座った。

 万三郎がほうぶん先生の顔をそっとうかがうと、先生も苦笑していた。

「ほれ、君も座りなされ」

 促されて杏児が着席したのを見届けた新渡戸は、思い出したように口を開いた。

「今、社章の話が出たが、その社章の効力は絶大だ。いかなる場合でもETとしての諸君の身分を証明し、身の安全を保障してくれる。仕事中やプライベートにかかわらず、外出する時には身に着けるようにしてくれ」

 女がどや顔であごを上げ、見下ろすような目つきで杏児に言った。

「ほらみなさい。社章はいつも身につけておくのよ」

 杏児が再び立ち上がりかけた。

「何が『ほらみなさい』だ! 昨日僕たちが出会ったこと、認めてるじゃないか!」

 女の方は勢いよく立ち上がった。

「なな何よ、まま間違ったこと言ってないでしょ!」

「もう、いい加減、やめようよ」

 万三郎がたまりかねて二人に言う。そして、新渡戸もゆっくりと頷いた。

「中浜くんの言う通り、もう止めた方がいい。この研修室での様子は、ほら、あそこ、後ろのカメラで監視および録画されている。研修中のこの部屋での言動は、人事考課に影響することを申し伝えておく」

 そこまで聞いてはじめて、杏児と髪ビシ女は後方天井の、こちらを向いているカメラを見て、きまり悪そうに着席した。

 なるほどあれはプロジェクターではなくて監視カメラだったのかと万三郎は納得する。杏児はうらめしそうに新渡戸部長をちらと見やって口を尖らせた。

「部長、それを早く言ってくださいよ」

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