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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第四章 研修
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第四章 研修(5)


 カーネギーの名言の日本語訳を暗誦し終えると、柔らかな笑顔をたたえたまま、ほうぶん先生は言った。

「どうでござるか。おぬしら二人の今が、少々明るくなったかね。それが、それがしからの『プレゼント』でござる」

 万三郎は少なからず感動して杏児を見る。杏児も同じ気持ちだった。

 昨日以来、すっかり萎縮して陰鬱になっていた二人の気持ちを、ほうぶん先生は爽やかに吹き飛ばしてくれた。そして、新渡戸部長とシンクロして、両側から、美しい英語で、良い文章を聞かされた時、二人は、大げさではなく、魂が揺さぶられるような思いがした。二人は今、まさしく雲間に差し込む太陽の光を見ていた。出会って五分、二人とも一気に、この風変りな昔風の男を好きになっていた。

「言葉には、力があるのでござる」

 ほうぶん先生は言う。

「よく吟味された言葉の連なりは、非常に効果的に相手の心を打つ。悪い言葉は、効果的に相手にダメージを与えるが、良い言葉は、相手に勇気と愛と感動を与える」

 先生は続けた。

「時と場合に応じた、言葉の使い方、選び方、組み合わせ方。これらに熟達することで、人を動かす非常に大きなパワーを得ることができるのでござる」

 新渡戸部長が、ほうぶん先生の言葉を継いで言う。

「そして、それが、君たちのミッションなのだ。君たちは、昨日の失敗を良き教訓として、時と場合に応じた言葉の使い方、選び方、組み合わせ方を身につけていって欲しい」

「それは、ここ、KCJの――」

 ほうぶん先生が再び言葉を引き継ぐ。

「――百万のワーズ社員たちの、理想的なリーダーになることに他ならぬ。エクゼキュティヴ・トレイニー、すなわちETとは、ワーズ社員たちを自由自在に動かし、それらの持てる力を最大化する能力を持つ、偉大なリーダーの卵なのだ。そしてその修行は、今始まったばかりでござる。まずは、笑顔。これは、対人関係の要諦なり。大きな心で、相手を笑顔で包み込むよう、心がけなされい」

 万三郎と杏児は深く頷く。昨日からのことは、まだまだ分からないこと、納得いかないことがたくさんあったが、ともかくも自分たちが何を求められているのかはおぼろげに理解したし、そうなろう、熟達を目指そう、という気持ちになれた。

 ほうぶん先生は、改めて弾けるような笑顔を見せて言った。

「さ、笑顔のウォーミングアップはこれにて終了、オリエンテーションに入るといたそうか」

 その時、前の引き戸が突然、ガタン! と大きな音を立てた。

 新渡戸部長が思わず飛び退すさる。続いて、「ガラガラガラッ!」と強引にドアが引き開けられ、一人の女が転がり込むように部屋に駆け入ってきた。

「おっ、遅れて、ももも申し訳、あ、ありませんっ!」

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