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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第二章 杏児
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第二章杏児(17)

十七


「三浦くん……」

「何?」

 僕はイライラしていた。彼の責任とは言えない。指示を間違えたのは僕の方だったかもしれない。そして、差し迫っていたとはいえ、二人とも出発前に確認をしなかったのだ。だから、そのイライラをどこにぶつければいいのか、僕は分からずにいた。

「ここ、見て」

 中浜に言われるがまま、彼のタブレットの画面を覗く。

「”Emergency stop”……エマージェンシーって、緊急ってこと?」

「そうだよな、やっぱりこれ、『緊急停止』ボタンだよな」

「今のシートレを、止める……?」

「分からないけど、君は、あのシートレが届いてもいいのか」

「いや、だめだ。火に油を注ぐ」

「俺もだ。ダメ押しになってしまう。非常停止ボタン、君の画面にもあるか」

 僕は自分の端末を見た。

「ああ、ある」

 中浜が真剣なまなざしで僕に訊く。

「押すか?」

 僕も真剣な顔で頷く。

「そうだな」

 ――どうってことはない。ワープロ原稿を打っていて、プリントアウトしかかっている最中に取り消しボタンをクリックするようなものだろう。

 僕らがそれまでに送り出したシートレの多くは、結構なスピードでびゅーんと飛んでいったが、今回の編成は二つとも、かなり重そうな感じでスピードも遅かった。だから二人のシートレは、かなり遠くの上空を飛んではいたが、まだドームの中だった。

 特に、ここから見える僕のシートレは、なんだかとてもガタガタしていた。意味内容はともかく、僕の文は文法的に間違っているから、連結器が微妙に合っていなくて、連結部の強度が心もとないからではないか。先んじて飛ばした、【sorry】ばかりを乗せた二十両編成のシートレに乗っていたワーズが、「ちゃんとした文になっていないから連結部が弱すぎる」みたいなことを言っていたから。

 中浜が言う。

「じゃあ、いち、にの、さん、でクリックするぞ」

「分かった」

「いち、にの、さん!」

 タブレット画面に表示されていた緊急停止ボタンを、僕と中浜は同時に押した。すると、画面に、びっくりマークつきの英語のダイアログが出てきた。


“ ! This sequence train is very heavy. There is a great danger of collapse. Do you want to continue?”

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