第二章杏児(6)
六
「それじゃあもう、失敗してくれって言ってるようなものじゃないか」
斗南は今度は手にしたタブレット端末を操作しながら口をとがらせる。
「すみません……」
僕は謝るしかない。斗南は一度大きくため息をついて、しようがないなという体で、端末に表示された画面を示し、説明を始めた。
「ほら、こんなふうに日本語で注文が来るんだ。このタブレットに表示される。三浦さん、あんたは適当なワーズたちを招集して順番にシートレに乗せる。乗せるべきワーズを乗せたら、出発させる。以上だよ」
僕は面食らった。
「ちょ、ちょっと待ってください。誰から注文が来るって言いました?」
「それは今あんたが気にする必要はない。受注部からこの端末に転送されてくるのさ」
「ワーズって、なんですか」
斗南は、目を見開いて僕をまじまじと見た。
「あんた……そんなことも知らずにここへ来ているのか……」
「す……すみません」
僕は俄然心細くなった。
――社長も部長も駅長も、僕たちに何も教えてくれてないじゃないか!
「斗南さん、大きく分けてあと三つ、質問があります。いいですか」
斗南は、まっぴらごめんといった感じで顔の前で大仰に手を振った。
「そんなこと、事前に聞いてから来てくれよ。もう、いい。もう、ここでどれだけ丁寧に教えたってうまくいくわけないから、もう好きなようにしてくれよ。ああ、上はいったい何考えてんだ」
僕はもうコテンパンに打ちのめされていた。悔しい。何だってこんなに嫌がられなくちゃいけないのだろう。確かに、何をしなくちゃいけないのか、まだよく分からないけれど、この人や、楠マネージャーや、江戸ワード駅長を何とか見返してやりたい気持ちになった。この人たちは、僕が必ず失敗すると決めつけてかかっている。いや、だいたい、社長からして、僕をミドリムシ扱いしている。
――くそお、やってやろうじゃないの。
僕の中から闘志がふつふつと湧いてきた。 僕は斗南に気おされないように、眉毛を吊り上げて強い声で訊いた。
「じゃあ、ワーズって、どうやって召集するんですか」
僕はクラフトマン斗南から、ワーズの招集のしかたをはじめとした、タブレット端末上の操作方法をひと通り簡単に学んだ。
「それで最低限の知識だ。あと、編成に必要なのは、あんたの判断力と、瞬発力と、センスと、機転と、指導力と、論理性と……」
斗南は指を折っていき、片手では足りなくなって、数えるのをあきらめ、匙を投げるようなそぶりで手のひらをパッと広げて言った。
「英語の技術だ」




