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ことだまカンパニー  作者: 今神栗八
第一章 万三郎
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第一章万三郎(4)


 男は無謀にも、爺さんに逆質問を投げかけ、抵抗を試みるのか。爺さんはいったん俺に移した視線をゆっくりと彼に戻した。再び毒を流し込まれる前に彼は口を開く。

「ワ、ワン、ポイント、イズ……なぜ、私は、ここに、いるのでしょうか」

 ――おお!

 心の中で彼に喝采を贈る。たしかにひどい英語の発音だし、その文脈なら「ワン・ポイント」ではなく、「ファースト・ポイント」だろうとは思ったが、そんなことより、英語の質問に対して、日本語混じりで逆に質問し、この爺さんと渡り合おうとする、彼の度胸に感服したのだ。あっぱれ、同胞!

「ツー、ポイント、イズ……英語で訊かれたからといって、英語で答えなければならないのでしょうか」

 ――うおお、すごいぞ、同胞!

「スリー、ポイント、イズ……私は、英語が、苦手です」

 見事な彼の「スリー、ポインツ」だった。それは今、彼が思っていることをすべてぶつけて全力で抗っている姿であり、それらははからずも、三つとも俺自身がまさに今抱いているポイントと同じものだ。溜飲を下げたのは言うまでもない。

 しかし。

 ――ああ……。

 爺さんは、全く動じていなかった。まるで、自衛隊の戦闘機がゴジラに搭載ミサイルを数発撃ち込んで、まったく効き目がない時の絶望感を抱かせる。爺さんは例の、まばたきをしない目をもって、隣の勇者のあらゆる動きを完全に封じ込めた上で答えた。

 英語で。


"So, what?"


 ――なんだ? 「だからどうした」って言われているのか。

 それくらいは彼にも意味が通じたのであろう。袋小路に追い詰められたところで手当たり次第に投げつけた「スリー、ポインツ」を、一顧だにされることなくさらりとかわされた彼は、いよいよ完全に言うべき言葉を失って、うなだれるほかなかった。

 爺さんの左眉がピクリと上がる。不敵な笑みを浮かべたように見えた。

 それからようやくゆっくり瞼を閉じた爺さんが再び目を見開いた時、その視線はピタリと俺に据えられていた。


"How ’bout you?"

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